第49話 見つけられました
翌日、ルイはかの国をぶっ潰すとは言ったものの、当てもなく王都を探索していた。すると「見つけた!」と言う声がした。ルイは振り向くとハートがいた。
ハートにずんずんと歩み寄られルイはガッチリと腕を取られた。なぜかハートとお付きのふたりはゲッソリとしている。それにちょっと汚らしい。
「え?なにどうしたの?」
ハートももうなんでこんなに必死になって捜していたのか分からないくなっていた。
「あ、いや、その、あ、謝りたくて…」
「な、なにを?」
「ローズがウサギを…」
「ああ、ラグ爺の件ね。いいのよ、ちゃんと見つかったし自分で戻って来たのよ、ほら」
と、カバンに入って寝ているラグ爺を見せた。
「ええ、そうなんだけど…」
ハートはなんだか臭かった。宿も取らず、三日三晩かけて馬を変えながら王都まで来たようだ。なぜだろう。
「そんなに急いでいたの?」
「ええ、この三日休まずに馬を飛ばして港から王都まで来たの。あなたは随分スッキリしてるわね」
「えっと…?」
ルイはノーズレクスを調べながら観光をしゆっくりと宿では休憩し、ご飯もちゃんと食べて顔色はつやつやだ。ハートとふたりのお付きはボロボロなのに。
「同じ頃、同じ街にいたのにこの差はなんなの?」
とハートから言われ、ルイは初めて時間軸がハートと随分違う事に気付かされた。
「あ…」
「ルイはどんな手を使って…」
そういうとハートはゆっくりと後ろに倒れてしまった。ハートのお付きは明日また時間にこの付近でと言い残し、ハートを馬車に連れ込み慌ただしく去って行った。
「あのセリフは今この街ではやっているのかしら?」
明日は、また午後にロザージュとの密会もある。
午前と午後に違う人と密会なんて私はどんな話のどんな主人公なの…
ランチにトンカツ定食を食べ、また王都を散策する。ある店には水の粉が売られていた。頑丈なガラスケースに入っていて、最後の品だとし五千万ツークもした。
え?めっちゃ高い!
『あれ以来作ってないからね』
「あれ以来?」
『姫から作ってくれって言われて作ってたけど姫が死んでからは作ってないんだ。ルイにはその場でソファーをプレゼントしたけど』
「目覚めてから水の粉を作ってくれって言われなかったの?」
『言われたよ。でもルイから言われないから作ってない』
「ああ、そういえば、頼んでくれって言われたような…」
『ルイは頼まなかったの?』
モナルダが聞いた。
「頼まなかったわね。なんの事か分からなかったしあまりカミノアに頼み事をするのがいやだったのよね。神獣になんか個人的な頼み事するなんてまさに不敬じゃない?だから王子たちには「はいはい、わかりました」って言って頼まなかったわ。忘れたフリをして、ふふふ」
『ルイも結構やるわね』
その分、開発に力を入れたのだ。
翌日、ルイが昨日の広場で待っているとハートが現れた。
「昨日はごめんなさい。お見苦しいところをお見せして。もう回復したので」
「そう、よかったわね」
「…」
「…」
「それでなんの用だっけ?」
ルイが溜まらず、投げかける。
「用という、用は…」
「…え、それじゃあ」
「待って、今どこの宿に?」
「どうして?」
「え?それは…」
「ごめんなさい、初対面に近い人にそこまで教えられないわ」
「え?あ、私そんなに怪しいかしら…」
「ええ、まあ…」
一週間かかる道のりを三日でやって来た人物を怪しくないとは言い難い。
「じゃあ…私が最初にご招待するわ、それはいいでしょ?」
「ご招待?」
「ええ」
ハートはにっこりと笑っているが「なぜ私を」とルイは難色を示す。
「ゴホン、、ハート様ちょっとよろしいですか?」
お付きのひとりがハートに声を掛ける。
「ハート様はご自身のご身分をおっしゃっていません。それではこのご婦人も怪しいと思うのでは?」
「ああ、そうだったわね。ごめんなさい、ルイ。私はハーレイキャリストン・キャラハンよ。キャラハン公爵の子息の妻なの。怪しいものではないわ」
え、キャラハン公爵?!!
「そ、それは申し訳ございません。失礼な態度を取りました」
ルイは頭を深々と下げた。キャラハン公爵への繋がり…これは渡りに船と言うのでは…
「違うの!そういうことをされたくなくてハートと名のっているのよ。ご招待を受けてくれる?」
「ええ、もちろんです。ありがとうございます」
「言葉遣いは普通でいいの、元に戻して」
「わかったわ」
「ありがとう、宿に連絡するから教えてほしいわ。あ、もちろんその可愛い猫ちゃんたちもご一緒に来てね」
ハートはご機嫌に帰っていった。
「こんなに都合よく事が進んでいいのかしら」
『怪しいわね、気を締めていかなくちゃ!』
モナルダはとさかを広げる。
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