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「魔攻…」
「死に晒せ、クソ犬がぁぁあああ!!」
攻撃を放つ直前に、攻撃の掛け声と捉えられる叫びが頭上から聞こえ、作りかけていた魔術を消し見上げた先には、友宏と同じかそれ以上に大きな剣を持った男が、降っていた。
「
落下しながら男は仰け反り、巨大なウルフに近付いたタイミングで回転し、身体と一緒に回った大剣の等身の面を、敵に打ちつけていた。
「ッらァアア」
勢いを増した剣がウルフの頭を叩き、勢いに押された体は耐え切れずに、頭部に引っ張られたまま地面に打ちつけてられていた。
「ヤバ」
「あぁ、やべぇな…」
身体の芯にまで響いた振動が、ウルフを叩きつけた時の威力を物語り。記憶にある友宏と比較しても、落下して来た奴のステータスは間違いなく異常だ。
振動が伝わったのか、人より生存本能が強いのか。居た筈の無数のウルフ達の姿は見えず、舞った土埃の中には、大きなウルフとその男しか居なかった。
「ん?何だお前ら、」
伏したウルフの上に立った男は、身体の筋肉がハッキリと分かる薄手の肌着に、ジーパンを履いており。怒気を含んだまま話し、俺が答えるよりも先に友宏が返してしまった。
「テメェこそ何だ、獲物を横取りってか?」
引くでもなく強気に聞き返すも、向こうと同じかそれ以上に平和的じゃない感情が混じっており。言葉を発した二人が睨み合っていた。
頼むから殺り始めるなよ。
「そうか。此奴はお前らと戦ってたのか。それはすまんな」
「ぉ、おぅ…」
無愛想ながらも向こうが直ぐに謝り、想定外だったのか狼狽えながらも友宏は返していた。
「謝んなら、良い」
「そうだろ」
「あぁ、ちげぇねぇが。そいつはもう死んでるのか?」
「悪いな、見ての通りだ」
足を動かしてウルフの頭をつつき、蹴られても反応しない事を指しているが、つまりそれはあのウルフを一撃で仕留めたという、常識外れの力の証明でもあった。
「済んだ事を言ってもじゃあねぇからな。名前なんて言うんだ、俺は友宏だ」
「それは助かる。
「おう、武南。こっちは他に、千田に緋彩。それに向こうのちっこいのが泉と、時葉…さんだ」
「一度で覚えられはしないが、一人は覚えた。千田だったな?」
「どうも、千田です」
何故話が進んだのか分からないまま名前を呼ばれ、咄嗟に返したは良いが一言で返してしまい。友宏が武南と名乗った人物に、再度話しかけていた。
「武南は一人で、何してたんだ?」
「俺は…」
いきなり過ぎると思った質問は、やはり受け入れられなかったのか。言い淀んだ武南は、後頭部を抑えたまま別の方を向いていた。
見るからに困ってるな。何かを言いたくないんだろうけど、せめて単騎か単独の何方かは知りたい。
「武南さん、すいません」
「ん?なんだ」
「武南さんは何処かに属してますか?俺達は、このまま森を進みますので、何か不都合があるのなら今の内に言って頂けると、此方としても助かります」
実力行使になれば、攻撃を目で捉えられるにしても。あんな攻撃を受けるリスクを許容したくない身としては、ならば殺す、とか言うぐらいなら、直で言ってくれれば取り敢えず引き返す気ではいる。
「それは止めといた方が良い。君たちではこれを相手にするには、辛かろう」
同じウルフを指して蹴ったのか、武南さんは足元のウルフに視線を向けていたが、戦闘をして数秒しても敵が生きていたのを理由に、俺達の強さをその程度と捉えたのかも知れんが、
「流石に普通の奴でしたら、問題ありませんよ」
「あぁ、それにそいつ一匹ぐれぇなら俺等でも倒せた、だろぉぜ」
流石に下に見られすぎたのか、友宏も倒せた有無を主張し、相手が異次元だろうと、譲れない物をちゃんと出せているらしい。
「確かに、一匹ならば、倒せただろうな。なら此奴が二匹や三匹でも、お前らは倒せたと言うのか?」
あの大きなウルフが複数体居る、そんなあり得ない想定で話しをされ、何を言ってるんだと思うも、武南はもしもの想像をしてるのでは無く。その状況が容易に起こり得ることを知っていて、それを伝えてる気がした。
だけど、そんな事があり得るのだろうか。
周りを統率する力に加え、単体としての高ステータスを持ってる。そんな奴が複数なんぞ、ゴブリンの時です特殊条件下の敵だったのに対して二匹だ、それなのに既に一匹倒した敵が、更に二匹以上の生存はいくら何でも常識的じゃない。
「やはり厳しいか。なら行くことは止めるんだな」
武南というこの男は、あのウルフが複数体居るのを知ってる。それは今の発言で確信的なものに変わっていたが、そんな事があって良いのか…
「いや、俺は行く」
「千田と言ったか、お前は死にたいのか?」
「逆だろ、生かす為の力が欲しいから行くんだ」
本当にまだ複数体居るのなら、明らかにゴブリンの時より敵の戦力は上だ。そんな奴等をみすみす放置して逃すなんて、生きていく上でしちゃ駄目だ。
それをして良いのは、略奪される事を容認した時だけだ。
「仕方ない。お前ぐらいの奴が勝手に死なれては、俺達も困る。お前らを俺が居る拠点に案内してやる、周りの連中を集めろ、待ってやる」
「分かった」
勝手に死なれては、と言った武南の提案にはリスクが有るが、それでも乗っても良いと考えた俺は、了承の有無を伝え、部隊の集結と避難所に人を走らせていた。
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