124.
飛び出した一角野ウサギが木に刺さり、大きく振った後ろ足で木を蹴りつけ、角を引き抜いていた。
その一匹に集中してる間も無く、別の一角野ウサギが鋭利な角を俺に向け飛び出していた。
「マジックバリア」
繰り出した壁が一角野ウサギの前に作られ、空中で止まる事の出来ない小柄な敵が壁とぶつかり。角と触れた壁が突き破られ、角の根元部分である一角野ウサギの身体だけが壁に阻まれ、まるで宙に浮いている様な状態で止まっていた。
「ぉおらぁツ」
声を出し大剣を振り上げた友宏が、展開した壁諸共、動きを止めていた一角野ウサギに向けて、振り下ろした大剣が破砕音と共に一角野ウサギを両断していた。
「
展開した壁が消えた事で心置きなく二本の矢を生成し、水を流動させながら形を保った矢が放たれ、正面に居た二匹のクローマウルフを射貫いていた。
一匹のクローマウルフでは矢の威力は削がれず、勢い余って地面にめり込んだ矢の到達地点は分からない。
「野ウサギより余っ程ヤべぇだろ、どんな貫通力だよ」
「俺も知りたいよ」
「っとぉ――あぶねぇな」
矢を放っていた俺の隙を、一角野ウサギが背後から突いていたが、手を伸ばした友宏が野ウサギの首をがっしりと握り止め、そのままへし折っていた。
「ナイス、普通のウサギの様に思えるな」
「冗談だろ、こんな殺意しかねぇのはお断りだ。…よし良いぞッ」
そう言った友宏が握りしめた手を緩め、持っていた物を無造作に放り投げていた。
「
友宏が身構えたのを見て、依然陰に潜む魔物に向け矢を放ち、俺達は二人で身構え敵を動作に意識を向けていたが、飛んでいった水の矢は暗がりに在る何かに当たり、固い物に阻まれた様に衝突し弾けていた。
「貫通力やべぇって言ったばっかなのに、それが貫通しねぇ敵って理不尽だろうよ」
その魔物は反撃して来ず、動いてるのかすら分からない距離を保っており、見えるのは光を反射している箇所のみだった。
「そんな愚痴より、取り囲まれてるのにあの動かない敵はどうするよ。正直に言って別の攻撃はあるが、この辺の森が焼け野原だ」
俺一人だったなら、この辺り一帯を焼け野原にした方が圧倒的に早いんだろうが、森の中に火種をそう安々と作っては後が大変だ。
「俺が先に」
特に了承を待つ事も無く、俺の言った発言に対しての返事でも無い一言を言い放った友宏が駆け出し、矢が弾けた場所に踏み込んでから、大きく引いた大剣で薙ぎ払っていた。
「払い斬りッ」
その大きな剣が動く迫力が力任せにも感じるが、剣の刃は真横を向いたまま振るわれ、鋭い刃が小さな切れ目でも付ければそこからめり込んでい行きそうなものだった。
「「ッ!?」」
剣を振るった友宏自身も、見ていた俺もが同時に目を見張り、耳を押さえたくなる鈍い衝突音が鳴り響き、横に振るった剣が矢が弾けた辺で止まっている事を認識していた。
「早く抜けッ」
「んッらぁぁああッ」
離れて見ていた俺の方が僅かに思考を取り戻し、友宏に向けて叫んでいた。
そして友宏が剣を引き抜いた勢いで後ろに動き、引き抜く前に立っていた場所には、鞭の様に撓った何かが地面を抉り飛ばしていた。
「何だよ今の…あぶねぇなぁ」
「見えたか?」
「いや何も見てねぇ、剣が止まったのも木に当たってた」
「木?…おい待て、おかしいだろ。お前のステータスで剣振ってんのに、何で森の木一本も倒せないんだよ、普通におかしいだろっ」
木と同じ様に角で突き刺されながらも防いだ壁を、友宏は力任せに打ち砕いたんだ、それならスキルらしき技を使った先の攻撃で、木が耐えられる意味が分からない。
「木が敵だってか?!俺ウッドマンは嫌いだぞ」
「お前の好みなんて知らんよっ―でも見えてないけど木が魔物って思えば納得行くだろ」
例え木の姿をした魔物だったとしても、ゆっくりと距離を詰めてくるでも無く、地面を抉る程の攻撃力があるにも関わらず、攻撃すらして来ないで現状維持してるんが気に入らん。
「なぁ、蔦とか枝でよ、魚取る罠とか作れるんだぜ、知ってたか?シュバルツさんよ」
木の魔物よりも近い位置にクローマウルフや、その陰に隠れた一角野ウサギからいつ攻撃を受けるか分からない状況で、独り言の様にゆっくりと友宏が話し出していた。
「何だ戦闘中に、作り方は知らんが知ってはいる」
「頑張ればハンモックとかも作れるんだぜ?」
「だからどうした、今度作ってくれるのか?」
「時間があったらな…」
「何だよ縁起消すなよ」
互いに睨み合う状況のまま、敵から注意を外さない程度に返し続けていたが、友宏が放った次の言葉に思考の大半が割かれていた。
「思ったんだけどよ。この暗さで見えてねぇだけでよ、もしかしたら周りに居る奴等が、仲良く手を繋いでたら、俺達って籠の中の魚じゃね?」
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