神の告知・地球に魔物を出現させるから生き残ってね ♪『人種に存続あれ..』

72.

　自衛官らしい印象を与えない女性の髪は、短いと言えどショートボブヘアに、茶髪に加え髪留めなどもしていない髪は、彼女が腰を折ると同時に、自然と彼女の視界を狭めていた。

「――本当にごめんなさい」

「別に俺達は謝って欲しい訳じゃ‥」

「返して」

　白浜から呟かれた言葉を聞き、行き場のない気持ちがこみ上げ、吐き出したい気持ちに駆られ、喉を動かした所でどうにか抑え込んでいた。

「返してって言ってるじゃんッ」

　白浜から続け様に冷たく、怒りを含んだ言葉が言い放たれるも、女性隊員は頭を下げ続けていた。

「ごめんなさい」

「だから返してッて、言ってるじゃぁん...」

「それは出来ません、ごめんなさい」

「何でよ、どうにかしてよッ」

「菜奈もぅ止せって」

「何よッ明宏はそれで良いんだ！海維もそうだよ。どうしてそんなにしてられるの、友達が死んじゃったんだよぉ....何でも良いから、どうにかしてよ。何で変な力はあるのに、死者を蘇らせる力は無いのよ...」

「そうだよな、そうだよ。探そうぜ明宏！こんなにも豊富な力があるんだ、蘇らせる方法の一つや二つきっと――」

「鈴木さんだったわね、私はその話は良いとは思わないわ。仮にあったとしても、何の対価も無く使えるなんて都合の良い話しがあると思うの？」

「なら探すだけ探して―」

「それで？見つけてどうするの？決まってる。結局は使うの、こんな世界だもの、皆正常な感覚なんて既に無いはずよ、だから死者を蘇らせるなんて倫理観度外視で行うのよ」

「それの何が行けないんですかっ！やってみても良いじゃ無いですかっ。私達がやらなくたってッ他の誰かがやるだけじゃないですかっ！それに何の代償も無い可能性だってありますっ！」

　歯を噛み締め、我慢が限界を迎えた白浜が、初めて望奈に対して当たる様に怒鳴り散らかし、それを受け瞼が少し上がったが直ぐに戻り、彼女は冷静に返した。

「その在るかも分からない力の為なら、冷静さを欠き突き進む、無鉄砲な姿勢が顕著に現れてるじゃない、そんな状態で過ごしてたら、直ぐに貴方も死ぬわよ」

「それでも良いじゃないですかっ、私が何しようが勝手じゃないですか！」

「菜奈、貴方本気でそれ言ってる？」

　次第に言葉に殺気に似た物が含まれ、望奈はそれを白浜に向け言い放っていた。

「はいっ‥‥」

　気圧されどうにか答えた白浜だったが、その様子はまるで怒られた子供の様に顔を下に向け、目だけでを弱々しく向けて身体を萎縮させていた。

「それじゃこの戦いが終わったら貴方とは二度関わらないから」

「えっ………‥‥」

「どうしたの？だって、貴方は我道を行くんでしょ？それじゃ私の存在は邪魔でしか無いわ、私はどうあっても、その考えには賛成出来そうに無いわ」

「えっ、あ、いや。嫌ですっ！私は生き返らせる方法も探して、緋彩先輩ともこれからもずっと一緒が良いです！見捨てないで下さいっ」

「我儘ね」

「はい我儘ですっ！」

　言い切った白浜は真っ直ぐに望奈を見ているが、その顔は泣きっ面のまま下唇を上げ、我儘を通す子供の姿そのものだった。

　それを見て九藤と鈴木は目を覆い、子供に押し負けた親の様に、望奈は渋々と受け入れ様としていた。

「分かったわよ。でもね、探す事は諦めなさい」

「え、それは―」

「最後まで聞きなさい。良い？探そうとするんじゃなく、偶然それらしき力を見つけたら使う、例えその力の事が分かって無かったとしてもね。これが、私から譲歩出来る限界よ」

「・・・・・」

「生き返らせる事を探す為に、危険を顧みない人と仲良くする気は私には無いの、それに探そうとして菜奈が死んだら、仲間を守って亡くなった麓山さんの行動が無に帰すのよ。菜奈が麓山さんを生き返らせようと願う様に、麓山さんは貴方達に生きて欲しいと、願ったんだと私は思うの、だから自分の命を大切にしなさい」

「緋彩ぃ先輩ぃ"ぃ"い"い”い”い”い”い”」

「ちょ、止めなさい、嫌よ」

「うッ‥‥‥ぢゃんど、受け止めて、下ちゃいよぉ”ぉ”お”‥‥」

　白浜が抱きつこうと膝を伸ばし、座った状態から斜めに飛び込み、望奈がそれを綺麗に避け、滞空していた白浜の身体が平らに地面に落ち、また泣き出していた。

「緋彩さん、菜奈がすいません」

「良いのよ、一応後輩だしね」

　そう九藤に答えた望奈の表情は何処か微笑んでおり、呆れながらも白浜の方に歩き出し手を差し伸べていた。

「いい加減立ちなさい、何を置いてよ先にやる事があるでしょ？」

「んん？」

　白浜を立たせ、望奈が女性隊員の方を向いて口を開いた。

「という訳で、彼を何処かモンスターに襲われない所に運びたいので、お力を貸して貰えないでしょうか」

「私には、いえ。私の権限で出来る事なら全力で協力させて貰います」

「それじゃ申し訳ありませんが、運ぶ方の手配をお願いします、私達では運ぶのは厳しいと思いますので、貴方達もそれで良いわよね？」

　損傷具合を再度確認した望奈が、自分達では厳しいだろうと考え、自衛隊にまかせる事にし、九藤達にそれを確認し。

「はぃお願ぃちぃます」

「僕からもお願いします」

「お願いします」

　三人が揃って了承し、女性隊員が答える。

「任せて下さい、彼を丁重に運び、安全な場所で安置させます。私が此処に残り部下を呼びますので、その間皆さんは休んでいて下さい」

「そうさせて貰います、貴方達も行った方が良いわよ」

「でも」

「緋彩さんの言う通りだよ菜奈、此処に居たら心が休まらないよ、行こ」

「ん、うん。分かった‥」

「俺は残るよ」

　先程我儘を散々言ったからか、白浜が直ぐに鈴木に促され受け入れるも、九藤はそれを拒み、白浜が飛びつくように反応した。

「なら私も―」

「いや、菜奈と海維は行ってくれ、頼む」

　間髪入れずに断られ、仲間にそう言われては白浜としても、これ以上は反抗する言い訳も見いだせずにいた。

「あぁ分かったよリーダー」

「茶化すなよ」

「菜奈行こ、明宏なら大丈夫だ」

「うん」

　女性隊員と九藤を残し、鈴木、白浜、望奈の三人が歩き始めようと方向を変え、九藤と女性隊員も三人に目を向け周りを見、全員が粗同時に同じ疑問を頭に浮かべた。

―――千田さんが居ない―――