56.

「はぁぁ、はぁ、はぁぁぁ、もぉ、何で、こんな、さっきから、死ぬ思いをしなくちゃ、いけない、のよ、これだか――――――――――――――――」


 建物が倒壊し激しい振動と音が再び俺達を襲う。


「はははっ、爽快だったろ?」


「何処がよ!もう信じらんないっ、それに何で爆弾なんて物があの建物にあるのよ」


「そりゃ俺が五島さんに頼んで設置してもらったからだよ」


「いつもの間に‥」


「準備は入念に、手段は多くだ、まっ結局は、予定が違う形で崩れたんだけどな」


「千田さんって案外、計算高い人?」


「いや、心配性なだけだ。それよか」


 Lvが上がったのか気になり過ぎていた為、ステータスを開いた。


「ステータス」


【千田 本暁】 Lv10(17/1000)

【職 業】:魔士 Lv5(0/0)

     :護士 Lv2 (30/30)

     :堅士 Lv3(17/45)

【H P】:20

【M P】:365

【STR】:2

【VIT】:3

【AGI】:1

【DEX】:1

【INT】:69

【RES】:10


『SP=20』『JP=15』

スキル

【マジックアロー】

【マジックバリア】

【ガードスタンス】


実績

【チュートリアル1】

【極振りの体験者】

【人種殺し】

【ゴブリン初討伐】

【ゴブリン殺し】




 あ、ダメだこれ。Lvが上がってるけど、思ってたよりも少ないとか、そんな優しいレベルの話じゃないだろこれ、ビルの下敷きになった奴は経験値扱いされてないし、次のLvアップまで残り983とかバグか何かか?ふざけてる。


「詰んだわ」


「どうしたの急に、ステータス見てたんじゃないの、レベル上がってなかった?」


「いや、上げってはいた」


「なら良いじゃん」


「いや、良くないんだよ」


「何がさ」


「次のLvアップまで983必要だ」


「・・・・え?」


 小村さんが間の抜けた声を出しながら、表情が悩むように変わりだした。


「千田さんて、そんな高Lvなの?25Lvとか?もっと上?」


「残念だが、俺のLvは今現在10になったばっかりだ」


「へぇぇえ?!それじゃ何、私も10になったら、上がる為に1000も経験値が必要なの?」


「確定じゃないだろうが、俺だけって可能性の方が低いからな、多分そうだろ」


「大変じゃん」


「大変なんて言葉で片付けていい話でもないだろ」


「だって、今までの10倍戦う必要が有るんでしょ?大変じゃん」


「自分で言ってるなら、その10倍を軽く捉え過ぎだ。戦闘が10回から100回に増えればその都度、危険な目に遭う回数も増えるし、倒せる敵だって数に限りがあって出会える確率だって減る。それに……いや、言っても仕方ないか」


「また私の事おバカ扱いしたでしょ」


 言っても仕方ない、それは事実だ。言ったところで小村さんにはどうしようも出来ないし、ちゃんと考えてたらその内気づく筈だ。


「小村さんは今、Lvとか上がってたり余りのSPってある?」


「人の話は無視するのに、聞くことは聞こうとするのね」


「無理にとは言わないよ」


「良いわよ、教える。あるわよちょうどさっきLvが上がった、からね。SPも10は余ってる」


「嫌な事思い出させたみたいだな、すまない」


「気にしないで良いから、それでわざわざ聞いて、何だったの?」


「あぁ、Lvが10から上がりずらい、というより上がらないに等しい状況だから、今あるSPとかはそう簡単に振らないで残すのもありだぞって話だ」


「えっ」


「どうした?」


「今、SP使っちゃった。テヘっ」


「…………ご愁傷様」


「そんなに、不味い、かな?」


「不味いと思う」


「うぅ..酷いです」


「なぜ俺に言う。まぁ振ったのなら仕方ない、次上がった時は考えてから振るんだな」


「はい、そうします」


「良しいい加減移動しよう、時間が経てば合流地点の予想が出来ないからな」


 階段を下り始めてようやく気づいたが、階段には物凄い量の瓦礫や砂埃が降り積もっていた、それに見てようやく俺はドクロンが親切にマジックバリアで、俺達が居た場所を瓦礫などから守ってくれていた事を認知した。


「ありがとな」


「どうかしました?」


「何でもない、早く下りろ」


 ドクロンが喋る事も無いが、カバンの中で少し動き、反応を示す事はある。


 それからは二人で来た道を戻り、確実に皆が向かっていた場所に近づく事が出来、道中では幸いとは言えないが、ゴブリンとも遭遇する事は無かった。


「全然居ませんね」


「いつの間にか、ゴブリンの最後尾も過ぎていったって事だろうな」


「私達こんなのんびり歩いてて良いんですかね、走った方が…」


「走ったら何処かの誰かさんが一瞬で体力尽きるから歩いてるんでしょ」


「そこはほら、千田さんが私を抱えて」


「それこそ無理だ」


「ケチっ」


 何故かケチ扱いされてしまったが、微かに聞こえてくるゴブリンの声と戦闘音が、俺達と最前線の人か望奈さん達との距離が離れて無いと想像がついたので、小村さんを担いで走るそんな事にはならなかった。


 

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