50.ゴブリン地獄

 続く静寂が突如として破られる。

それはゴブリンと此方側を隔てていた壁が、溶けて行くように消滅し始めると同時に頭に響く様な声が教えてくれた。


≪規定の時間に至りました≫

≪ワールドゲームを開始致します≫


「ギャァアアア」「ギャギャギャ」「ギィィイィィイイ」「シャアアアアアアアアアアアアア」「ガガァガアヵイガイイアガァガ」「ギィィイイイイイイイイイイイ」「ギィィィキキキッキキキッ」「キキキキキキッキキキッキキキッッキ」「ァァァアァァァァ」「アアアアアアアアアアアアアアアアアアア」「ガガガガァァァガガァガアァァガガガ」「ガギアガギァイギアギア」「ァイガガァガァガァガァガァガアガガ」「ギィィッッキキキキッキ」「ギィ」.....


 大人しく待って居ると、壁が消えた瞬間にゴブリン達が奇声を上げ始め、周りを見ればそれに驚き慌てて手で耳を塞ぐ者や、唖然と立ち尽くす者、挙句に腰を抜かす奴など、反応は様々だが一つだけハッキリしていた。


「始まった瞬間から気圧されてたら、先が思いやられますねこの戦い」


「いやいやいやいやいや千田さん!あれですよ!?少しもビビるなって方が無理だと思うんですけどどうしてそんなに落ち着いてるんですか!?」


「お、落ち着こうな、白浜さん。それに、望奈さんだって余り変わらないよ」


「・・・」

「何かしら白浜さん、ほら余所見してる間に来たわよ」


「え..」


 白浜さんが望奈さんを見て、どういう反応してるのか確認している間に、ゴブリン達が建物の陰から姿を見せ始めたがその数は異常だ、狭い入口から大勢が一斉に出ようとする時の様に凄い密度で次々と姿を見せるが、そこは狭い入口などでは無く、車が横並びで通れる道であり、それが右を見ても左を見ても似たような状況が既に起きていた。


「撃てぇぇぇえええ!!!!!!」


 そして一人の自衛隊員の声で一斉射撃が始まり、瞬く間にゴブリン達に銃弾が襲いかかり、前方を行くゴブリンを始めとして次々にその場に倒れだす。


 そんな状況下であっても、慣れない者は銃声が鳴ると咄嗟に耳を塞ぐ行為を行うが、それが数秒以上続くと次第に塞ぐのを止める者が出始め、近場の自衛隊員の怒声をきっかけに各自で攻撃をし始めた。


「一方的ですね。」

「このまま勝っちゃうんじゃない?」

「お前らなぁ。」


「勝てるなら、それで良いじゃん。だけど無理だよね。」

「マキちゃんどうしてそんな、悲観的なのよ、勝てるなら良いじゃん。ですよね緋彩先輩!」


「まぁ日本国民がもう少し、自衛隊に寄り添って上げてたら勝ってたかもね。」


「それはどういう。」


「だって自衛隊には、そんなバカスカと連射し続けられる程の弾薬は無いのよ。」


「え、冗談ですよね?‥‥何か言ってくださいよ。五島さん、違いますよね?」


 望奈さんが何も答えない為に、自衛隊員の五島さんに答えを求めた白浜さんだったが、五島さんがその話を否定する事を無く。


 やがて銃声の数が減り、ゴブリンの勢いが増しこちらに向かいなだれ込んで来たのが、この問に対する答えであった。


「マジックアロー」


 走ってくるゴブリンを狙い、取り敢えず魔法を放ってみる。


 敵のLvが想定より違えば、どう足掻いても勝てない可能性すら出てくるが、それは杞憂だった、手加減して放ったマジックアローはゴブリンに命中すると同時にその対象の勢いよく貫通し、その威力で接触部分からえぐり取る様に大穴を開けたのだった。


「脆いな。」


「そんなに弱かったの?」

「その辺に居るゴブリンと変わらないと思いますよ、なので望奈さんが攻撃するのは、非効率過ぎるので止めてくださいね、矢の回収は無理でしょうし。」


「りょうかい、それじゃ任せる、って言いたいけど、貴方攻撃する気余りないでしょ。」


「そんな事無いですよ、Lv上げしたいので敵は倒します。」


 俺が倒す訳じゃありませんけど。


 俺はカバンを突っつきドクロンに攻撃を変わってもらう。


 最初の一回で敵の強さに変わりない事がわかったので、変にでしゃばって俺のMPを減らすぐらいなら、余力のあるドクロンに仕事をしてもらう方が得策なのだ。


「マジックアロー」

「マジックアロー」


「マジックアロー」


 坦々と声を発するだけで、ゴブリンが貫かれ、一匹また一匹と次々に倒されていく、まさに向かってくる経験値だ。


「何で千田さんがあれ程余裕そうにしていたか分かった気がするよ。」

「何Lvなんだよ、強すぎだろ」

 

 五島さんが訳の分からない事を言い、白浜さんの仲間の麓山さんが、俺のLvがおかしいだろとか言ってるが、妙に反応せず俺は黙々をゴブリンを殺し、殺す。


 それに俺はLvが高いんじゃない、偏りが凄くその代償としてこの攻撃力を有してるだけで有って、絶対的な強さを持ち合わせている訳ではないのだ、その為早くLvをさらに上げ安全性を保たなければ、ほかほか昼寝も出来たもんじゃないからな。



 


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