48.
やはりと言うべきか、何と言うべきか。俺は目が覚めると冷たいコンクリートの上で、冬の心地よい太陽の光を浴びながら横になっており、手を伸ばせば届きそうで届かない距離に望奈さんが背をこちらに向けながら座っていた。
全然記憶が無いが俺が倒れたであろう事は、想像に難くない。
「おはようございます望奈さん。」
「おはよう、後30分ぐらい寝てたらそのままゴブリンの餌食だったのにね。」
「まさか起こさないつもりでした?」
「さぁ、ねっ」
超過労働させといて倒れたから起こさない何て事をされた日には、本当に人間性を疑うが、望奈さんの場合それを心配しないで済む。何故なら見捨てる気が微塵でも有ったらこんなに近くで座って待つ理由が無いじゃないか。
「なら、俺は一時間は寝れたって事ですか、有難うございます。」
「別に私は何もしてないわよ、まぁ休めたんなら良かったじゃない。」
「ほんと、戦闘中に倒れてたら詰んでましたよ。それで白浜さん達は?」
「彼女達なら、さっさと持ち場に行ったわよ。後はこっちが時間になれば向かって合流して、イレギュラーが発生しない限り手順通りにゴブリンを減らすだけよ。」
「そうだと良いですが、相手も生き物で低いとはいえ知性がありますからね、どこまで想定通りに事が進んでくれるやら。」
「最初の数分間だけでも、こっちのペースなら良い方なんじゃない?」
「そうですねぇ、というか、随分悲観的ですね、ちゃんとその考えは自衛隊や一般の戦う人達に伝えました?」
「なんで、そんな面倒な事を私がするのよ。」
あ。はい。
俺が寝てる間に行われたであろう、話し合いで望奈さんは意見を提言しなかったようだ、つまりは戦闘が始まる前から想定でズレが生じてる事になる。
「無意味だと分かってても、言う事に意味があります。」
「例えば?」
「‥‥‥私はだから最初に全面的に納得はしてなかっと証明に。」
「結局言い訳を作ってるだけじゃない、どうせ負けたら死ぬんだし無意味よ。」
「それもそうですね、望奈さんが正しいです。それに、生き残った奴が正しいもんな。」
「ええ。結局は死人に口なしで、生きてる者が正当化されるのよ。」
確かに結末を第三者が見ていない限り、生きてる者が基本的には強い決定力を持っている、それはこの戦いでも変わらないのだろうな。
「貴方は、この戦い勝てると思ってるの?」
返事をしないで考え事をしていると、望奈さんが急に後ろを振り向き、横になっている俺の目をしっかり見ながらそう聞いてきた。
「負けると思って戦うつもりは微塵も――」
「そんな答えが聞きたい訳じゃないのは、分かるわよね?」
騙し騙しの嘘でも良いから、勝てると言ってほしい訳では、無いようだ。きっと望奈さんが求めてるのは、人とゴブリンが全面的に戦って最後に人が残ってる確率が微塵でも良いからあるのか聞きたいのだろう。
「俺は、悪魔じゃなければ、神でも無い。だからこの戦いの行末までを計算尽くして、結末を言う事は出来ませんが、一つだけなら俺の力で約束出来ます。」
誰一人として犠牲を出さないで終わらす事は不可能だ、それよか戦う者だけが犠牲になって終わればまだ良い方だと俺は思う。しかしそんな甘い考えは無意味であり、俺個人が出来る範囲で高確率で約束出来る事は一つしか無い。
「望奈さんはこの戦いが終わった後も、生きてますよ。」
望奈さんの表情が少し変わり、ほんの少しだけ微笑んだ気もするが、それはきっと気の所為であり、悲しさや寂しさが表情に現れたのだろう。
「約束、守ってよね。」
「任せてください。」
自分の言葉には責任を持て。
俺はこれを自分で決め破るつもりは微塵も無い、だからこの戦いは既にどんな手段を使ってでも、望奈さんを生き残ってもらう。
「最後に戦う前に、ステータス確認でもしましょうか。」
「そうね、その方が良いかもね。」
「「ステータス」」
【千田 本暁】 Lv7(27/70)
【職 業】:魔士 Lv5(0/0)
:護士 Lv2 (30/30)
【H P】:10
【M P】:190
【STR】:1
【VIT】:1
【AGI】:1
【DEX】:1
【INT】:69
【RES】:10
『SP=0』『JP=13』
スキル
【マジックアロー】
【マジックバリア】
実績
【チュートリアル1】
【極振りの体験者】
【人種殺し】
【ゴブリン初討伐】
【緋彩 望奈】Lv5 (35/50)
【職 業】・遠士=Lv4 (45/60)
・魔士=Lv1 (15/15)
【H P】:30
【M P】:19
【STR】:1
【VIT】:5
【AGI】:30
【DEX】:11
【INT】:3
【RES】:2
『SP=0』『JP=8』
スキル
【キックアウェイ】
【マジックアロー】
実績
【チュートリアル1】
【ゴブリン初討伐】
「こう見ると、どっかの誰かさんの性で変なステータスよね。」
「望奈さんはまだ良いじゃないですか、俺なんてバカの極み。極振りですよ。」
「そうね、貴方の防御力は並だもんね。」
何故かめっちゃ笑われてるが、実際にヤバいから強く反論出来ない、俺は適当な攻撃でもくらえば即瀕死だ。
「全然笑えないぐらい、ピンチっス。」
「それは、そうと、やっぱりこの溢れてる経験値を上手くJPで職業変換しながら、控えに回さないと勿体ないわよね。」
「確かにそうですけど、俺は出来ませんよ、だってどちらも戦闘で使うので外すとリスクが増えます、そっちは別に魔士を外しても大丈夫でしょうし、ありっちゃありですね。」
「そうね。で、何かおすすめの奴ある?」
「軽士を進めます、AGIが2でDEXが1増えるので、今の望奈さんに合ってるかと。」
「ならそれにするわね。」
「悩まないんですね。」
「え?だって貴方がそう言うなら、それで良いんでしょ?」
「まぁ、はい。」
何だろう、この怖いぐらいすんなり従うのは、逆に怖い。
「俺達は戦闘が始まって、味方が混乱する前に自身のLvを上げる事ですかね。」
「これが上がらないと職業の方も上がらないもんね。」
「それと、戦闘中にLvが上がってSPが増えたりしたら、望奈さんはAGIに振るかVITで良いと思いますよ。」
「わかったわ、それ以外は上げても余り意味無いもんね。」
俺は、最初にLv上げれるかどうか次第だな、上げれたら堅士を取ってVITを上げ、それのLvを上げながら調整して、ゴブリンワンパンアローを目指すのが一番手っ取り早いだろうな。
「そろそろ合流しましょうか、ゴブリン退治です。」
「退治って生易しいレベルじゃ無いでしょ、あれは。」
「ゴブリン殲滅です。ささ、行きましょう。」
「了解、」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます