47.


「眠い‥‥」


 寝ても寝ても、眠り足りない、そんな感じだ。


「嘘でしょ、後2時間もしないで戦いが始まるのよ?」


「そうは言っても、眠いんだから仕方ないじゃないですか。」


「それでもやる事はあるのよ?」


 望奈さんに手首を掴まれ引っ張られるが、どうせなら手を握って欲しかった、なんて気持ちが湧き上げるのは男性として仕方ないのない事だった。



 それから俺は集中出来ていない状態で、一時間程住宅街や防衛ラインの周りを連れ回され、ひたすら散歩させられ、半ば強制的に連れ回されたおかげで、今にも死にそうだが、最低限の確認が出来たからまだ良いだろう。


「もう死にます。」


「まだ戦いは始まってないわよ。」


「たしかに‥」


「なら起こすから少し仮眠しなさい。」


 何故か望奈さんが優しくなり、仮眠してもいいと許可がおりた。


「なら膝まくらを要求しま――」


「そんなフザけた事言う気力があるなら、仮眠は必要ないみたいね?」


「いえ、黙って眠ります。」


 どうやら優しい女神様では無かった様だ、俺は黙って日陰のコンクリートに横たわる。横たわるとひんやりと冷たい、では済まないレベルの冷たさが身体に伝わり、一瞬で目が覚めたのは俺のミスだった。


「やっと見つけました!緋彩せんぱぁいッ!!」


 俺がそんなバカな事をして望奈さんがクスクス笑ってると、どうやら白浜さんに見つかり、パーティーメンバーであろう人達を引き連れ、わざわざ近寄ってきた。


「最悪だ。」


「貴方は色んな意味で眠れないみたいね。」


 何故か嬉しそうに望奈さんそう言い、近寄って来ていた白浜さん達が状況を掴めないで立ち尽くしてる事に気づき、望奈さんがこの話題を説明する事無く、白浜さんに何の用か聞くのだった。


「それで、白浜さん達は何をしに来たの?そっちも自衛隊の人達と作業をしてたと思うのだけれど。」


「えッと。実は。」


「実は僕たちも自殺隊に入る事になったんですよ。」


 誰だこいつは、そして自殺隊って決死隊より更に酷い認識のされ方だぞ。だいたい俺は望んで入った訳じゃないのに、そこに入って来るとは中々の狂人だな。


「そう、なら後ろの貴方達は白浜さんと、久藤さんの二人に説得された訳だ。」


「説得って緋彩先輩わたしを悪者に仕立て上げてる!?」


「そうか。」


「ええええぇぇぇぇぇぇぇ――」


「緋彩さん、白浜はほっといて一緒に戦う事になったので、仲間を紹介させてください。」


 久藤がそう言いながら後ろで待っていた、人達の紹介をし始めたので記憶を蘇らせながら頑張って覚える事にした。


「まず背が一番高いのが麓山で――」


 俺が青年くんと覚えてた方が麓山さんであり、背が本当に高く170以上は普通にありそうで運動部系のカッコいい感じの人だった。


 そして比較的俺と背が同じぐらいの仲間でちゃんと同志っぽそうな、普通そうな子は鈴木さんと言うようだが、こちらは区別するなら陰キャに分類される感じの可もなく不可もない感じの男性だ。


 白浜さんは勿論スルーし、女性達の紹介に入り。


 勝手にちょっとギャルっぽい、なんて失礼ながら思ってた人は前澤さんと言い、背は鈴木さんとほぼ同じだが二人とも、絶妙に俺より高そうだが気の所為だよな?そして軽く挨拶しただけだが、この6人で一番まともそうな感じだった。


 最後に終始ふわっとしてる、155ぐらいの子が小村さんで、これに白浜さんと久藤さんを入れた6人が見事、自殺隊の新メンバーとして参加する事になったらしいのだ。実際に五島さんから何も言われてないから詳しくは分からないが。


「まぁ、よろしくお願いしますだ。」

「そうね、一緒に戦うならよろしくね。」


「はい、先輩!」


「え、ええ‥またよろしくね。」


 ずっと元気で望奈さんに距離を近づこうと身体を前に倒しながら、喜んで返事をする白浜さんに望奈さんが、引き気味だったが、その場で誰も声を発せられず向こうの5人も白浜さんのテンションの高さに驚いてる様だった。


「ねぇ、ドクロンはどうすんのよ。」


 望奈さんが白浜さんから逃げる為に俺に近づき、耳打ちしてくる為俺は望奈さんの方向を向いて返すが、めっさ白浜さんに睨まれてる気がするのは気の所為であってほしい。


「別に話す必要は無いんじゃないですか?説明するのも面倒ですし、話しても望奈さんと同じタイプの人は完璧に納得する事は無いと思うので、厄介です。」


「そうね。って今、私の事厄介な人扱いしなかったかしら?」


「気の所為です、空耳です。」


「あ、そぅ。なら良いわ、ドクロの事は内緒ね、って事だから出てこないでよ。」


 怖い怖いこわいこわいって、ドクロンとセットで俺が睨まれてる感じするから止めてほしい、それにさっきから何故か視線が増えてて辛いしさ。


「あの、いつまで二人でイチャイチャしてるおつもりですか。」


「してないしてない。」


「白浜さん、勝手に決めつけるのは、良くないわよね?」


「は、はい。すいません、でした。」


 後輩を一瞬で黙らせる、まさに完璧な上下関係と言わず何というか。


「それでもし良かったらこの後、移動して下見をしながらどう戦うか話し合いをしませんか?まだ1時間以上は時間がありますし。」


 久藤さんよ、それはつまり言い換えれば、俺は一時間は眠れたって事なんだよ、その提案は物凄く嬉しくない。


「私達は別にそれで良いわよ。」


「ちょ望奈さん!?私達?、達って?俺も!?」

「そうよ、何かあるの?」


 あ、ダメだこりゃ。寝かせる気無いやつやん、俺戦闘中に倒れても文句言わんといてな、これだけ身体にムチ打って、糸で動かせば、いつ切れてもおかしくないのだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る