34.骨



「ああぁぁもうッ!ナンでこいつはこんなに硬のよッ。」


ペチ ペチッ


「・・・・・・・」


(だからって、素手で平手打ちしなくてもさ...)


 望奈さんは矢で攻撃して、大切な矢が折れたのにも関わらず頭蓋骨スケルトン、いや、ドクロ野郎が無傷であった事に納得出来なかったようで反撃が無いのを良い事にボールみたいに蹴ったり、投げたりを繰り返し、今では腕で抱え持ち、もう片方の手で額をペチペチしてた。




「嬢ちゃん,,一応イタイんだよ、止めてくれネェか?」




 恐らくダメージが入ってる訳では無いのだろうが、あのペチっと綺麗に決まる音から察するに痛そうだ。





「ダメよ、絶対許さないんだから。」





 見てて面白いから言わないが、ドクロ野郎を半殺しにするのは簡単だ。


 適当なドラム缶の中央に宙吊りにしてドラム缶にコンクリを流し込んで東京湾にでも捨てる。


 ドクロ野郎が酸素も食事も必要としないなら死なないかも知れないが、その場合コンクリートが海水に侵食され壊れるまで、ずっとドラム缶の中で実現される生き地獄だ。


 それにコンクリートが無くなってもこのドクロ野郎が浮かんで来るだけの浮力を持つのかは俺にも分からんが、浮かんでこれないなら一生、海の底に居ることになる為二重で半殺し出来るこの方法はまさにオススメの案である。



(それにしても頭蓋骨を叩いてる女性とか、この絵面はいったい何なんだ…)





「ナぁ、嬢ちゃん、アンちゃん、、オレが、オレが人を殺したってのはホントうナンダよな?」


「あぁ、本当だ、次いでに言うとあんたは俺と望奈さんの二人も後少しで殺す所だった」


「吹きトバばされた、瞬間のキオクは微妙にあルンだ、ソンな気もしテタが二人ともスマなかった」


「謝ったって許さないわよ、それに殺された大勢の人は帰って来ないんだから。」


 

 今にも泣きそう望奈さんを見ていると、自分がどれほど他人を拒絶出来ているのか分かる為、却ってキツイ状況だった。


「ナぁ、その…オレがコロしたって言ってるその人たちをオレに見せてはくれネェか」




「望奈さん、パスっ」




 俺は両手を開き投げろと言わんばかりにする。




「んッ。」




 望奈さんがドクロ野郎を投げる、これが壁にだったら先程投げてた様に全力で投げてたんだろうが、俺が受け取る事をちゃんと考慮され、ドクロ野郎は硬く、弾力が全然無いのに地面でワンバンして俺の手元に来た...。






(物凄く痛そう。。。)


「あんちゃん、オレ泣いていいか?」




 ドクロ野郎が小声で切実な問いをしてきた。




「ダメだ、記憶が無く見に覚えのない事で災難だろうが頑張れ」




 俺も小声で話し、歩き出す。


 望奈さんにも安全の為、近くには居てもらわないといけないので正門の近くまでは来てもらいそこで待機しててもらう。





「正直、これをもっかい見てもらおうなんて思わないよな、慣れないだろうし、、どうだドクロこれがお前がやった事だ」




「マジかよ、これミンナ、オレがやったのかよ…‥」


 ドクロ野郎は黙ってソレを見つめていた、その時。目の周りの骨だけが目を見開いたかの様に音を軋ました気がしたのは気のせいなのかは分からないがそんな感じがした。



「あの嬢ちゃんがおこるのも当たりまえだな」



(それもそうだよ、何度見ても悲惨過ぎる、本当に何人居るんだか)






「アンちゃん、下ろシテくれ、ここデイい。 嬢ちゃんの所でまっててクレ、しばらくしタラそっちに行くよ」


「分かった」




 俺はドクロを地面に下ろし、望奈さんの元に向かう。




 あのドクロが逃げようとしても、今の状態じゃ大した速度は出せないはずだ、出せるのなら最初っから自分で逃げてるだろうし。


(てかあいつは逃げる事すら必要ないか)









「望奈さん、大丈夫ですか?」




「ぁぁ、うん大丈夫よ、ありがと。――あのドクロは?」


「あのドクロならあそこです」




 俺はドクロを指差す。


 指の先には正門で動かず、何かを見つめているドクロの姿。




「そう、なら良いわ。」






「それで、これからあのドクロどうしたいですか?」



「倒せないって厄介ね、だけど野放しにしてまた大量殺人でもされたら...。」



「でも今はもうあんなに非力ですよ、流石に大丈夫じゃないですか?」




 それに俺は死んだ人の中に知り合いは居ないと思ってるから、対して気にはしてない、だけど野放しが嫌だと言うのならせめて倒して経験値にでもなってもらおうと思ったが、ドクロ野郎は倒すのは現状不可能なので、これ以上は放置するしか無いだろうな。




「大丈夫って言い切れないじゃないの‥」



「望奈さん、貴方はどこまでの人を助けるつもりですか?」




 俺は声のトーンを少し変え話をする。




「この世界では、今も数秒単位で人は死んでいます、それを全て助ける事は不可能で、望奈さんが誰かを助けようとしても望奈さんが危険になれば、その時にその他の人が助けてくれる人が居るとは限りません、明日は我が身ですよ、改めて聞きます貴方はどこまでの人を助けるつもりなんですか?」




(英雄は存在出来ないのだ、何処かで線引しなくてはいけない)




「わたしは、私が助けられる人は助けたい、可能な限り多くの人を、それに誰かを助ければ巡り巡って自分に返ってくるって私は、信じてるもの。――でも安心して、貴方との約束は忘れてないし忘れない、だから何かあれば従うけど私に出来る範囲で、私はこれからも助けようとするわ。」





(善人だな、きっとこの人なら人に裏切られた後でも、また人を信じ助けようとするのだろう、俺には到底無理だ。)


 だからこそ少しは手助けしようとしているのかもしれないな。





「分かりました、それじゃあのドクロ野郎は俺達のボールにでもなってもらいます? 頑丈そうで壊れませんし、時間はかかるけど自分で手元に戻ってこれる最新機能搭載ですよ」




「それは名案かもね。」


 望奈さんが明るく笑ったので先んじて良かった、あのドクロは良い仕事をしてくれたようだ。











 それから10分程してドクロが転がって来た。



「もう良いのか?」



「アァァ、オレがしてしまった事はチャンとこの目デみた」



「そうか、ならその身が朽ちるまで忘れないことだな」



「アンちゃんはあまり、気にしてナイのか?、ナンだかソんナふうにミえるんだが」



「あぁ俺はな、これ望奈さんには言うなよ?どうせ後で冷静になれば分かってそうだが、もしも言ったら、お前を二度と出てこられない場所に埋めて、生き地獄にしてやるからそのつもりでな」


「ワ、わかってるよ、あんちゃんもそのうめるホウほう、ッテのを嬢ちゃんには言わないでクレよ、あの嬢ちゃんはすぐにでもやりそうで、コワイからよぉ」



「仕方ねぇなぁ、そうしといてやるよ、それでお前はこれから俺達のボールになったからよろしく」



「おう、ってボール?、ナンダよそれ、俺一応モンスターだぞ、戦わせるとかナイのか?」




「お前のマジックアローで敵って倒せるのか?」


「タオせるにキマッテルだr――・・・・・・・・・・」


 急に黙るドクロ、そして数秒時を得てから喋りだす



「アンちゃん、気づいてたのか?」








「お前それにマジックバリアも使ってるよな?それも極小のサイズでだ、一体どうやってるんだ?俺にも後で教えてくれよ」



「 ――バレてたか‥だが、ナンでそれを、嬢ちゃんにはいわナイんだ?」



「言っても言わなくてもどうせ変わらないと思ったからだ、それでどうする、今から戦って俺達を殺そうとでもするか?」


「ハハッ、あんちゃん、それはチガウぜ、オレはな、さっきはアンちゃんタチを攻撃したみたいだが、オレは人をコロしたいわけじゃぁナイ、だから、これからどうかよろしくタノムよっ」



「そうか、ならよろしくだな‥良かったよ、俺もこれで固めて海の底にお前を沈めるなんて、面倒だったからな」



「オ、オウぅ、それは‥ヨカッたな,,,,」




 俺は地面を踏みつけながらこれ、と言い、そして海に沈めると言ったから何をしようと想像がついたドクロは、苦笑い気味でぎこちない喋りをしていた。






「何、仲良く喋ってるのかなぁ?、まさかいやらし事とか話してるんじゃないでしょうね。」



「違いますよ、なぁドクロぉ~」


「オ、オウよ!ぜんぜんチガウはなしをしてたぜ、何はともあれこれからヨロしくな嬢ちゃん!」




「誰もあんた何かと仲良くよろしくしないわよッ。」




「オウ,,,,」


「別に気にしないで良いぞ、あれはツンデレって言うんだから」



「そうなのか?アンちゃん、そうか嬢ちゃんは、ツンデレって奴ナンだな」




「はぁあ!?誰がツンデレですってッ、違うからね、二人とも次にそう呼んだら許さないんだから覚えてなさいよっ!。」




「アンちゃんめっちゃ怒ってそうだが、怒ってないようにも思えるのがツンデレって奴なのか?」


「おぉぉ、ドクロ、お前いい線いってるぞ、そうだそんな感じのがツンデレだ」






「あなた達...、串刺しにするわよ。」



「怖いですよぉ、落ち着きましょうよ、せっかく可愛い顔に角が生えたら勿体ないですよ」



「だ・れ・の・せ・い・よッ!。」



「まぁ、まぁ、という事で行きましょうか」


「ソウだな」


「ちょっと何で私を無視してるのよ、待ちなさいッ。」




 新しい仲間?も増えて

望奈さんをいじりやすくなったので、結果的には良かったのかもしれない。




 そして俺達は迂回しながら情報収集をするのだった。


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