33.悪者は悪者を進んでは裁かない



 俺達の目線の先には、ダルマの様にコロコロ転がり、近づいてくる頭蓋骨だけのスケルトンが居た。


「ねぇ、あれって近づいてきてるけど大丈夫なの?」


「ん~ん、分かりませんしもう一回転がしますか、マジッk―――」




「スットプ!ストップッ、止めてくれぇぇぇぇぇぇええええ」



「「・・・・・・」」




 頭蓋骨が左右に揺れ、何も無く影で真っ黒なその目がこちらに何かを訴えながら、顎の骨を動かし懇願していた。


 どうして良いのか分からずただそれを見つめる、俺と望奈さん。






「なぁ、ハナシを聞いてくれよ‥」



 どうしても話したい事があるらしい。


 望奈さんを見ると任せると目で合図されたので、俺は話を少しは聞くことにした。




「それ以上近づかないなら、話は聞いてやる」




 俺達と頭蓋骨スケルトンの距離は15mぐらいはある、この距離なら恐らく大丈夫だろう、あいつが身体を取り戻したら即死しそうな距離だが今は頭蓋骨だ、油断は禁物だがこれがギリギリの妥協ラインだ。







「大丈夫さッ! 俺は悪いスケルトンじゃないよ!」










「「…‥‥‥‥‥‥…」」



 こいつダメだ、話しを聞いては行けないと俺の感が訴えている。


 望奈さんも警戒してた厳しい目つきは消え、無表情になり唖然としていた。




「もう終わり?なら、マジックar――」




「チガウチガウ、待ってくれジョウダンだ、ハナシしを聞いてほしいだけだから」



「次はないぞ 」



「スマン、悪カッタ、話スヨ、話すよ…‥・・実はオレ、ナンでここに居て戦ってるのか、何もワカラねぇだよ」




「人を‥、人をあれだけ殺しといて..分からないって何言ってるのよッ、ふざけないでッ!。」


 急に罵声が聞こえ驚いて横を見ると、物凄い剣幕で怒鳴りつけ今にも近づいて何かしようとする望奈さんの姿がそこにはあった。



 確かにあの人の数を殺したのは十中八九こいつで間違いは無い、それなのに記憶が無いとか言い始めた、それじゃ殺した事による罪悪感なども微塵も感じて無いと言い切っているのと何も変わらい、怒る理由としては十分すぎた。



 そしてあれだけの人の山を見て、感情移入して吐きそうになってた望奈さんなら、尚更怒るのも無理は無い、元々望奈さんはこの世界が始まって直ぐに赤の他人を助けようとした、善意の持ち主である事もこれ程までに激化する要因にはなったのだろうな。






「人をコロした?・・・オレがかッ!? 」




「もうぃぃ..私が今すぐ殺してあげる。」


コンっ


「痛っ、ちょ何で私にチョップしてるのよッ!意味分かんないんだけど。」




「お・ち・つ・けッ!」


ゴンッ。


「ぃ"ぃ"た"ぃ..。」


「冷静になってくださいよぉ、何で矢を放つんじゃなくて握り締めて近づいて行こうとしてるんですか?」


「そ、それは…、そうよ!あいつをこの手で直々に矢をぶっ刺してやろうとしたのよっ!。」


「いや、無理があるでしょ.」


(この人って何かあると案外んポンコツになるんだよなぁ…)



「はぁ、はいはい、もう分かりましたから少し落ち着きましょうねぇ」


「何よ、私が間違ってるって言うんの?貴方どっちの味方よ。」



「どっちの味方って‥望奈さんの味方に決まってるでしょ、でも、まずはそこでショボクレてる頭蓋骨の話しを聞いてからでも別に遅くは無いでしょ?」



「分かったわよ..。」




 分かったと言いながら静かに頭蓋骨を睨む望奈さん。



「おいスケルトンッ、それでお前はどこから記憶が無いんだ?」



「ア、ン~ん、スマねぇあんちゃん記憶がとびトビで、オレは森に居た気がするんだが、ハッキリしてるのはさっきあんちゃんに攻撃される直前からだ 」




「すげぇ~曖昧だなお前、それで・森ってのはどこの森なんだ?」



(記憶が無いと言う奴で一番、厄介なパターンは嘘をつくために記憶が無いと言う奴だ、記憶が無いと言ってしまえば後は好きなだけ作り話を出来るからな、気おつけなければ)




「森ってのはアレだ、オレが住んでた―――ン?アレ‥……」



 こいつからはまともな話しが聞ける気がしなかった。



「他の事でいい、何か覚えてないのか?」




「ホかのこと、ん~、あえて言うなら多分オレは長いあいだスケルトンだった気がスる」



「まぁ、それは何となく想像出来るけどさ、他はないのか?―――なら最後に言い残す事はあるか?」



 俺はスケルトンに手を向ける、情報がこれ以上無いなこれ以上関わるメリットは正直言って無いかな。



「サイゴ、、サイゴってッ!サイゴォ!?、マってくれたのむ、オレは死にたくないんだ!」


「年貢の納め時ね、そこで大人しくしてなさい。」




 急に話しに入って来る望奈さんが、チャンスとばかりにスケルトンに手を上から振り下ろしながら大げさに指を指し終わりを告げる。





「死にたくないって言っても、放置してたらまた人を殺さないとも限らないだろ?」



「コロさないよ、タノム、み逃しテくれ」



「それッ殺さないって保証、あんた出来ないでしょ!」



「そうですよねぇ~殺さないって保証どうせ出来ないでしょうしね」






 望奈さんに同調して、さっき拗ねてた機嫌とりを行う。


(それに本当にあいつが殺さないって保証が無い事に変わりはないしな)






「ァァァぁぁ、イヤだァ、しにたくない、ゔゔゔぅぅ‥」



(何かあいつ泣いてないか?、そんな手が俺に通じるかよ)



「じゃあな、マジッk「まって。」 ―ふぇ?」




 俺は急に望奈さんい止められてしまった。




(あぁ、自分でトドメを刺したいってやつか、ここは譲ろう )



「あぁ、すいません望奈さん、どうぞやっちゃって下さい」








「観念しなさい私があの人達の仇は討ってあげる。」



 望奈さんは今度はちゃんと弓を構えて矢をセットしてくれた、どうやら少しは冷静になってるようだ。



 そして狙いを定められた矢は。


 数秒で放たれ、頭蓋骨となり生きているスケルトンに命中した。






 矢は俺の予想通り、額の骨に当たると軌道をズラしながらその後ろの地面のアスファルトに当たり矢はへし折れた、そしてスケルトンはビリヤードの玉が転がるかの様に、コロコロ転がってどんどん俺と望奈さんから離れて行った。




「え・・・・。」


「あいつ硬いですよねぇ~どうしましょうか」



 最初に俺の攻撃が効かなかった時から、倒すなら相当面倒な奴だと思ってたから倒さなくてもと思ってたが、望奈さんの怒りが全然収まらないので、取り敢えず殺す方向で同調して、攻撃してもらったが少しは気が収まったかな?、正直俺はどっちでも良いんだよね、殺すか殺さないかは。




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