32.どうなってんの?


「勝ったのかぁ?はぁ、はぁ、はぁ、はぁぁっ」


 魔法を放った直後に俺は自重落下によって半ば腰当たりから落ちたがその痛みは、目の前の状況の理解に脳が追いついていない為、感じていなかった、そして俺の身体は極限の緊張感と無意識による無呼吸状態にからなる疲労が、安堵による気の緩みから一気に襲ってきた。




 目の前に倒れているスケルトンを見ると身体を形成している骨格は形を保ったまま綺麗に横倒れになっており、頭蓋骨だけが無くなっていた。


(そうだ、さっき俺の魔法で飛んで行ったんだ、どこだ?どこに行った?)




 俺は戦闘が本当に終わったのか分からない不安と恐怖から、顔を左右に動かし飛んで行った頭蓋骨を必死に探す。




(あった!)


 ようやく見つけた頭蓋骨は10m程離れた場所に、転がっていた。



(見た感じ頭蓋骨は綺麗だが、これは頭と身体を離した事で俺達は勝ったって事なのか?普通の生物相手ならこれで勝ちなんだが相手はスケルトンだ油断は出来ない‥)




「ねぇ‥ねぇ!ねぇってばッ!」



「ッおぉ、望奈さん‥」



 深く一人で考え事をしていた為、呼んでたのに俺が反応しなかったようで、望奈さんは声を段々大きくして呼びながら、俺に抱きついて来た。




 後ろに両手を地面に置き、上半身を支えて起きていた俺は顔だけを望奈さんの方に向けた、望奈さんは斜め前から抱き着いたようになっており、そして顔は俺に押し当てているため目が合うなんて事はない。


(よっぽど、怖かったんだろうな、実際俺は死を覚悟してたし)


 勝てた事すら不思議でならない冷静に考えて、


 あの山がもし人、100人以上で出来ている場合、Lv1の人間100人だとするなら、奴のレベルは想定ではLv14以上。


 200人以上ならレベル20以上。


 300人以上ならレベル25以上だ。




 レベルアップに必要な経験値を俺達と同じと仮定して、必要経験値も同じ上がり方をしている場合だけの話だが、あの速度で迫ってくるんだ、間違いなく高レベルに違いない、そんな奴に勝てたんだ奇跡に近いだろうよ。





「望奈さん、もう大丈夫ですから」




 抱き着いてる望奈の背中に手を置き、微かな力を入れポンっと手を優しく動かす。



「死にかけといて大丈夫って何よ。」



 大丈夫だなんて言葉は偽善だ、本当に敵を倒したかすらわからないのに‥



「それになんで、何で、死にかけたのにそんなに落ち着いてるのよ、おが‛しい.でしょ‥。」




(それは自分より感情を表に出してる人が居るからですよ、なんて言えないな‥)


「千田さんは死ぬのが怖く、ないの?。」



 俺が返事を返す前にまた答えづらい問が投げれた。




「怖いか、怖くないかで言えば、恐らく怖いと思いますよ、でも正直なとこ、分からないんですよね 」






「何よそれ、心配したわたしがバカみたいじゃん。」


「嬉しかったですよ心配してくれたり俺の分まで泣いてくれて、それに望奈さんが居なければ俺は死んでたでしょうし、ありがとうございます」


「なに勘違いしてるのよ、だれも貴方のために泣いたと言ってないでしょ。」



「ほう?、なら望菜さんは素で泣いてたと、俺に抱きつきながら」


「・・・それは・・その‥ね?」


「何がね?、何ですかね?」




「同調に質問で返すの止めて貰える?」


「質問に質問で返すのもいかがなものかと思いますが」



 そして俺達はお互いに顔を見合わせ、目が合い、笑い合うのだった。





――





「俺はいつまでそのイチャイチャを見せれれば良いんだ?」



 笑って気が緩んでいた、俺の集中力は急に聞こえた声に集中せざる負えなかった。



(誰だ、どこから話しかけて来やがった!?――誰も居ない‥)




 俺は全方位を急いで見渡した、だが目視出来る範囲には声を発したであろう存在は居ないが為に、俺の視線は最悪な物に向かった、そう地面に落ちているスケルトンの頭蓋骨だ。






 嘘だ、嘘だと言ってくれ。


 誰かが遠距離から話しかけてるとか、近くに居るけど姿が見えないとかであってくれ、頼む。



「イチャイチャはもうお終いか?お二人さんよ」




 その瞬間、俺の目はハッキリと地面に落ちている頭蓋骨の顎の骨が動いてるのを見てしまった。




(最悪だ…)




「マジック――「ちょッマテマテ待て待てッ!待ってくれッ!」誰が待つかマジックアロー」




 頭蓋骨モドキのスケルトンに俺は攻撃を待てと言われたが、あんなのが復活したら終わりだ、頭部しか動いていない今の内にトドメを刺さなければ。




「イテェェ―――"イテェ―”イテェ―よ〰あんちゃ~ん、頼むぅー、待ってくれ―”れ―”れ―”れ――」




 頭蓋骨がコロコロと転がりながら、止めてと叫んでいる。




(何だよこの光景は、てか俺が一歩的にいじめてる様に見られないか?)




 俺は気になって、まだ抱きついている望奈さんの方を見ると、望奈さんは口を半開きにさせた状態で転がる頭蓋骨を見ていた。




「どうします?望奈さん、アレ、」




「そうね、どうしようかしらね、アレ。」


 自力で止まる事が出来なかったのか、回転が収まるまで転がり続け十数mは転がる頭蓋骨だった。

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