24.力はやはり強力だ
一人の青年を斬り殺す為に剣は振り下ろされきった、だが青年が血を大量に吹き出しながら倒れる、なんて事は起こらなかった。
(またあんたか)
剣が振り下ろされた場所に視線を向けると、青年の着ていたシャツを力強く引っ張り、後ろに引きずり込んでいた五島さんの姿が見えていた。
「今の攻撃は俺が助けなければ、この子は死んでいたと思うんだが、君は彼を殺すつもりだったんだよね?」
「へッ、先に攻撃してきたのはそっちだぜ。正当防衛だよおっさんッ」
状況を少しでも把握しようとした五島さんが、両者を交互に見てから、落ち着かせる為かゆっくりと話し出していた。
「正当防衛って言っても。日本だと殺したてしまえば大抵の場合は、度が過ぎてるって事で、正当防衛として成り立たなくなるんだよ」
「くだらねぇ、どうせ今の日本に法律はねぇだろッ! こんなにもモンスターが溢れてるんだからよッ」
「とりあえず、話を聞くから双方とも、武器を下ろしてくれないか?」
舐めた態度で接していたチャラ男が、五島さんに睨まれ武器を下ろし事で、それに続いた後ろの取り巻きと、青年側の人達が武器を下ろしていた。
(五島さんが入ってくる時、見えなかったな)
意識が剣に集中していたとはいえ。どの距離から、どんな速度を出して入ってきたのやら、あの感じだとやはり近接戦闘タイプで、AGIを一かニ番目ぐらいには重点的にポイントを振ってそうだな。
「誰か最初っから見ていたものは居るか?」
そう五島さんが呼びかけると野次馬達はそそくさと離れ、そして残ったのは。
「おっ千田さん。悪いけど、何があったか聞かせて貰いたいから、ちょっと付き合ってくれるかな?」
(あぁ、俺も逃げればよかった)
これは報酬を要求しないといけませんね、後で。
「はぃ」
渋々、五島さんの所に駆け寄り、後をついていく。
歩き、行き着いたのは、数時間前に俺が地面で寝そべったテントだった。
「千田さん、悪いけどここで待っててもらえるかな、先に当事者達の方から話を聞きたくてね」
「はい、構いませんよ」
「すまないね、後でちゃんとお礼させてもらうよ」
「はい!期待してます」
「はは、そんなに期待されると困るなぁ、それじゃ後でね」
五島さんはテントから出ていき、俺は一人になった。
(ステータス)
時間は限られてるんだ、自分のステータスを見直すのにはもってこいの時間だ。
ただし監視されているかもしれない事を忘れてはいけない。俺はゴロゴロ寝転がる怠け者を演じなければ。
【千田 本暁】 Lv4(27/40)
【職 業】:魔士 Lv3(27/45)
:運び屋 Lv1 (0/15)
【H P】:10
【M P】:148
【STR】:1
【VIT】:1
【AGI】:3
【DEX】:2
【INT】:28
【RES】:4
『SP=5』『JP=7』
実績
【ゴブリン初討伐】
【人種殺し】
スキル
【マジックアロー】
パッシブスキル
【持久力向上】
やはり笑えないほど、一般人なんだよねぁ。
魔法させ使わなければバレる心配もないほどに弱い。
てかVITが1って普通の人は怖くて出来ないんじゃないか?
だって一撃で死にそうだもんな初期って。
だって+2するだけで人間としての初期HPの倍は得られるんだろ?そりゃ誰だって喜んでVITに振りそうだよな。だけどこの数時間で痛いほど思い知らされた、結局敵を倒すなり逃げられないなら、一撃耐えられても死ぬだけだ。
不意打ちを警戒して振るのならまだ分かるが、その危険性よりも今は強敵の対処を優先させないと行けない。
なら俺の残ってるSPはやはり、INTに極振りになりそうだな。
そして残ってる問題はこのJPだ、別に急いで使う必要はないが運び屋が全くもって役に立ってないのだ。
パッシブスキル『持久力向上』、これの効果で走っても疲れないかもとか思っていたが体感的にはあまり要らないと感じた。
だってAGIが7の望奈さんの方が軽々と走っていた。恐らくAGIが7の望奈さん的にはあの時のダッシュ速度は軽いジョギング程度だったからあまり疲れずにいて、俺にとってはあの速度がかなりのハイペースであった為死ぬほど疲れたのだろう。
それなら、俺も基本的に移動速度を上げてあの速度をジョギング程度と思えるようになれば持久力向上など必要ないのではないか、というのが今の俺の考えである。
これを外してもいいなら他の戦闘に役立つ職業も取れそうだしな。
さて考えはまとまった、後は五島さんから情報を引き出すだけだ。
俺は怠け者のようにひたすら五島さんが来るのを待った。
そして更に10分程経過したらやってきたのだった。
―
―
「随分と待たせてしまってすまないね」
「いえいえ、案外早い方だと思いますよ? あの状況の人達から、話しを聞いたと思えば」
俺は苦笑いしながらそう告げる、だって殺し合いしてた連中だぞ? 冷静に戻るだけで時間がかかる筈なのに、寧ろ早いほうだよ十分に。
「証人としていきなり呼んだ人を、長々と待たせるのは申し訳ないからね。僕に出来る限り急いできたよ」
「あははっ」っと笑いならが言う五島さんだが、どんな聴取をしたのか気になって逆に怖いぞ。
「ありがとうございます、それじゃ自分は何があったか話せば良いんですよね?」
「ただ見た事を教えてもらえればそれでいいよ、気楽にね」
それからは、俺があの場所に着いてから、聞き及んだ内容を素直に話していた。だってそれが、怪しまれないポイントなのだから。
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