21.体育館
体育館に入るなんて、実に久しぶりだ。
学校を卒業してからだから、何年ぶりだろうか。昔はこの広い場所で………てか、普通に狭い。
確かに天井からして広いよ?
だけど今見ている体育館は、殆どが段ボールで仕切られ圧迫されていた。
想像してた以上に酷い。
避難生活を経験した事のない俺からしたら、これは苦だな。
「お二人はこちらを使ってください」
「「……………」」
前を歩く五島さん体育館の窓よりの端で止まり、指さしたその先は、二人が横になれるかどうかの場所だった。
「申し訳ない、今は余裕がなくてね。早急に改善できるように努力しているのだが…」
「いえ、大丈夫です、案内ありがとうございました」
「ご理解感謝します、それでは私はこれにて失礼するけど、何かあれば近くの自衛隊員に申し付けて構わない。対応してくれないようなら私を探して、言ってもらえればその都度考えます」
「「ありがとうございます」」
五島さんがゆっくりと歩いて行き、やがて姿が見えなくなった。
「ッはぁぁ…」
もう限界、俺は段ボールに寝転がる。
「これ、案外丈夫ですよ」
「丈夫ですねって、なに呑気に横になってるのよ」
(え?なにか急ぎでやる事あったっけ?)
急いでも良い事ないだろう、冷静に考えるなら無駄な力は捨てるのが一番だ。
「望奈さんも横になったらどうですか?」
俺は望奈もどうだい?と誘ってみる。
勿論この狭い場所で二人で横になればほぼ密着することになるのだが、真夏ではなくこの寒い冬の時期を考えるなら喜んで横に来てほしい、めちゃくちゃ寒いもん。
「なら、そうさせてもううわ」
あれ?恐ろしいぐらい素直だな。
望奈さんがスッと隣に寝転がった。
(なんだ、これはデレか?デレなのか?)
「ねぇ、気づいてる?」
近いっす。
なんスカまさか俺に惚れてルンスカ!?
「はっぃ」
俺はなんとも言えない小声で返事をしてしまった。
「私達監視されてるわよ」
「…………………マジで?」
「あなた、気づいてなかったの?」
「面目ありません、浮かれてました」
「はぁぁ、ナニに浮かれてたのよ。だから私はこうして近づいて小声で話してるのに、もぉ」
惚れてるなんて思い上がってすみません。
全て俺の勘違いだったようです。
そして監視されてるなんて思いもしませんでした、一体どこからどこの誰が、いや誰ってのは恐らく自衛隊員でしょう。
「勿論自衛隊の方々ですよね?」
「見た感じね。だからあんまりキョロキョロ周り見ないでよ」
「大丈夫です、望奈さんしか見ませんから」
「また、打つわよ?」
「クックックッ、この状況でそんな事をしれば、また状況がややこしくなって我々のボロが出やすくなるだけですぞぉぉ」
「あなたね...、覚えてなさいよッ」
顔を赤らめ、俺に黙って見つめられるが良い。
今日打った仕返しじゃ。
―――
それから数分間は黙って、望奈を見つめ続けいていた。
流石に少し俺も気恥ずかしさがある為、そろそろ今後について話すとしよう。
まず俺の中でずっとこの場所に居るってのは、到底ありえないからな。
「なんだか、居心地が悪いですね」
「全く同感ね、これなら外で野宿してる方が気が楽だわ。てか、あなたの作戦でここに入ったんじゃない、当初の目的は達成した訳だけど、いつ出るわけ?」
「そうですね、ハイゴブリンは殺してくれましたし。こうしてる間にもモンスターは強くなりますから可能な限り早く出たいですが、もう少しだけこの内部の状況を把握してからにしましょう。その方が、他の避難所との比較とかで後々役立ちそうですし」
「賛成だけど、どうやってここを抜け出すつもり?きっと反対されるわよ」
「う~ん。こっそり抜け出すのは――」
「無理ね。そんな意識の隙きがあるなら、そこからモンスターが入れるって事になるもの、自衛隊がそんなヘマすると思うの?」
「思いません」
「なら他の方法を考えないとね」
「すぐには思いつきそうもないな、後他にも大尉の俺達のステータスの話どうするつもりなんだ?」
「あぁ、あれ?あれは適当にやっぱり戦えないとか言って、もし何か職業取れって言われたら職業変えて、その役をしばらく演じれば良いかなって思ってるのだけれど駄目かしら、どうせ職業変更用のポイントは余ってるんでしょ?」
「余ってるけど、勿体なくないですか?」
「ハイゴブリンから助かった命と比べたら勿体なくないわ。そんなにポイントを減らしたくないのなら、それよりも先に抜け出せばいいいのよ」
結局、抜け出す方法は必須なんだよなぁ~。
「なら最終手段は勿論強行突破ですが、望奈さんのステータスって今どうなってます?」
「なんであなたは強行突破から考え始めるのかしらね。まぁいいわ、私のステータスは――」
横になったまま、小さな声でステータスを話し出していた。
誰にも聞かれない様に、更に距離を縮めて。
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