19.共犯者


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁぁ、はぁッーはぁぁ」


「わたしたち、助かった、の?」


 俺達は銃声が鳴り響く集団の中に入れ、少し安堵して今すぐにでも座ったり、寝転がりたいと言わんばかりに疲れた感じだった。


「君たち、そこはまだ危ない、さぁ敷地の中に来たまえ」


 先程叫んでいた隊員が、俺達を中に入るように促し。俺達は集団を抜け、学校の敷地内に足を踏み入れた。


 そしてチラリと連れてきたゴブリン達を見ると、


(圧倒的じゃねぇかよ…)


 流石のハイゴブリンも銃弾を避けるなんて事は出来なかったらしい。身体中に何十発もの銃弾が撃ち込まれ倒れていった。


(実験は失敗か、まぁいいや…)


 そのまま俺と望奈さんは、自衛隊のテントに案内され中で休んで居てくれと言われたので、全力で言葉に甘え休むことにした。


 俺なんてもう椅子なんて座ってられないので、地面に寝転がった。


 地面の上にシート一枚だろう地面は、ふかふかなどではないが関係ない、こっちの方が今はいい感じだ。


 望奈さんはちゃんと椅子に座ってどうにか、女性としての品を保つためか両膝も合わせ座っていて、両膝に両手を添えて少し背中を丸めてるぐらいで、俺とは比べ物にならない程、周りの目を気にしているようだ。


(苦労する時多いよね、女性って)


「喉を切ったみたい」


「あぁ、冬に走るとヤバいですよね。俺も、口の中から、血の味がします」


 走って呼吸をしていると、乾ききった喉は簡単に傷づいてしまう。だから冬のランニングとか運動は辛い。


 持っていた水を飲み、軽く口直しして、再び休む。


 それから数分で外の銃声は止み、更に数分経つと俺と望奈さんを呼びに来た、先程の隊員がテントに入ってきた。


「失礼するよ」


「「……」」


 二人して無言で隊員を見つめる。


 というか床に寝そべっている俺がどうぞ、など言葉を発するのは流石になめているので、俺は無言一択で、完全に疲れているスタンスを取る。


「戦闘など色々あったとはいえ、名乗るのが遅れてしまったね。私の名前は五島 鉄矢、2等陸曹です。そしてまだ休みたいでしょうが、大尉が話しを聞きたいと言っておりますので、今から移動をお願いします」


 拒否権はなさそうだ、断ろうものなら無理やり引っ張られそうな感じだった。


「わかりました」


 俺は体勢を変えながら答えた。


「こちらこそ助けて頂きありがとうございます、案内お願いします」


 そんなに落ち着いて喋れる程、もう息を整えたのか。


 この人にもう任せちゃいましょうか?正直俺はお偉いさんと話をする元気はありません、そうしましょう。俺は今から横についていく木になります。


(昔演劇で木をやった記憶が…)





 そして案内された場所は大きめの仮設テントだった。


 中に入ると真ん中には大きいテーブルがドンと置かれ、その奥にまた別の一人用の机が置かれ、その椅子に大尉と思われる人物が座っていた。


 俺達は立ったまま?なんて疲労が凄いため考えていたら、五島さんが椅子を持ってきてくれて。どうぞと言われたので俺と望奈さんは、一人用の机を挟む感じで、大尉と向かい合うのだっった。


 距離にして2m無いないぐらいか、若干近い気がするが仕方ないか。


「わたし達を助けて頂きありがとうございます」


「ありがとうございます」


 望奈さんが先陣を切ったのでそれに続いて感謝を言う。


「礼には及ばんよ、市民を守るのが我々の責務だからね」


「ではお言葉に甘えて、そうさせてももらいます」


(俺より性格、悪くねぇか、望奈さんって…今の一言でさっさと恩を捨て去ったぞ)


「まず自己紹介をさせてくれ、私は大島おおしま 宏彰ひろあき一応ここの最高責任者みたいな事をしている者だ」


「私の名前は緋彩ひさい 望奈のなです、そしてこちらが、」


千田せんだ 本暁ほたかです」


「緋彩さんと千田さんだね、まずは二人が無事でなりよりだ、けれどこの場所を守る者として、大勢のゴブリンに追われてた理由を聞かねがならないのだよ。早速で悪いが教えてくれるかな」


 急に目つきが厳しくなり、問いかけてきた。


 まさかモンスターPKでも疑われてるんか?

(半分事実だが)


「実はわたし達は、この場所に自衛隊の方々が居ると言う話しを、住宅街を歩く人達に教えてもらい。助かると思い、二人でこの場所を慎重に目指したのです。――しかし隠れながら進んでいたら、急に他の個体よりも大きいゴブリンに見つかり、それを巻くために走ってたのですが、撒けず。このままでは死ぬと思い無我夢中でここまで走って来てしまったんです。モンスターを大量に連れてきてしまいすいませんでした」


 俺もとっさに頭を下げる。


 てか、一部話を変えてるな誰だよ、住宅街を歩く人達って、あッ!あの公園の奴らって設定か?それにしてもよくスラスラ話を作れるものだ、俺なら絶対に無理だ。後からボロが出るのではなく、話してる段階でボロが出る自信があるぞ。


「ふむ、そうであったか。ならば仕方がないか。それにしても、その住宅街に居た人達というのは?」


「詳しくは分かりませんが、男女六人でモンスターを狩っている、高校生ぐらいの子達で、わたし達が道でゴブリンに遭遇している所を助けて頂きました」


 やはりあの集団のことだった。


「モンスターを積極的に狩っている子供が、他にも居るのか…」


 大尉がなんと言えない表情になった。


 子供が自分の身を守るためにとは言え、武器を持ち暴力を行っているのだ、自衛隊員として思うとこでもあるのだろうな。


(ん?てか他の子って言わなかったか?)


「それでこれからわたし達はどうなるのでしょうか」


「あぁ、安心しため勿論他の避難してきた人達どうよう受け入れ、私達自衛隊が全力で守らせてもらう」


「ありがとうございます」


 俺も頭を下げる。


 俺は木だ言葉はなるべく発しないぞッ、ボロ出そうだからな。


「それで君たち二人は、ステータスという謎の力をちゃんと把握しているかね?」


 大尉からごくごく当たり前の質問をされたが望奈さんは、


「ステータスっ?」


 平然とトボけたのであった。


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