15.ひと時の時間



「私、あなたと出会ってから、走らされてる事が、急激に増えた気がするのは気の所為かしら」


「それは世界がこんなになってしまっては仕方のない事ですよ、僕は悪くありません」


 大群にバレる前にと必死に走り、途中で遭遇したゴブリンは俺が消し飛ばしたから、真っ直ぐに走り今は公園に着いていた。


 そして先程隠れるのに使っていた、ドーム状の遊具の中で再び休んでいる。ここなら冬の冷たい風も多少は防げ、モンスターに発見される確率も下がるのに使わない手はないだろう。


「Lvいくつになりました?」


「待ってね。え~っと……4になってる」


「おぉぉ、ナイスです」


(嘘だろおいッ! 俺は今さっき逃げながら倒したゴブリンで、やっと4になったんだぞ?! もうこれ追い越されてるやん!)


 仲間が強くなるのはありがたい、本当に信頼できる仲間ならだ。


 ここは契約士を取ってみるのはどうだろうか、人を信用できないが、この契約士に何かしら有意義な力が有ってそれを活かせるのなら、信じてた人に裏切られる二度目の辛さを味わわないで済む。


 現実的に俺の職業の魔士はLv2の経験値がカンスト状態で止まっている、上げたければ上げてもいいし、新しい職業を取るなら取れって事だろうな。




 か、効果的にかだ。




「何か新しい発見でもあった? そんな顔してさっ―」


(近い……)


 寒いからか互いに無意識に並んで座ったが、お互いの距離は近く、必然と顔も近い位置に来ているがこれは近すぎないか。


なんだこれは油断させようって魂胆だな?


  なるほど。騙されてやるか。



(はぁ..ダメだ、ダメだ。思い出せ、俺はよく言われただろ、お前の人生は女が絡まなければ明るいって……)


「ぃっや、なんも発見してないな、そっちは何かあったの?」


「ぅ~ん無いかな。それで職業って二つ目取れるのよね?」


「取れるけど、何か取るのか?」


「私も魔士になろうかなって」


 あらやだ何その笑顔、この子可愛い、、そして魔士になられたら俺の存在感がさらに薄まってしまう。


「悪いわけじゃないけど、それまたどして?」


「使えるMPを使わないのは勿体無いし、弓を持ってるからこれ以上他の武器を持っても邪魔だから、何も持たずに使える魔法士かなって。それに……」


 望奈さんは途中で話すのを止めてしまい。理由は最後まで言い続けてほしいものだが、十分に分かったから問題はない。


 確かにその通り過ぎて賛成の余地しか無いのだが。


「良いんじゃないですか、俺は反対はしないけど、一つの職業だけ伸ばすって選択もある事は忘れず、自分で決めてならどうぞ」


「わかったわ、ありがと」


 何故感謝されたのか、いまひとつ分からなかった。


 さて俺もそろそろ決めないとな。


(・・・・・・・・・・・だめだ、わかんね)


 魔士のLvを3に上げておくか、新しいのに手を出すのは後でだ。


≪魔士のLvを3にしました≫

≪職業補正によりINT+2、RES+1されます≫


 やべぇな、本当に極振りを極めてるよ。


 どこまで行ったらやめるか考えておかねばヤバいな、うん。



――



「望奈さん、そろそろ帰りましょうか。俺はゆっくり休みたいです」


 流石に疲れた、現在夜中の3時。


 色々ありすぎて忘れてたが、俺は今絶賛徹夜の疲労がヤバい。


(流石に眠りたい)


「私も、ゆっくり休みたいから帰りましょ。だけどあのオーク大丈夫かしら」


 やめろぉぉおお。


 一級フラグ建築士が余計な事をしゃべるな。



――



 俺と望奈さんは公園を出てマンションに向かうが、一級フラグ建築士が余計な事を喋ったので、びくびくしながら住宅街を歩き、オークとの戦闘をした場所に近づいたが、特徴的な身体のオークは居なかった。


「居ないわね」


「居たらそれはそれで手が出せないので、勘弁してほしかったので、これはこれで良かったですよ」


 家の方に向かって更に歩いて行く。


 無駄に心配していたオークは、影も形も無かったので俺達は無事に、我が家にたどり着けていた。


「今回は建築士が腐るッと」


「なにか言った?」


「いえいえ、何も言ってませんよ?」


 ボソッと言ったら聞こえてたらしい、何という地獄耳や。てか望奈さんは一級フラグ建築士が気に入っているのだろうか、普通そんなの嫌よッ!って言いそうなのに。


「望奈さんは自分の部屋で寝るんですよね?」


「え、。……無理よ」


「あれ~まさか怖いとか言うんじゃないでしょうねぇ~」


「違うわよッ!部屋はゴブリンの死体があるし血で汚れてて眠れたもんじゃないでしょ!」


 そこまで、怒涛の勢いで言うか?


 これはごもっともな理由の裏に、実は他の理由も隠れているとか…


「……」


「なに、見てるのよ変態」


「変態。そうですか、俺は変態ですもんね。なら一緒の部屋で寝るのは危ないと思われるので、やはり一人で眠っててくださいね」


「ちょッ、それは―わたしは、良いわよ、別に。あの部屋で寝れって言われるぐらいなら…され、った…って,,,」


 ごめんなさい。


 やり過ぎました。


 なんだろうのか、この可愛い生き物は。


 斜め下を向いたまま、ボソッと呟きながら言っているが、顔を上げてハッキリ言って、なんて調子に乗って俺が言えば、怒られるのが目に見えているので今回はこれでやめとこう。


「あまり部屋は片付いてませんが、それでいいならどうぞ自由に使って下さい」


「……ありがとう」


 望奈さんの部屋から最低限追加で回収する物を取って、俺の部屋に移動する。


 そして今は時間もかなり朝に近いが、生活リズムをちゃんと日の出と共に過ごすようにする予定なので、俺達は後数時間後には、起きていないといけないのだ。


 俺がいつも通り布団に入り、望奈さんも適当に布団を敷き横になっていた、仮眠はとても大事なのだ。


「おやすみなさいです」

「おやすみなさい」


 俺がおやすみと言うと、望奈さんは既に眠りかけているような声で返してくれた。


 二人とも寝るのかどちらかが見張りをするのか考えたが、この状況なら二人ともさっさと眠って、数時間で目を覚ました方が良いだろうと思い、俺達は同時に寝る事にした。


「この仮眠が終われば次に寝れるのはいつか、分からないしな」


 考え事をしていた俺も、疲れからか意識が途切、眠っていた。


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