14.プラン


 俺と望奈さんは南にある学校を目指していたが、住宅街にゴブリンが多すぎる為に、進行方向の西側にあった七階建てのマンションの屋上から、遠目で学校を確認していた。


「アレ、学校燃えてない?」


「燃えてますねぇー」


 周りを見渡し大きな建物を見つけ、学校と認識すると同時に燃え盛る炎が視界に入り、校舎の一部と門の辺りが燃える火が光源となり照らしている為、距離にして200m程離れているが見える事には見えていた。


 学校に避難してきた人は大勢いたようだ、何故?と思ったが理由は直ぐに分かった、グラウンドには自衛隊の大型車両が数台止まっており、彼ら自衛隊が居るという話が広まり、自宅にいるよりは安全と判断した人が押し寄せた。


 そんな感じだろう。


(人もゴブリンも多いな)


 人は千人は居るな、この周辺の人達はみんな逃げてるって感じか。


 そしてゴブリンも周りから集まったのか、門の周辺に動く小さな影が無数に蠢いており、俺と望奈さんが先程から遭遇してた大量のゴブリンは、同じ様に学校を目指し集まってた奴等だったのかもしれない。


 ゴブリンはどうやって集まってるのかと思ったが、その理由は直ぐに聞こえた『ドーンッ!!』と空気を伝い聞こえてくる、何かの爆発音。


 ロケランか手榴弾なのかは分からないし、他の爆弾かもしれない。だが、これがより多くのゴブリンに、学校にナニカが居ると教えている原因となってるのは間違いないな。


(その爆弾の一撃でもの凄い数のゴブリンが吹き飛び、門の周りに居た密集していた影の一つがぽっかりと拓きスペースが出来ているが、これじゃじり貧では?)


「近代の武器は凄いわよね、私の弓が時代遅れで弱いと言うのが明確に実感させられるわ」


「そんな事言わないで下さいよ、弓と兵器じゃ歴史が圧倒的に弓の勝ちですよ、それに軽さや、使う場面では価値が高まる時もあると僕は思いますよ」


(それに貴方の命中率はおかしいじゃないですか!と、言ってやりたい‥)


「そお?まぁありがとね」


「いえいえ、それにしてもじり貧ですよねぇ~、またどんどんゴブリンが集まって来てますし」


 マンションの屋上から落ちないようにそっと下を見ると、数匹のゴブリンが学校目指して走っていった。


「やっぱり、助けにはいかないのよね?」


「別に助けたくない訳ではないですが、俺達二人が行っても勝てるかはわかりませんからね」


 俺の言葉を聞いて、ただただ無言で下を向く望奈さん。


「助けないとも言ってませんよ」


「え?」


「俺達の今の目標は安全的に効率よくLvを上げる事です、なので学校目指してゴブリンが集まるというなら、周りのゴブリンをコッソリ倒して経験値にして、学校に行くゴブリンを少なくする事で間接的に助けましょうか‥」


「わかったわ!そうと決まれば善は急げよ、ほら早く下りるわよ」


 急げ急げと階段にかけて行く、望奈さんはとても笑顔だが、ゴブリンからしたら堪ったもんじゃないだろうな。



――

―――

――


「もッ、どれだけ居るのよ!」


「一匹いれば十五匹は居るのがゴブリンです」


「なんで十五匹でそんな理論なのよ、根拠は―」


「俺のゲームとラノベ的・感です」


「そんなの当てにならないじゃない!」


「でも実際今は、当たってるじゃないですか」


「「‥‥‥‥」」


 俺達はあれから、マンションの周辺でゴブリンを狩り、狩り、狩っていた。


 そして段々と数が増え、望奈さんは矢が俺はMPが減り、そのゴブリン共を捌けなくなり、遂にはマンションのエントランスまで追い込まれてしまった。


 マンションのエントランスは扉が狭く、二重になっているタイプでその扉は強化ガラスだ、多少の強度があっても強化ガラスは強化ガラスだ時間が経てば破られるのは間違いない。


 今、目の前にはその狭い通路に四,五匹のゴブリンが並びガラスを叩いてる。


 その奥には数えたくもないほどの沢山のゴブリンが居る。


「どうするんですか、望奈さん」


「え!わたし?、この作戦はあなたが思いついたんじゃないのどうするか考えてよねッ」


「だからって、後先考えずに一人で六匹の集団に喧嘩うる理由にはなりません!この戦闘狂ッ!」


「うぅぅぅ,,,」


 なんだ?


 涙目で見てきたら許されるとでも?


 確かに可愛いが、無しだ、この状況をどうにかしてくれ。


(なんでこの人は戦闘が継続して長引けば長引く程、戦闘大好き人間になるのだろうか、ちゃんと何処かでストッパーを設けてもらいたい)


「はぁあ、こうなったら望奈にゴブリンの相手をしてもらうしか‥‥…半分は冗談ですよ、そんなに睨まないでください」


 涙目になった望奈さんに睨まれるが、マジでどうしよう。俺の残りMPは13、マジックアロー四発、そして望奈さんは矢が二本しか無いと来た。


(詰みだ‥勝てねぇ...)


「よし、突破は諦めて逃げますか」


「え!?ナニ!あなた、さっきまではコレを突破するつもりだったの?」


「まぁ、最初は突破を考えた方がそりゃ経験値的にはおいしいでしょ?」


「はぁ..あきれた」


 さんには言われたくはありません。


「それじゃ二階に行きましょうか」


「二階に行くのね?」


「早くしないと、ゴブリンに捕まりますよぉ~」


「そんな意地悪言わないでよっ」


 俺が階段を上りながら冗談を言うと、慌てて望奈さんが後を追いかけて来る。


 人間も、一か所しかない入口が開いたら流れ込んでくる、そしてその時流れに逆らう事は不可能でただ流される。


――実際人混みの圧で亡くなった方もいるのだから。


 それ程までに沢山の数が動き、流れを成した時程に怖いものはないのだ。


「さてこの辺でいいでしょ」


 俺達はエントランスの真上の廊下を歩き、少し北側に進んだ所に居て、下を覗こうものなら沢山のゴブリン達に見つかりそうだが、まぁ今は大丈夫だ。


「至ってシンプルです、奴らがエントランスを突き破って流れ込んで来たら、ここから飛び降りて走って逃げます」


「‥正気?」


「勿論です!まぁ下手に落ちなければこの高さなら無傷で済みますよ、あッでも、片足だけで着地するとその足の骨にヒビが入ったりするので気をつけてくださいね、これは経験者からのアドバイスです」


「経験者って、どう生活してたら日本でそんなアクロバティックな事をする事になるのよ..」


「まぁ色々?さて、心の準備はしててくださいよ、飛べないなら今度こそ置いていきますからね」


「・・・・・」


 望奈さんはコッソリと下を見て高さを確認して、目を見開いていたが、この状況ではこれが最適解なので頑張って下さいとしか言えない。


 さぁ、後はゴブリンが来るまでステータスポイントを振るか。


 本当は職業の方も気になる事があるけど、流石にそんな余裕はあるか分からないし。


 俺は今MPが欲しい、やはり極振り一択だな。


 それにしても燃費が矢より悪いとは何事だ、魔法士よ。


 MPの回復速度的に基本回復はしないと思って戦っている、10分で1MPの回復なんて、頼っても無意味だ。


 それに比べて望奈さんの弓での攻撃は、敵がまばらなら矢を回収できて攻撃できる回数が今の所俺よりも多い状態だ。


 実際、この状況になるまでにゴブリンを倒した数は望奈の方が圧倒的に多い。


 俺の攻撃は一撃で倒せない時もある為、圧倒的に後手に回っていた、もしMPを気にしないで使えば直ぐに底について、一般人に逆戻りだし。


 まばらの敵を長期で倒すなら望奈さん。


 集団を短期間で倒すなら俺、って感じなのだろうな、連射速度が早く、矢を回収しなくてもいい事から短期的に多数を相手するなら俺の方が部があるからな。


(ナニを張り合ってるかって?別にそんなんじゃない、が、じゃないと俺が使えない子みたいじゃん?それだけだ。)


パㇼンッ―


「「「「「「「「「「「「「ギィィイイ!!」」」」」」」」」」」」」」」」


「凄い歓声だな」


 まるで推しのアイドルでも目の前に登壇したか?


「そろそろですね、先頭が見えてこっちに気づいたら攻撃しますので、その時に飛び降りてください。」


「わかった」


 余計な話しをする余裕は望奈さんから消え去り、望奈さんは飛び降りる事だけに集中して、向かいの建物を見ていた。


――


 ゴブリンの先頭が階段を上り切り二階に到着、そのゴブリンはすぐに俺達に気づき真っ直ぐ走ってきた。


「ギィイキャキャッキャアァ!」


「マジックアロー」


 俺の手から魔法の矢が発射され、その先頭のゴブリン目掛け飛んで行き着弾した矢が頭を弾き飛ばし、威力を多少保った矢が後続のゴブリンに命中して、ゴブリンを後ろに押し倒す。


(流石に、二匹目は生きてるか。まぁ結果オーライだな)


「今です!」

「ッ!」


 俺と望奈さんは、二階の廊下の壁を飛び越え、そのまま約3m下の地面に向かって落下し、望奈さんはしっかりと、地面をみて着地に備え両足、両手で着地した。


(四点着地は膝が顎に当たったナンテ間抜けをしたら終わりだからなぁ)


 俺はそのまま、地面に落ち癖で勝手に転がる。


「大丈夫ですか?、さぁ走りますよ」


 着地して、少し硬直していた望奈さんの腕を引っ張り走り出す。


 エントランスの方を見るとまだまだゴブリンは居るが、殆どが俺達には気づいておらず、気づいた者も流れの中にいれば、無理やりマンションに押し込まれていった。


 最終的に最後尾の数匹だけが、気づき追いかけてきたがマンションから少し離れた所で走りながら、マジックアローを放ち殺した。


――

―――

――


「一旦、公園で休んで帰りましょう」


 そして来る途中に立ち寄った公園にランニングの速度で向かい走るのだった。


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