13.新たな力


 後輩が良い刺激になったのだろうか、何か良い感じに望奈さんのやる気が上がってくれたみたいで、歩く足取りが速くなっていた。


 そしてあの六人と、行く方向がかぶったら嫌だなって思ってたが、彼らは違う方向に向かって歩き出してたので、予め決めていた予定通りに一番近い中学校を目指し、避難民が居るのか周りに魔物が群がってるのかなどの偵察を主にLv上げを続ける。



――



 「考え事するのも良いけど、右前方に一匹居るわよ」


 俺が考え事をしながら走っていたら、敵がまた現れたようだ。


 まだ公園から200m程の距離だが、どんどん敵の数が増えてきている。


「マジックアロー」 


 Lv1のゴブリンか…‥‥俺が攻撃すると一撃で絶命したが、今ので既に八匹目のゴブリンで明らかに異常な数だろう。


 家から公園まで500mで七匹だったのに対して、今はその半分以下の200mでその数を超えた、しかもゴブリンしか居ない。


(他のモンスターはどこに行ったんだよ)


「ゴブリン多いわね、ほんと」


「ですね、MPがこのままだと直ぐに底をつきます」


「後、何発なら撃てるの?」


「 七発 」


「なら私が攻撃するわね、もうダメにする矢を決めて、その数本を使い回すからそれで多分……保つ筈よ」


「頼みます」


「任せなさい」


――


「早速来たようですよ、二匹―」


「んっ」


(俺の攻撃と違って無言だし、攻撃自体も静かだから怖いんだよなぁ)


 ゴブリンは二匹ともスッっと倒れていった、もちろん不自然なまでに、真っ直ぐと矢が頭に刺さっているが。


「この数だ、後ろから現れて急に退路を塞がれたら辛いですね、迂回しながら自分たちの進む道とその周囲の掃討をしながら行きましょうか」


「分かったわ」


 さて俺はこの間についに来た楽しみの時間だ。


 俺自身のLvが上がったことにより追加で職業を選択できるはずだ。


【千田 本暁】Lv3(0/30)

【職 業】:魔士 Lv2(15/30)

【H P】:10

【M P】:22/111

【STR】:1

【VIT】:1

【AGI】:1

【DEX】:1

【INT】:21

【RES】:3


『SP=5』『JP=7』


実績

【ゴブリン初討伐】

【人種殺し】


 SPとかも勿論増えているが、今はそんなの後だ。


(いざ!えい!)


 俺はステータス画面の魔士の下の空白部分を押した。


≪第Ⅱ職業を選択して下さい≫


(きたぁあああああああああああああああああああああ)



・【戦士】・【堅士】・【軽士】・【遠士】・【護士】

・【技士】・【冒険者】・【運び屋】・【契約士】


【無職】【ニート】【引き籠り】

【ゲーマー】【リーダー】【コレクター】

【会社員】【フリーター】【アドバイザー】

【運転士】【詐欺士】【工作員】【ストーカー】【盗聴者】

【殺人者】


(うわぁ...)


 一瞬喜んだが選択肢が増え、見た感じの圧迫感が何故か感じられテンションが多少落ちて冷静さを取り戻し、しかも物騒な職業が多く……殺人者って俺はこれを選択したら俺は二度と普通の人には戻ってこれない気がする。


 喜びのテンションは謎に打ち砕かれたし、冷静に第二職業を選びだす。


(この間にも望奈さんが黙々とゴブリンを殺してるけど……)


 やはり、候補は最初らへんに表示されている職業だよな。

戦士・堅士・軽士・遠士・護士・技士・冒険者・運び屋・契約士 


(契約士?)


 なんだろう凄く選んでみたいけど選んじゃいけない気がするのは……


 他の職の事を考えるとまずは、冒険者、運び屋が気になるが、冒険者は初期で手に入る職業らしくて今の所、Lv1で解体というスキルが手に入るという情報は選んだ奴が居たので判明している。


 解体してもどうモンスターを使うのかわからないし、持ち運ぶ余裕もない為、今は無しだな。


(なら残るは運び屋が安泰か?)


 安易な考えと気持ちで選ぶのはどうかと思うけど、他に良いと思うのもないし取ろうと思う、ネタの気持ちを前に出して良いならとって見たい職業もあるけど、無職とか無職とか、無職とか。


≪第Ⅱ職業を運び屋にしました・職業補正によりAGI+2 DEX+1されます≫

≪続けて、パッシブスキル「持久力向上」を獲得しました≫


(ええぇぇぇ、終わり!?)


 アイテムボックスが手に入るとかはないの!? 運び屋だぞッ‼ より物を多く運べる手段とかをくれよぉおおぉおぉ。


――


(まぁないものねだりは駄目だよね、ちなみにこれは変えられるのかな?)


≪第Ⅱ職業、運び屋を外すには1ポイント消費して出来ます≫


 ほぉぉ。良かった、これで変更ができなかったら生き残れない可能性がめっちゃ高くなるからな、要らない職業なんて邪魔でしかない。


(そう考えると俺はなんて危険なことをやってんだ?)


 ながらスマホが駄目とか言う問題よりヤバいぞ?、不意打ちでも死ねるこの世界で考え事しながら歩いて、もう1人だけが戦うなんて――


 やはり歩きながらは駄目だな。


 ポイントをさっさと振って移動に集中しよう、このポイントの使い方は元から決めてある、やはりINTに極振りだ。


 俺のINTは26になった。


「このゴブリンで十二匹目ですか?」




「この子で十三よッ」


 矢をゴブリンの死体から力いっぱい引き抜きながら答える望奈さんは怖い。


 ゴブリンの頭を片足で踏みながら、両手で矢を引っこ抜いてる女性を見た事ある人なんて俺ぐらいなのでは?


「多いですね、これ以上は進まない方が良いと思うのですがどう思います?」


「ここまで来たのに?」


 首をかしげながら言わないでもらいたい。


「今、グネグネ進んでるとは言え10mも進めば一匹出てくるんですよ?一旦、そうですね。あの建物からなら学校も見えるでしょうし、あそこを目指しませんか?」


「もう少し、ゴブリンを殺したかったのだけれど、そうね分かったわ、向かいましょ」


 殺意高いな‥

 多分Lv上げる楽しさに気づいたのだろう。


 確かにこのまま行けばLvはサクサク上がるだろうよ、退路の心配もせず、初見殺しで死ぬ可能性が上がっても良いのならば。


 ゲームなら間違いなく進んでゴブリンを倒せるだけ倒して経験値にし続けるところだ、死んでも少しのペナルティで済むんだもんな。


 だがこれはゲームっぽいが現実だ、死んだら終わる。


(安全第二だ)

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