12.その結果の先は


「はぁぁ、はぁはぁ、、それにしても、相変わらず凄い命中精度ですね」


「あれ、ぐらいなら、、もんだい、ない、わ」


 流石に500m以上も全力疾走をすれば、流石に二人とも息切れを起こし、そしてようやく休める場所を見つけた、公園の中央に置かれたベンチで休んでいた。


 匂いが時間経過とともに風で流れてくれる事を後は願う。


(てか、いま何て?‥あれぐらい?ん?30mは離れている距離で、眼球って2cmぐらいの的だぞ?異常だろ‥)


 俺はヤバい拾い物をしてしまった気がする。


「望奈さんが、凄腕で、良かったです、この作戦は望奈さんの、命中率が全てでしたからね」


「だから、作戦を立てた時に、信じなさいって、言ったのよ」


 この案は望奈さん発案だ。


 目ぐらいなら距離によるけど射抜いてみせるわッと言ったのでそれを試しに信じ、この作戦が無事に立てられたのだ。


 なんともカッコ良いことで。


「にしても休む暇が無いとは、この事を言うのでしょうね」


「同感ね、まったく‥嫌になるわ」


 住宅街の道を走ってきたのだ、そりゃ他にもモンスターは少しは居た。


 ゴブリンとかよく分からないどんぐりとか…


 そしてゴブリンは多少は走ってたら距離は稼げるには稼げるが、止まったら追いつかれ、振り切れはしなかった結果が今の状況なのだ。


「七匹とはまた多いことね」


「さて先手必勝~マジックアロー!」


 公園の敷地に入ってきた、ゴブリン共はご丁寧に少し弧を描く様に横一列で並び、俺と望菜さんの逃げ道を塞ぐかのようにしていた。


(縦一列で突っ込んでこれば、一匹ぐらい俺達のどちらかに到達出来たかもしれないものを…‥)


 俺は真ん中に位置して一番距離が遠い奴を狙って魔法を放ち、マジックアローが頭に当たったが、そのゴブリンは死ななかった。


(Lv2以上だな)


 ゴブリンは後ろに倒れるように飛んで横たわっていたが、手などを動かし苦しんでいる感じだった。


 のんびり観察してる暇もないので、今度は一番右のゴブリンに 「マジックアロー」を放つ。


「私もやるわよ」


 望奈さんが一番左のゴブリンの眉間を射抜き、ゴブリンが直立したまま倒れ、俺が狙った右のゴブリンも、頭部の一部分を矢で貫かれ、ゆっくりと後ろに倒れていた。


(今のはLv1だろうな‥それにしても矢が貫通してるとかじゃなくて、もう当たった部分の周囲を綺麗に削り取って穴を作ってる感じだな…)


 ゴブリン達はようやく仲間の死を理解し―ハッ!っと気づいたかのように、残りのゴブリン四匹が一斉に走り出した。


(最初に攻撃した一匹はまだ起き上がってないな‥)


「マジックアロー」


 走ってくる一匹に向かって攻撃するも、ゴブリンが素手で矢を防ぐも、オークと違ってその手は飛び落ち、本体も仰け反っていた。


 横では望奈さんが再度矢を放ち、眉間に深く刺さった矢の衝撃で、一匹のゴブリンが後ろに倒れていた。


 そして突っ込んで来る、残り二匹のゴブリン。


 だが、距離にしてまだ6mはあるな。


「マジックアロー」


シュッ―

 思考をクリアにして、ゴブリンを狙っていた所に、突如として風を切る矢の音が耳の間近から聞こえ、物体が視界を横切って行った。


 突っ込んで来た二匹のゴブリンの内、俺が攻撃した個体は片腕を犠牲に生き残り、望菜さんが攻撃したゴブリンには、さも当然のように矢が頭に突き刺さり倒れていた。


 そして生き長らえたゴブリンは、片腕を無くし物凄く喚いていた。


「望奈さん、後はよろしくお願いします。この状況なら矢も回収できますしLvもあげましょう」


「分かったわ..」


シュッ…

 手前の腕をなくしたゴブリンが倒れ。


シュッ‥

 最初に倒れてやっと起き上がろうとしていたゴブリンも、時間が遡った様に再び地面に寝そべっていた。


「丁度レベルが上がったみたいね、ありがとう」


 どこか元気がなくなり暗い望奈さんからLvアップの報告を受け。


「おめでとうございます」


 声色をなるべく合わせて言う。


「俺が矢を回収してきますので、そこで座っててっください」


「私もやるわよっ」


「座っててください。次の戦闘では任せるかもしれないので、これは先に楽をしてるだけです、なので任せた時はよろしくですよ?」


「分かったわよ、ありがと―」


 俺はゴブリンからゆっくりと矢を引き抜く。


 この世界で矢を、自分で作れないのなら可能な限り再利用しなくてはいけない‥売っている店に行って取るにしても、既に火事場泥棒が入った後なら、弓自体はあるかもしれないが矢が残ってるとは思えなない。


 それより今の状況で矢を切らしたら望菜さんの攻撃手段が無く成ってしまう、その場合マンションまで取りに行かないといけないが、家に戻るにしてもまた、あのオークと鉢合わせしかねないのが現状だ。


(やべぇな、本当に色々ギリギリじゃねぇーかよ)


 本当はレベル上げに行くのも朝まで待ちたかったが、そんな悠長なことをしていたら敵だけがどんどん強くなって勝てる奴にも勝てなくなり、そうなれば1Lv上げるだけでも骨が折れる思ったから早めに行動したが、いま戦闘した感じ既に半数はLv2だな、この感じだとオークの方はほぼLv2と思った方が良いか。


――


「回収してきましたよ」


 一応振り落とせる限り血を落として、更に砂をかけて血を吸収させて払ったから比較的ましには成った所で、回収してきた矢を望奈さんに手渡す。


「わざわざ悪いわね、助かるわ」


「いえいえ、まだまだ働いてもらいますよ」


「鬼畜、野郎ね」


 なぜ悪口を言うときは微笑んでるんだよ、覚えとけよ?


 さっきもオークから逃げる時色々‥‥言われたし。


「それではそろそろ移動し――」


「んんッ!」


 望奈さん口を手で押さえ付けながら、身体を引き寄せながらドーム状の遊具の中に二人で飛び込んでいた。


 第三者が見れば完全に女性を襲ってる人だが―


「静かに」


「ん”。ぅん”…」


 望奈さんが喉を鳴らしながら驚いていたが、ゆっくりと頷いたのを見てそっと口を押さえていた手を離していた。


「何なのよいきなり、まさか急に襲いたくなったとか言わないでよね、こんな、こんな所では嫌よ――」


「何、変な想像をしてるんですか?変態ッ‥そして違いますよ。誰かが近づいて来ます、静かに」


「誰が変態よ、だれがッ」


 何か横で物凄く小声で文句言ってるけど、理解してくれて声を抑えてるのなら、今は文句を言われようが構わない。


「来ました」


 数は1,2,3‥‥5,6、6人か。


 多いな、しかも皆武器らしいバットや鉄パイプなんか持ってる。


 いや二人ぐらいは何も持ってない奴も居るな、そして髪が長いな女性か?


 ほぼ月明りだけを頼りに行動している俺達は、曇ってないので十分歩いたりするには問題ないが、流石に20,30mも離れた距離では顔は見えないし、体格も正確には認識出来ていなかった。


 そしてゴブリンの死体に気づいた六人が、公園に入ってくる。


(面倒だな)


「なんだこのゴブリン顔がねぇぞ」 青年ッポイ男の声が聞こえる。


「こっちは腕が落ちてるよぉー」ギャルか?そんな口調の女性の声がする。


「こっちのは顔に穴があいてますね、何かで刺されたんでしょうか」 落ち着いた声でゆっくりと話す男は眼鏡をかけていた。


「ホントだぁ~どうやったらこうなるんだっつーの」さっきのギャルがまた、喋る。


「でもここまで綺麗に眉間とかを的確にさすなんて、レイピアの使い手でもいるのかな?」普通そうな男の子


「これって、弓で攻撃したんじゃない?‥私、前に矢で鹿とかを仕留めるの見たことあるけど、こんな感じの傷口だったと思うよ?」 おとなしそうな女性の声


「矢!?弓道って、アオとナナが使ってたやつ?」元気な女性の声。


「あぁ、そうだけど普通こんな綺麗に狙えないと思うぞ、相手は動いてるし、俺は近距離で刺したと思ったんだけど、確かに矢の可能性もあるのか」


 ほう?


 眼鏡くんがアオって名前なのね。


「に、しても俺達以外にもモンスター狩ってる奴がいるって事だな。」青年君


「もう少し、慎重に行動した方が良いかもね」普通くん


「なんでだよ?、別に今までみたいにモンスター倒して強くなるじゃダメなのか?」青年君


「その人達と仲良くできるって決まったわけじゃないでしょ、今はその辺の一般人が力で攻撃してこようものなら、反撃したり自衛できるけど、この技術と強さを持った人と喧嘩になったら俺達に中から怪我人か死人がでちゃうよ」普通くん


「それは嫌だねぇ~」ギャル?


「そうだね、少し慎重に行きましょうか、これから他の人と出会ったときの事も考えてっ」おとなしそうな子。


 そんな事を呑気に公園で話してた男女六人は、静かに公園から去って行った。


「あなた集団行動、嫌いそうだものね」


「何を唐突に、俺は一応集団行動できるんだぞ?」


(実際ゲームではリーダーとかやってたし、ゲームでは‥)


「それに余分に関わる人を増やしたくないだけだ、向こうの方が多いし何かされたらたまったもんじゃない」


「それはそうかもしれないけど、あのグループのうち女の子の一人は真面目で良い子よ」


「なんだよ、知り合いだったんですか?それなら出ていくことも検討したのに」


「別に気にしないでただの後輩だから、部活で関わりはあったけどこの状況では、協力するにしても色々問題もあるでしょうし、他に五人もいれば大丈夫じゃない?私なんてボディーガードは一人よ」


「ボディーガードって、一応ボディーガードは自身の命の方が優先だからな?」


「分かってるわよ、それじゃ行きましょうか、後輩より弱いかもってのは、嫌だわ」


 おっと?望奈は案外負けず嫌いなのかもしれんな、ふむふむ。


 次からこれを上手く使って働かせて俺が楽してやろう。


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