11.心理



【千田 本暁】Lv2(15/20)

【職 業】:魔士 Lv2(10/30)

【H P】:10

【M P】:61/111

【STR】:1

【VIT】:1

【AGI】:1

【DEX】:1

【INT】:21

【RES】:3


『SP=0』『JP=6』


実績

【ゴブリン初討伐】

【人種殺し】




 魔士のLvが上がった事でINTに+2、RESも+1されたのか。にしても流石極振りだな、圧倒的にステータスが偏ってやがる。


 常識を持ち合わせてゲームをやった事がある人なら、こんなステータスには中々しないだろうな、それも一度でも死ねば終わりのリアルゲームで、だ。


 普通ならもう少し㏋を上げたりするだろうよ。




(だがしかし)




 この極振りならオーク一体ぐらいなら――ないな、無理だ。


 冷静に考えて、貫通力も無ければ、大した威力も無いマジックアローを何発入れてもあの腕を吹き飛ばし、身体や頭にダメージを入れれる気が微塵もしない。


 次にLvが上がったらどの数値に振るか考えておくか、戦闘中に振る可能性だってあるわけだしな。それとこの、職業欄の魔士の下に、同じような空白で縁取られているスペースって、まさか‥‥


≪現在のプレイヤーLvと選択職業Lvの合計が同じの為、新たに職業を選択する事は出来ません≫


「なんだと!」


 これはまさかあれか!?


 プレイヤーLvさえ高ければ職業は数多く取れるということか!?


 やばい、ヤバい、なんだよその神仕様。


「急にビックリするじゃない、なんなのよ、まったくぅ」


 急に俺が声を出し身体を動かした為、驚いた望奈さんが反射的に身体をビクつかせていた。


「ごめん、ごめん、それよりもいい事が分かりましたよ!」


 俺はそれから望奈さんに再度誤ってから、複数の職業を取れる可能性を望奈さんに話していた。 


――

―――

――


「30分は休めましたし、そろそろ行きましょうか」


 職業を複数取れる事を望奈さんにも教えた後は、二人で今後のステータスや職業、戦闘の作戦などを話し合いながらゆっくりと休んでいた。 

 

 そして俺は相談するにもどう切り出して良いか分からず、一つの疑問が俺を悩ませていた、それは望奈さんが人を殺させるか、殺せないのか。


 モンスターが存在するこの世界では、ゴブリンを倒してLvを上げるより、死にかけの人を楽にしてあげるという名目で人を殺した方が楽にLvが上がる、これを利用しなければ並以上の努力と時間が必要になる。


 だが敵が成長しないのなら、それでも問題は無いがこの世界のモンスターはあり得ない程に成長速度が早いのだ、人という経験値キャラが何十億人も居る為に‥


 普通の人ならそもそもこんな思考回路にはならないのだろうが、俺は時々どっち側なのか本当に分からなくなるが、人を無感情で殺している訳じゃ無いとしても、理由を付けて手にかけている俺はきっと悪なのだろうな。



(悪魔と言われようとも今は、生き残ってやる……それだけだ)




――



「さて、望奈さんあれを狙いましょうか」


 ゴブリンが一匹歩いてたので仕留めるように指示を出す。


 俺のマジックアローより音の小さい矢はこの状況ではかなり有効だ、とは言っても周りは火事だったり、鳴ったままのサイレンの音も遠くから聞こえてたりと、深夜の住宅街とは思えない程に雑音だらけだが。


「りょうかい」


 横で望奈が弓を構え矢を引いていく望菜さんの姿は、月明りと遠くで舞う火の光で照らされ靡く黒髪が光を纏うその姿は、流れる動作も相俟ってとても美しかった。



(ゴブリンも少しは報われるか? こんな人に殺されるのなら……)



 やがて掴んでいた矢が離され、風を切り裂く音を立てながら矢は飛んで行き、一匹で歩いていたゴブリンのこめかみに突き刺さり、身体を硬直させ倒れていった。


(十分な威力というよりも命中精度が高すぎるでしょ、普通ここまで狙い通りに飛ばせ無いだろ……何? ステータスってそんな恩恵あるの怖いんだけど)


「ナイスです。さて矢も回収しながら進みましょうか」


 あえて望菜さんの欠点を上げるのなら矢の本数だ。


 今、望奈さんが背負っている矢筒には十二本しか入らないらしくて、二本放って回収していない今は残り十本。


 そして予備の矢筒がもう数セットあるらしいが、訳が分からずなんでそんなに、矢を持ってるのか聞いたら頑張ってたからと言われ、更に訳が分からなかった。


(普通は6本ワンセットで大丈夫だっけ?)


 詳しくは覚えてないけどさ、昔どこかでそんな情報を得た記憶がある。

って事を考えたらさ、過剰な本数をこの人は所持してるよね‥


(やっぱり怖いわ)



「いざ」


「そうね」


 俺達は階段の一番下の段にいる。


 これより先は全方位を警戒しなければならない所であり、この世界になって初めて、建物の敷地から出ることになる。


 そして二人同時に一歩を踏み出した。


「貴方でも緊張する事があるのね」


「そりゃありますよ、俺の事をなんだと思ってるんですか」


「変な人?」


「あ、はい、はい。そうでしたね、さぁ行きましょうか。予定通り住宅街は避けて、公園の脇道から住宅がまばらな方向を使って先に進みましょうか」


「予定通り行けそうで良かったわ。あなたの最悪の想定では、この時点で角待ちされてる、だったもんね。ほんと用心深いというか心配症すぎない?そんな事がある訳ないじゃない」


「あははははっ望奈さんそれ、フラグで……‥(マジかよ)望奈さんに一級フラグ建築士の称号を与えます。お・め・で・と・う、ございます」


「ん?」


 何言ってるんだ、みたいな顔をしてるが全て彼女が悪い。


「後ろ見てみ」


「お、オぉぉ‥おオオクぅううッ!?ほへぇっ!?」


 振り向いた、望奈さんが変な声でろれつが回ってない状態で叫び、身体の向きを変えた望奈さんから5m程の近距離には、オークが仁王立ちしていたのだった。


「逃げろッ!!」


「いやぁ「ぁああああああああああああ」」


 俺と望奈さんは一緒になって叫び、二人で公園の方に向かって全力で走り出していた。


「どうすんのよ! ホタカの馬鹿! アホ! 間抜け! 私いやよあんなのに殺されるとか、触られるとか冗談でもいや!!」


 凄い暴言だな、おい。後で覚えとけよ?


(てか今名前で呼ばなかったか? ホタカって……)


「取り合えず静かに走りながら距離を稼ぎましょうか、足の速さではこっちの方が早いみたいですし」


 後ろを振り向いたら、既に30mは距離を稼げていた。


 一歩はまぁ大きいがその動作が遅い、小学生低学年の速度ぐらいだろうか、オークはドスドス歩くという感じでは無く、一歩一歩力強く地面を踏みしめ前に軽くジャンプしてるかのように一歩で距離を稼ぎながら進んで来ていた。


(だがどうするかなこの状況)


 豚の嗅覚は場合によっては犬以上と言われてた記憶がある、つまり振り切るにはかなりの距離を稼いだり、匂いを途中で途絶えさせる工夫をするか、倒すかだが‥‥


「マジックアロー」


 走りながら振り向き、マジックアローを放つ。


 俺が放った矢をまるで、ドッチボールで飛んできたボールを手ではじくが如く簡単に、オークは防いでた。


「そんなんありか!」


 マジックアローだってまぁまぁ速いんだぞ!チート豚野郎メッ!


「いやぁ..これは、倒すのは無理そうなんで、予定通り望奈さんを差し出しますか」


「ちょッ! なにが予定通りよ、そんな予定聞いてないわよ」


「言ってませんからねぇ..」


 一瞬だけ本気?みたいな目で見られたが、最終手段としては割と本気である。


「冗談言ってないで、オークプランBで良いのよね?お願いだから差し出さないでッ!!」


「はい、プランBで行きましょ」


「カウントスリーツーワン・マジックアロー」


 俺と望奈さんが同時にその場で立ち止まり、振り返る。


 そして弓を構え最速で矢を引いた望奈さんが、俺のカウントで放つマジックアローに合わせて矢を放ち、マジックアローに張り付くように望奈さんが放った矢は飛んでいた。


 そしてオークは目の前に来た、俺のマジックアローを腕でまた振り払うが、それを振り払った瞬間、望奈さんの矢が振り払いによってガードが無くなったオークの眼球目掛けて飛んで行き、無防備と成ったオークの眼球に命中した。


 「ウ"ァォ"ォオ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”ッ!!!!!!!」


 そりゃ眼球に刺されば激怒するよね


「3・2・1・マジックアロー」


 もう片方の目をめがけて放ち、望奈さんがまた合わせて放つ。


 だが流石に片目を代償に学んだようで、振り払うのでなく腕を目の前に置きガードの姿勢に入った。


(予想通りであり、実に有り難い状況だった)



――

―――

――



 「づいぶん距離稼げたんじゃない?」


 やめてほしい。

 一級フラグ建築士の望奈さんが言うと怖い。


 先程の戦闘で俺達は、オークが二度目は腕で完璧にガードする事を予想していた、だからあの後にタイミングをバラバラにして二人で適当に攻撃したのだ。


 オークからしてみたら、魔法の矢の次に普通の矢という考えが頭から離れないのに、攻撃のタイミングもバラバラになった事で混乱し、俺達の姿を確認しようにも片目を失った恐怖と慎重さで、目を大切にするがあまり腕をなかなか目の前からどかせないと予想していた。


 そして攻撃がまだ来るかもと、一人でガード状態のオークは突っ立っているしかなく、そんなオークを放置して、俺と望奈さんは静かに走り去ったのだ。


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