7.色々面倒だ


 

(さぁ、後は残った問題を片付けるか‥)



「ヒぃ..」


 俺が女性の方を見た途端に、怯えたような声を出されてしい、女性の顔はみるみる内に青ざめていた。



(まぁ向こうからしたら、一時的に助かったけど今度は問答無用で人を攻撃する男が現れたって感じか、それにしても文系って感じだなぁ~使えるか?)


 彼女の見た目は髪が長く、眼鏡はかけてはいなかったが、掛けても似合いそうなおとなしい感じの顔付きで、身長は座っている状態だから分かりづらいが160cmないぐらいだろうか?そして、見るからに細い感じの女性だった。



「助けたのに酷いと思いません?」


「ごごっ‥、ごめんなさい。お願いいたします、命だけは助けて下さい」


 まともに身体を動かせないのだろうか、手で地面を押し、頑張って後ろに下がろうとしていたが、腰が抜けきっているのかまったく動けていない。


(てか何だその、俺に襲われるみたいな逃げる素振りは…)



「面倒だな、こぉ‥‥」


 うっかり声に出てしまい。


 女性は俺が何を言おうとしたのか、気づいたようで首を左右に必死に振っていた。


 別に俺は快楽殺人者じゃない、このアホな状態で面倒になりそうな種は潰しておきたいだけだ。




「ギィィイイイイ」「ギギッ」


 思考を遮るように聞こえて来るゴブリンの声。


「チッ、ゴブリンどもが来やがった、面倒だな」


(それに音的にもう階段を上り始めてるな)


 俺は倒れてる男を廊下に引きずり出し、入れ替わるように俺が女性の部屋の玄関に入った。



 なんで入ったかって?



 俺が倒れてる男をどこかさないとドアが閉まらないし、せっかく助けたやつがゴブリンに殺されるのは納得できない。


 そして俺が自分の部屋に向かって扉を開け閉める動作が間に合うか微妙なうえ、戻ってしまえば恩をあやふやにされる可能性があったからだ。



(他意は無い)



 俺は音が出ない範囲でドアを可能な限り早く閉める。


 そして数秒もしない内にゴブリンが来て、何やら騒いでる。


(なんだ倒れてる男に食いつかないのか?、外でもうお腹一杯食べたのだろうか、まぁいいや)



 俺は女性に奥の部屋に行くように手で合図して俺も、奥の部屋に向かう。


 構造は俺の部屋と左右が少し逆なぐらいで基本は同じだった、玄関があり、そこからドアを開けると狭いキッチンがあり、その奥に一部屋あるという、東京の1Kはどこもこんな感じだろう。


 だがこのマンションの良いところは玄関開けてすぐに通路でキッチンとかではなく、玄関とキッチンを仕切るドアがある事だ、それに窓も二重で外部に音が漏れないように中々の防音対策がなされている。


 ならこの奥の部屋で多少話すぐらいなら玄関先の廊下まで声が届く事は無いだろう。


 そしてやはり部屋は散らかっていて服などが散乱していた。


 あの地震がなくてこの汚さなら、色々この人はやばいだろうが、あの地震では仕方がないことだ。



「あのー私はどうすれば...」


 うむ困った。


 本当にどうしようか。



「「・・・・・・・・・・・・」」



 とりあえず自己紹介だな。


「そうですね、とりあえず名前教えてもらえますか?俺は千田って言います。」


「あ、はい。私は緋彩ひさい 望奈のなです」


緋彩ひさいさんですね、分かりました、それで今はもうステータス次第であんな男どうにでもなると思うんですけど、参考までにステータス教えてもらっても?」



(勝てなくてもステータス次第ではもう少し抵抗できた筈だ、何故それをしなかったのか気になる。単に人を攻撃する覚悟がなかっただけなら、それはそれでどうかと思うし、この状況下でそんな愚かな行動をしていては自分の命を捨ててるようなものだ、別に死にたければ死ねばいいが、それなら俺に助けてなんて言わないでほしかった)


「私の職業は遠士で、まさか人に襲われるだなんて思ってもなくて、それで武器もないまま…」



 なるほど、馬鹿だ。


 いや天然なのか?この状態でまず訪ねてくるやつがいるか?そしてなぜ開けた。


「確認ですが、さっきの男は知り合いで―」


「違います」


 俺が喋ってる途中で遮り即答してきた。


(違うならなぜ開けたし、全くもってわからん…てか遠士が最初に使えるようになるスキルって「キックアウェイ」だったよな、確かグループのメッセージでそんな情報があったはずだ、内容は確かMP1で前にいる敵に壁キックかまして、後ろに少し飛べるとか)


(だから遠士を選ぶなら最初から武器を持ってなければ戦えない、まぁそれは戦士でも一緒だが、あれは棒でもあれば最初はどうにかなる筋肉解決職だからな)



 遮断されるように返事をされ、次の一言がいいズラい状況だった。


(面倒だなさっきから‥)


「あ、あの、先程は、助けて・いただき、ありがとうございます。」


 次の一言が言いづらい中で緋彩さんの方から急に、お礼を言って来た事で、その助けて貰ったという自覚を利用する事にした。


「それにしても、こんな状況になって三回も危険な目にあうなんて、望奈さんも不運ですね」


「‥三回?」


「はい、男に襲われ身の危険にあい、その次にゴブリンが階段を登ってきてドアを閉めれなければどうなっていたか、そして今この状況で三回です。」



 俺は少し微笑んでみた。



「あ、えっ、その‥えっと‥‥」


「なるほど、まさか感謝の言葉を言えば、それだけで自分の命の危機に対するお礼になると、そうですかなら俺は今すぐ玄関から出ていきますので後は頑張ってください」


「ま、待ってください!今玄関を開ければ――」


 緋彩ひさいさんは途中までそう言い急いで口を抑えた、自分がかなりの声を出していたのに気づいたのだろう。


(だが半分手遅れか?)


 ゴブリンがドアをつついてるような音がする。


緋彩ひさいさんが大きい声を出すから気づかれたみたいですよ?どうします?」


「そんな・・・」


(さて余裕な感じでやってるが俺もかなりやばい、ゴブリンが数匹?俺も死ぬのではないだろうか‥まぁその時はその時だな)


 緋彩ひさいさんが固まってる間に、ステータスを確認する。


(今のうちにMPがどれだけ回復したか確認しないといけない、ステータス)



【千田 本尭】 Lv2(2/20)

【職 業】:魔士Lv1(12/15)

【H P】:10

【M P】:7/44

【STR】:1

【VIT】:1

【AGI】:1

【DEX】:1

【INT】:8

【RES】:2


『SP=11』『JP=6』


スキル

【マジックアロー】


実績

【ゴブリン初討伐】

【人種殺し】




「はぁ?」


「す、すいませんっ!!」


 つい声が出てしまった、そしてそれに反応して急いで謝る緋彩ひさいさん。


(完全に怯えてるな…これは俺が悪いのか?、いや俺は悪くないはずだ)


 そう信じたい。


(まぁいい、いちいち声に出して謝ろうとも思わないしそのまま考えよう)


 Lvが上がったのか、でも俺はあれから魔物は倒してない、そう倒したのは人、人間だけ。



 つまりは…



実績【人種殺し】人種を殺した際に獲得・獲得時にSP・JPが+5


 そういうことか。

 俺がステータスに表示されている奇妙な実績を長押しして見ると、どういった物なのか情報が表示されたのだった。


 別にあいつが死んだ事はどうでもいい、だがこれは最悪の事態だ。


 何故なら苦労してゴブリン一匹倒しても経験値は2、だが人を殺した場合は俺のLvが上がってることから10は経験値がもらえたことになる。


 今の環境ではゴブリンより人間の方が殺しやすい、ゴブリンだと苦労して倒したのに成長が無いが、人を殺した場合はLvが恐らく1上がり、実績も貰える。


 この時点でSPを10は貰える事になる。



 生き残る確率が高いのはどう考えても人を殺した場合だ、初期の倍のポイントがボーナスで貰えるようなものだからな。



 これに気づき実行する奴がどれだけいるだろうか。



(極限状態になった人の判断基準に常識なんて無い、家族や大切な人守るためなら他は構わずに殺すだろう‥つまり、敵はモンスターだけじゃないって事か‥)

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