5.無慈悲な戦闘
「「「「「ドド”ドド”ドド”ドド」」」」」」
(予想通りと言えば、地震は予想通りだが――)
「うわぁッッ」
予想よりも地震は強く身体は左右に振られ、机の下に入り机と身体を固定してないと今にも、壁に叩きつけられる程に激しく揺れていた。
そんな状況で人間が立ってられる訳も無く、何かあったら机の下に入れと言う学校の教えは正しかったようだ。
そしてもの凄い横揺れによって、冷蔵庫や棚が次々に倒れ床を叩きつける音が物のぶつかり合う音に混じって聞こえてくる。
予め予想していたので、動かせる物は部屋の隅にぎゅうぎゅうに寄せ集て固定済みだ、流石に冷蔵庫を倒すなんて奇行は出来なかったが。
―
――
―――
――
―
地震は数十秒程で収まっていた。
「マジかよ、おいクソ神様‥初手から大地震はズル過ぎんか?」
あの強さが1分以上も続いたんだ。
もう部屋はごみ屋敷かというほど物が散乱している。
あれだけ固定ていた物も散らかっていた、やはり全ての物を一個一個地面と接客剤でくっつける、ぐらいはやらないと効果なかったか...。
片付けしないと寝る場所すら無いとは全くもって最悪だよ。
「いぁあああ」
そんな声が外から微かに聞こえ、俺は窓に近づきカーテンを動かし外に目を向けていた。
「ウォーッ」「ウォォオオオーンッ!」「ドン!」「いやぁぁああああああああああああ」「バンッバン!」「誰か!助―」「ガッシャンッ!」「ギィ」「おい!」「ダン!」「ガルル」「食らえッ!」「バチバチバチ」「ウォォォオオオオオオオッ!」「シュ」「カンカンカンカン」「ドンッ!」「ガラガラガラガラ」「ギィキャキャキャアァァ」
(カオス)
一言で言うならこれしかないだろ。
俺は今カーテンの隙間から外を見ていた、そこには狼っぽいやつ、オーク?、ゴブリン、幽霊?アストラル系の魔物だが何だのが、そこら中に居た。
何で魔物が出現すると分かっているのに、外に大勢の人が居るのかと思えば、周りのマンションや一軒家の崩落や火災が外に出る要因を作ったのだろう。
モンスターに早速食われている者も居るな‥
人間が簡単に殴り殺されたり、ネジり殺されたり、噛み殺されたり、なんだあれは?やはりアストラル系の奴の攻撃はよくわからんな。
人が急に垂直を保ったまま後ろに倒れていた。
そして見るからにオークらしきモンスターが肉を潰すかのように人間を殺し、その死体にゴブリンが近づき臓器や肉を食べている。
だが殆どのゴブリンは新鮮な、いや、生きている人間を求め走り回っていた、ならあのゴブリンは何だ?弱いからおこぼれで良いとか、相当に腹が減ってたとかか?
「それにしても俺の住んでるマンションが丈夫でよかったー…」
もしこの建物が崩壊していれば俺も今頃は向こう側で、餌だった可能性もあった‥‥それは嫌だな。
そして外では自衛隊がモンスターを相手に発砲していた。だけどゾンビ映画ならヘッドショットで一発なイメージだが、魔物共はありえないぐら耐えてやがる。
見た感じ、ゴブリンなら瞬殺だがオークは腕でガードしてそのブヨブヨとした脂肪を盾に数発は耐えている、そして連携してるつもりはないのだろうが、その隙に狼みたいなモンスターが住宅地の塀から飛び出し奇襲をしていた。
「これやばいな」
自衛隊の人は住民が外に出てきた事で流れ弾を気にしているからか、発砲したら殺せそうな場面でも撃っていない。
(負けるわ)
自衛隊だけなら大丈夫だろうが、やはり守るべきモノがあるというのは足枷もいいところだな。
(って事はモンスターを自分で倒して強くなるしかないな)
神が地球の兵器を甘く見て、自衛隊とかだけでどうにかなるなら引き籠る予定もなかった訳ではないがこりゃ厳しいわ、やはり自分の身は自分でやな。
―
――
―――
――
―
早速部屋から出た俺は、マンションの二階段の踊り場に向かっていた。
(え?下までは下りないよ!‥だって、あんなにヘイト稼いでる人と、狙えそうな距離に的があるんだし‥安全第一さ)
別に俺の部屋の三階のベランダからでも多分狙えるだろうが、精度はもちろん落ちるだろうし、魔物に見つかった時に部屋が特定された状態はキツイ。
だがこのやり方なら最悪急いで戻ればマンションに人が居る事は奴らにバレるが、俺の部屋が最初から特定されていないのなら、奇襲や角待ちだろうがまだまだ仕切り直しは可能だろうと考えていた。
(よし、あいつを狙おう)
俺は階段の踊り場から見える、フェンスを挟んだ目の前の駐車場に居た一匹のゴブリンに目をつけた、距離は10mぐらいか?
案外近いが高低差もあるしフェンスもある、相手はゴブリン流石にジャンプ一回でフェンスを超えこの距離を詰めるとかは無いだろう。
(てかあったら人類は滅ぶと思う)
少しは相手の強さはこれぐらいだろうと見立てを立てなきゃ、恐らく何も行動出来ないだろうし‥
「食らえ、マジックアロー」
独り言の音量で呟く。
(声の音量で威力が変わらないな)
俺が公園で放った時と同じく、青白い魔法の矢はゴブリンの頭に向かって飛んで行った。
「よし!ヒット」
この距離でも問題なく命中した。
そしてゴブリンは片足が浮き、横に倒れそうになる。
そう・倒れそうになった。
それだけだった。
直ぐに足で踏ん張り、倒れないように腰を若干落として耐え、そして俺の方を見ていた。
(うん。目が合ったね……‥‥)
「逃げろッ」
俺は急いで階段を上り、ゴブリンの方を確認すると、もうフェンスを上り始めていた。
「はやっ」
余りの早さにそのまま部屋に戻る予定を変え、俺は三階の踊り場で待ち構える様に手の平を向けていた。
(最悪部屋のドアは開けてあるから直ぐに飛び込める)
さっき片足が浮くぐらいの威力があるのならば、階段で命中すれば下の踊り場までは落ちるはずだ。
俺はドクドクと慌ただしく騒ぐ心臓を気にかけないように、なるべく冷静に狙いを定め極限まで集中して待ち構えていた。
「来たッ!マジックアロー!」
そしてゴブリンが俺の視界に入った瞬間に俺は言葉を言い始めたが、俺が言葉を言い終えた時にはゴブリンは既に階段を三,四段は駆け上がっていた。
そして放った魔法の矢はゴブリンの首元に命中し、ゴブリンは中段から後ろに倒れ踊り場まで落ちて行き、背中を強打していた。
首元に矢が当たり呼吸がしずらい中、ゴブリンは背中に受けた強い衝撃が横隔膜を一瞬麻痺させ、空気の循環が行われず一時的に呼吸が止まり苦しんでいた。
人間と同じ構造の場合はそうなるだろうなとは思っていたが、予想以上に苦しんでいる事から効果はあったようだ、人型に近いからその可能性は高いと思っていたがこれは中々良い事を知れたな。
「ひひッ」
(殺してやるよ)
俺は倒れてるゴブリンに向かって
「マジックアロー」を放つ。
魔法の矢は、仰向けのまま首を曲げ頭を浮かし俺を見ていたゴブリンの頭に命中し、その衝撃で数センチ浮いた頭はコンクリートの踊り場に打ち付けられていた。
魔法の矢が当たった、額からは微かに血を流し、コンクリートに頭を強打した後頭部からも血を流していた。
そして俺をまた睨もうと頭を浮かせ、寝そべりながら睨みつけていた。
「マジックアロー」俺はもう一度魔法を放つ。
同じようにマジックアローが頭に当たりその衝撃で地面に頭を強打する。
ゴブリンが倒れている場所からゴブリンの血が染み渡るように広がっていき、その色は紫か?周りの建物が燃える灯火に、月明かり、自衛隊の照明がある中でも明確な色は分からない。
「マジックアロー」繰り返す。
「マジックアロー」まだだ。
「マジックアロー」
後六発は撃てる。
「マジックアロー」
顔はもう原型が無い、だが手の指が少し動いてる。
「これで死んでくれ、マジックアロー」
「グチャッ」
そしてゴブリンはマジックアローを九回食らって、ようやく絶命したようだ、原型もなかった頭は最後の一発で更に血が周りに飛び散り、原型が完全になくなった。
「一旦部屋に戻ろ」
俺は帰り際にゴブリンの死体を少し見てから部屋に戻って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます