和語のみで書かれた小説

おなじソラをみあげて

 ワタシのフルサトは、マチからとおくはなれたトコロにある。

 とてもちいさなムラで、トナリのイエのヒトでなくてもみんなシリアイだ。

 オジイサンも、オバアサンも、オトウサンも、オカアサンも、みんなココでうまれた。

 ワタシのマチにすんでいるのは、ほとんどがオトシヨリだ。ハタケシゴトをして、わずかなオカネをえている。

 コドモのワタシにとって、イナカはつまらなかった。ミズとツチしかないこのムラで、ワタシはただただあおいソラとしろいクモをぼんやりとながめていた。

 かわらないマチと、かわりばえのしないケシキ。いつもおなじことのクリカエシだった。

 このままココにずっとすみつづけるのはいやだ。

 そうおもってワタシはハタチのコロ、おおきなマチにひっこすことにした。


 マチはヒトがおおくて、とてもいそがしかった。

 オトコタチはアサからヨルまではたらき、オンナノコタチはハルからナツへ、ナツからアキへとうつりかわるナカでうつくしいヨソオイをみせる。

 マチにはナンでもあって、オカネさえあれば、ほとんどのモノはかえた。

 おいしいタベモノやオサケ、おもしろいヨミモノにたのしいシバイやオドリ。

 スベテがめまぐるしく、まるでオマツリのようなヒビだった。


 でも、マチのひとたちはつめたかった。

 ミチでたちどまったら、ウシロからダレカにぶつかられてシタウチをされたコトもあったし、

 カイモノをしているときにオミセのヒトにはなしかけたら、おかしなカオをされたこともあった。

 マチのヒトはホカのヒトのコトなんてどうでもいいみたいだ。

 ワタシのすむイエにはトオほどヘヤがあったが、ダレヒトリシリアイはなかった。トナリのヒトですら、「おはよう」とかコエをかわすコトもない。

「ワタシはヒトリなのかなぁ……」

 ヘヤのマドのテスリにテをかけて、ワタシはソラをみあげた。ソコにはあのコロとおなじ、あおいソラがあった。

 ソラはずっとつながっている。

 ワタシのフルサトのミンナも、イマこうしてソラをみあげているのだろうか。

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