鬼月禁忌(きげつきんき)

1.

 七月しちがつのあるあかいワンピースをおんな停留所ていりゅうじょでバスをっていた。彼女かのじょはまだ小学生しょうがくせいで、川遊かわあそびにったかえみちだった。

 人気ひとけのないまちと、あたりをめあげるあか夕日ゆうひ――セピアいろ世界せかいなかで、彼女かのじょはたった一人ひとりきり。

 道路脇どうろわきのコンクリートへきにもたれかかり、上機嫌じょうきげん口笛くちぶえいていると突然とつぜん、ごう、とかぜいてきた。

 まだ湿しめったかみらしてくと、彼女かのじょ視線しせんさきには一台いちだいふるぼけたバスがまっていた。

 時刻表じこくひょう確認かくにんした彼女かのじょいぶかしんだ。

「……おかしいな」

 るつもりだったその最後さいごのバスは、まだこの時間じかんにはないはずであった。

 でも、はやかえらないと、おかあさんにしかられちゃう。

 いて、彼女かのじょはそのバスにりこんだ。あしむと、ギィ、とゆかがきしむおとひびく。

「あのー、すみません……」

 車内しゃないほか乗客じょうきゃくはいないようだった。彼女かのじょはもう一度いちど今度こんどはできるだけおおきなこえった。

「このバス、えきほうきますか?」

 運転手うんてんしゅ無言むごんだった。

「……」

 彼女かのじょあやしくおもったが、そうこうしているうち自動じどうとびらまり、バスは発車はっしゃした。

 つかれていた彼女かのじょ一人ひとり一番後いちばんうしろのせきこしかけた。途端とたん眠気ねむけおそってきて、そのままうしなうようにすうっ、とねむりにちてしまった。

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