第14話 タルタロス アガレス イト ワタ ヤマ
「ナイモンやろうぜ! イト! ワタ! ヤマ!」
サトはナイト・オブ・モンスターというカードのスマホゲームで遊んでいる。
「それにしても、ストーリーのあの後で僕がどうなったのか気になって仕方がない!?」
サトはクリアしたNOM1の続きが気になって仕方がない。
「キモイ! サトは何を独り言を言ってやがるんだ?」
ヤマは10才の男の子。性格はヤンキー。
「気にすることはないよ。ただの若年性認知症だよ。」
イトは10才の女の子。性格は冷たい人。
「可愛そうに! サトは良い奴だったのに!」
ワタは10才の男の子。性格は良い人。
「勝手に殺すな! アハッ!」
「あ、生きてたんだね。ニコッ。」
いつの間にかサトは苦しい時でも笑える光の精霊エルフの陽気な性格になっていた。
「どうする? 4人いるし、全員で一度に戦うか?」
「それとも2対2で戦うかい? それも面白そうだよ。」
「面白そうだ! なら僕はサトとチームを組むよ!」
「よし! 2対2のチーム戦だ!」
対人戦は最近アップデートされ、1対1だけでなく3つ巴などの全員戦や2対2のチーム戦ができるようになっていた。
「ナイモン! ファイト!」
いよいよ戦いが始まる。
「サトの名において命じる! いでよ! スラちゃん!」
「スラ!」
サトはスラちゃんをナイモン・カードから呼び出す。
「スラちゃん! よろしく! 鎧に変身だ!」
「スラスラ!」
「ナイモン! 変身!」
スラちゃんは鎧に変身し、サトの体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター! スライムの騎士! スライム・ナイト! 参上!」
サトはスライムの騎士に変身した。
「サトは相変わらずスライムを使っているのかい? 人の忠告は聞かなかったんだね。」
「フッ! スライムか! サト! おまえ進歩しないな!」
イトとヤマはサトに共感しない。
「悪かったな! 僕はスライム推しなんだ! ワタ! スライム・ヒールを使っていたおまえなら僕の気持ちを分かってくれるよな?」
サトはスライム愛に溢れている。
「・・・・・・すまない! サト! 僕はスライムを裏切ったんだ!」
「なんだって!?」
ワタはスライムの推しをやめていた。
「次は俺の番だ! ヤマの名において命じる! 出てこい! ゴーレム!」
「ゴレゴレ!」
ヤマはナイモン・カードからゴーレムを呼び出す。
「いくぞ! ゴーレム!」
「ゴレゴレ!」
「ナイモン! 変身!」
ゴーレムは鎧に変身し、山の体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター! ゴーレムの騎士! ゴーレム・ナイト!」
ヤマはゴーレムの騎士に変身した。
「ゴーレム? ヤマは無課金で物語のNOM1をクリアしてないんだね。」
「ギクッ!?」
ナイモン・カードで相手の状況を読み解くイト。
「メガトン・パンチのゴーレム・ナイトだね! すごい!」
ワタはヤマのゴーレム・ナイトに感心する。
「ヤマ! まだ課金してないんだね! 僕も一緒だよ!」
「サト! 俺たち貧乏人には無課金で突き進むだけだぜ!」
サトとヤマは無課金者として傷を舐め合う。
「次は僕の番だ! ワタの名において命じる! いでよ! ゴブリン!」
「ゴブゴブ!」
ワタはナイモン・カードからゴブリンを呼び出す。
「ゴブリン! 鎧に変身するぞ!」
「ゴブゴブ!」
「ナイモン! 変身!」
ゴブリンは鎧に変身し、ワタの体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター! ゴブリンの騎士! ゴブリン・ナイト!」
ワタはゴブリンの騎士に変身した。
「劣化したのかな? それとも弱体化かな? まったく理解に苦しむよ。」
イトはワタのナイモン・カードの選択の意味が分からなかった。
「ゴブリン!? まさか!? ワタ! てめえ! 課金しやがったな?」
「そうだよ! ガチャからゴブリンのナイモン・カードが出たから可愛くて使っているのさ!」
ヤマは課金者には敏感。
「もっと良いカードが出たからスライムから浮気したのだと思った。ゴブリンならスライム推しのままでも良かったのでなかろうか?」
「僕はゴブリンを愛してる! アハッ!」
サトの心の声が漏れている。
「サトはスライム、ワタはゴブリン。戦う前から勝負がついている様な。」
「そういうイトのナイモン・カードは何だよ?」
「いいよ。みせてあげるよ。」
イトはナイモン・カードを取り出す。
「イトの名において命じる! 出てきていいよ! 魔法使い!」
「マホマホ!」
イトはナイモン・カードから魔法使いを呼び出す。
「よろしくね。魔法使い。」
「マホマホ!」
「ナイモン! 変身!」
魔法使いは鎧に変身し、イトの体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター! 魔法使いの騎士! マジック・ナイト!」
イトは魔法騎士に変身した。
「偉そうなくせに魔法使いだと!? 弱いじゃないか!? ゴーレムのメガトン・パンチで一撃だぞ?」
ヤマはイトの魔法騎士を自分より弱いと思った。
「カッコイイ! マジック・ナイト!」
ワタは他人を汚さずに素直に魔法騎士姿のイトをカッコよく感じる。
「おお! イト! おまえもなんだかんだ言いながら初期から使っている魔法使いじゃないか! 魔法使い推しなんだな! 僕と仲間だ!」
サトは初期からスライムを使い続けているのでイトに共感した。
「う~ん。長く同じモンスターを使っていると愛着が湧くというか、結局は一番強くなる方法なんだと思うよ。」
イトは冷静に効率の良い育成方法を選んでいた。
「イトはナイモン・カードの進化を知っているんだ!?」
サトは直感的にイトはナイモン・カードを進化させることができることを知っていると感じた。
「よし! これでみんな着替えたし! ナイモン! ファイトだ!」
準備ができたのでサトたちは戦うことにした。
「がんばろう! ワタ!」
「おお! スライムとゴブリンの恐ろしさを教えてやろう!」
サトとワタは気合を入れる。
「イト! おまえに出番はないぜ! 俺のメガトン・パンチでたおしてやるぜ!」
「そうかい? なら私は何もしないから任せるよ。ニコッ。」
余裕のヤマとイト。
「いくぞ! ヤマ! くらえ! スライム・ソード! でやあ!」
攻撃の順番は素早さの早い順である。スライム、ゴブリン、魔法使い、ゴーレムである。
「そんなもの効くか! ゴーレムは固いんだぞ!」
「ギャア!? 弾かれた!?」
サトの攻撃はヤマのゴーレムに弾き飛ばされた。
「僕に任せろ! 必殺! ゴブリン・ソード! アタック!」
続けてワタがヤマを攻撃する。
「ギャア! 痛くないぞ!」
ヤマはダメージを1だけ受けた。
「もう戦いにならないね。私は行動をパスするよ。」
イトは退屈そうに欠伸をする。
「へっへっへ! 俺の番だな! 覚悟しやがれ! スライム! ゴブリン! いくぞ! 必殺! ゴーレム・パンチ! フンガ―!」
ヤマの攻撃。
「ギャア!」
ワタがペッチャンコにされ倒された。
「見たか! 俺のゴーレムの力を! ワッハッハー!」
勝ち誇るヤマ。
「もう、この戦いは終わりだね。時間を無駄にしたよ。」
イトはナイモン・ファイトから離脱しようとする。
ピカーン!
「んん?」
その時だった。ヤマのゴレーム・ナイトが光に一刀両断されて真っ二つになる。
「ギャア!」
ヤマは倒された。
「僕のスラちゃんは強いぞ! スライムを舐めるなよ!」
ゴーレムが倒れ、スライム・ライト・ナイトになったサトが現れる。
「これは興味深い。サト。私が相手をしてあげよう! ニタッ!」
サトのスライム・ライト・ナイトに興味を持ったイトの表情に生気が宿る。
「こい! イト! おまえが魔法使いをどう進化させたのか確かめてやる!」
「予想外だよ。スライム推しだったサトが進化までたどり着いていたなんてね。進化できているということはNOM1はクリアできたのかな?」
「もちろんだ! スライムだって強くなれば魔王を倒せるんだ!」
「私もクリアしたよ。魔法使いを進化させてね。最後、光の騎士は死んじゃったからNOM2は別のキャラクターが主役になるんだろうね。」
サトもイトもNOM1をクリアしていた。
「死んでない! 死んでないよ! 悪魔バエルが光の騎士を救っていたじゃないか?」
「救う? そうかな。私なら死んだ光の騎士の体を悪魔バエルが奪って、悪魔が光の騎士になる物語で続けるけどね。だってバエルは悪魔だからね。ニコッ。」
イトはダーク・ヒーローものが大好き。
「違う! 悪魔バエルは光の騎士とお友達になって、光と闇が力を合わせて新しい魔王を倒すんだ!」
サトはスライム・ライト・ナイトの光を輝かせていく。
「こいつらはなんの話をしているんだ?」
「さあ? さっぱりわからないな。」
まだNOM1をクリアしていないヤマとワタには分からない話であった。
「それにしても光スライムは見たことがない。興味深いね。どうやって進化させての?」
「これはスライム愛の象徴だ! アハッ!」
サトのスライム愛が炸裂する。
「まあ、いいや。今度は私の攻撃の番だね。いくよ。マホマホ・ファイア!」
イトが火の魔法ファイアでサトを攻撃する。
「光魔法! ライト・リフレクト!」
「なに!?」
サトは光の反射で、イトの火の魔法ファイアを跳ね返す。
「ギャア!」
イトは自分の放った火に包まれて燃え盛る。
「やったー! 僕の勝ちだ! わ~い!」
サトはイトに勝ったと思った。
まだだよ。サト。
「なんですと!?」
炎の中からイトの声が聞こえてくる。
「魔法使いが自分の放った魔法でやられていたら、しょうもないだろ?」
炎の中から出てきたイトの姿が魔法使いから変わっていた。
「なんだ!? その姿は!?」
「これかい? これは魔法使いを進化させた姿だよ。君のスライム・ライトに対抗するために、ウイザード、ウイッチ、マジシャン、メイジ、アークメイジを飛び越えて、大魔法使いに進化して、グレート・マジック・ナイトになったんだよ。ニコッ。」
イトはグレート・マジック・ナイトに進化した。
「問題は私のグレート・マジック・ナイトとサトのスライム・ライト・ナイトのどちらが強いかということだね。ニコッ。」
「イト。おまえ楽しそうだな?」
「それはそうだろう? やっとまともに戦える相手に出会えたんだからね。楽しませてもらうよ!」
イトは魔法力を高めていく。
「これは!? 極大魔法!?」
「すごいね。サトは見かけと違ってかなり進んでいるんだね。でも、私の魔法を跳ね返そうとしない方がいいよ。光も全て吹き飛ばすからね。もちろん避けることもできないよ。ニコッ。」
イトは魔法力を全開にする。
「くる!?」
「いくよ! 極大魔法! ノッ・・・・・・。」
ピピー!
その時。試合を終えるベルが鳴る。
「タイム・オーバー? そんなの対人戦にあったんだ。知らなかったな。」
イトの極大魔法は強制的に消された。
「た、助かった!?」
サトは冷や汗を拭い不安定ながらも安堵する。
「俺は負けてないぞ! ワッハッハー!」
「ナイス・ゲームだった!」
ヤマとワタには良い戦いにしておきたかった。
「サトが私が知らない面白い成長をしているのが分かったよ。これから一緒にナイモンをプレイしようか? ニコッ。」
イトはサトに興味を抱く。
「いいよ! きっとNOM2が始まる頃には一人ではクリアできないステージも出てくるだろうし! 困った時は助け合おう! アハッ!」
サトはイトの提案を受け入れる。
「あの・・・・・・共闘できるんだったら、良かったら僕の物語も手助けしてくれると嬉しいんだけど。」
「俺も助けてくれ!」
ワタとヤマが泣きついてきた。
「いいよ! みんなで一緒に戦おう! アハッ!」
サトは快く引き受ける。
「私はパス。もっと魔法使いを狩りまくって魔法力を高めるよ。じゃあ、ねえ。」
イトは馴れ合いや努力をしない者を救う気はなかった。
「みんな! がんばろう!」
「おお!」
サトはヤマやワタの物語を少し手伝ってあげた。
「よし! 次は物語だ!」
サトは物語を始める。
「・・・・・・ん・・・・・・んん・・・・・・ここはどこだ?」
奈落に落ちたサトは目を覚ました。
「真っ暗だ!?」
サトの目の前は真っ暗だった。
「目覚めたか。光の騎士よ。」
暗闇から誰かがサトに話しかけてくる。
「誰かいるのか?」
サトは闇に語り掛ける。
「私はタルタロス。奈落の神。私自身が奈落だ。」
奈落の神タルタロスが現れた。
「奈落?」
「奈落は冥王ハーデースが治める冥界よりも更に深い所にある。」
奈落は最深場所にある。
「教えてくれ。タルタロス。僕は死んだのか?」
「いいや。不思議なことにおまえは生きている。光も全て失ったというのに。」
サトの光の鎧は輝きを失っていた。
「エル!? エル!?」
サトが呼びかけても光の精霊エルフは答えない。
「無理だ。光のエネルギーを使い切っている。この奈落の底には光は届かない。諦めろ。」
奈落は冷たくサトに接する。
「そ、そんな!? どうにかする方法はないのか!?」
「光は闇を照らし、闇は光を呑み込む。」
光と闇の摂理。
「本当なら闇の中で光の騎士のおまえは生きられない。なぜ生きている? なぜ光の騎士のおまえが、悪魔騎士の鎧を着ている?」
「なんだって!?」
サトは真っ暗の中で目を凝らして見て見ると悪魔騎士の鎧を着ていた。
「これはバエルの鎧!?」
サトが装着していたのは悪魔バエルの鎧だった。
「バエルが僕を助けてくれたのか!?」
「違う。その悪魔は自分が助かりたいから、自分が魔王になるという野心を捨てることができなかったのだ。」
邪な悪魔バエル。
「結果的には光の騎士を助けるという皮肉な結果になったのだがな。」
「ありがとう。バエル。」
サトは鎧の悪魔バエルに声をかける。
「・・・・・・。」
しかし悪魔バエルは答えない。
「その悪魔は声は出せない。この奈落では私の許可がなければ声を出すことも、存在することも許されない。おまえを助けたのは、人間の中に光と闇が混在する存在が面白かったからだ。少しでも私の気に障ったら消してやろう。」
奈落の神タルタロスは気分屋であった。
「光の騎士の悪魔騎士よ。私に悪魔騎士の力を示してみよ。人間が悪魔の力を使えるのか見て見たい。」
奈落はサトに興味深々であった。
「分かった! その代わり僕を地上に戻してくれ! 僕は地上に戻って魔王シュベルトを倒さなければならないんだ!」
サトは魔王シュベルトを倒すつもりだ。
「そう急ぐな。もうすぐ魔王の刺客がここにやってくる。それまでに闇の力を使えるようにならなければ、おまえは勝てない。ここで死ぬことになる。」
「魔王の刺客!? よくそんなことが分かるな?」
「これでも私は神だからな。」
奈落の神タルタロスは奈落に怒ることは何でも分かるのであった。
「生きたまま奈落にたどり着いた珍客よ。魔王シュベルトはおまえを奈落に閉じ込める気だ。魔王を倒せる可能性のある光の騎士に決して光を届ける気はないのだ。ここで滅びてはどうだ? 私の一部になれ。」
「遠慮するよ! 僕は世界の平和を守るんだ! アハッ!」
サトの心はあくまで前向きな明るい陽気な心のままである。
「魔王様! 光の騎士と裏切り者バエルは始末しました!」
魔王の城。魔王の間で魔王シュベルトに悪魔アガレスが報告をしている。
「で、光の騎士の首はどうした?」
「はい! 奈落に落ちていきました!」
「・・・・・・私が言っているのは光の騎士が死んだのを確認したのかと聞いている。」
「そ、それは・・・・・・していません。」
テンションの下がる悪魔アガレス。
「忌々しい光の騎士め! この世界で魔王を倒せるのは光の騎士だけ! もし生きていれば必ず私の邪魔をしてくるに違いない! 魔王ドラゴン・キングと戦って光エネルギーを使い切った今が確実に光の騎士を倒す好機! 奈落に葬り去っただけでは、もしかしたら光の騎士は生きているかもしれないではないか!」
魔王シュベルトは不用心な悪魔アガレスにご立腹であった。
「申し訳ありません! 魔王様!」
ビビりまくる悪魔アガレス。
「ウァサゴ。ウァサゴはおるか?」
「はい。魔王様。ウァサゴ。ここにおります。」
新しい悪魔ウァサゴが現れる。
「暗殺が趣味のおまえなら奈落にも行くことができるだろう。行って光の騎士の息の根を止めてこい。」
「かしこまりました。必ずや光の騎士の首を取って参ります。」
悪魔ウァサゴは闇に消える。
「魔王ドラゴン・キングを倒した光の騎士だ! 必ず倒さなければならない!」
魔王シュベルトは光の騎士を警戒していた。
「光の騎士を奈落に閉じ込めるのだ! 次々と悪魔を送れ! 絶対に光の騎士に光を浴びさせてはならない! 奈落の闇の中に葬るのだ! 光の騎士を甦らせてはいけない! ワッハッハー!」
魔王シュベルトはサトを奈落に封印するつもりだった。
「やらせるか! やらせるかよ! 光の騎士を奈落に落としたのは俺の手柄だ!」
悪魔アガレスも闇に消え奈落に向かう。
「いくぞ! タルタロス!」
「見せてみろ。おまえの闇を。」
サトはデビル・ナイト・バエルの力を奈落の神タルタロスに見せようとする。
「まずは本当に光がないのか試してみよう! 輝け! 僕の光!」
しかし闇の中ではサトの光は輝かない。
「やっぱり奈落では光は取り戻せないのか。闇の力を使えるようにならないと戦えないのか。」
サトの光は消滅してしまっている。
「人間の夢や希望が光なら、人間の闇は自分への絶望や他者への嫉妬。おまえが闇の気持ちが分かるようになれば鎧になっている悪魔もおまえの声に耳を貸すだろう。」
「分かった!」
サトは悪魔バエルと交信を試みる。
「よし! いくぞ! バエル! 僕に力を貸してくれ!」
サトは気合を入れる。
「・・・・・・。」
しかし悪魔バエルの声は聞こえない。
「見せてやる! タルタロス! 必殺! バエル・ソード・スラッシュだー!」
サトは必殺技を奈落に放とうとする。
「・・・・・・あれ? でない?」
しかし必殺技は出なかった。
「当然だ。地上なら光の騎士の力で闇の力を使えたかもしれないが、ここは奈落。光の騎士の光エネルギーが使えなければ、おまえはただの闇落ちした人間だ。生きているのが不思議なくらいだ。」
完全にサトは奈落では光の騎士ではなくなった。
「闇の気持ちが分からないと、闇はおまえに力を貸さないだろう。」
「そ、そんな!?」
サトは闇に呑まれていく。
ワッハッハー!
そこに笑い声が響き渡る。
「そいつは面白い! 光の騎士がただの人間になり下がっただと! ワッハッハー!」
「おまえはアガレス!」
サトの目の前に悪魔アガレスが現れた。
「おまえを奈落に落としたのはこの俺だ! そして光の騎士を倒すのも、この俺だ! 死ね! 光の騎士! アガレス・ソード・スラッシュ!」
悪魔アガレスがサトに斬りかかる。
「僕にはどうすることもできない!? ここで死んでしまうのか!? うわあ!?」
闇の力を使えないサトは死を覚悟する。
ギャアアアアアア!?
「いったい何が起こったんだ!?」
暴風が吹き荒れ、一瞬で悪魔アガレスの存在が消滅した。
「私の客人に手出しはさせない。」
「タルタロス!? あなたがアガレスを倒したのか?」
「この奈落では私が唯一の神。私の客人に手出しはさせない。」
義理堅い奈落の神タルタロス。
「ありがとう! タルタロス!」
サトは感謝を述べる。
「勘違いするな。私はおまえが再び地上に戻り光を取り戻すのか、それとも闇に染まるのかを見届けたいだけだ。」
照れているのを隠す奈落の神タルタロス。
「行くがいい。光の騎士よ。奈落を登っていくがいい。」
「おお! よし! 絶対に地上に戻ってみせるぞ!」
サトは地上へ向かうのであった。
つづく。
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