第118話 創造する者と破壊する者 3

「陛下は、一人で行ってしまわれたのですか?」

「天馬で行ってしまわれた。だから誰もお供することが出来なかった。キリップ山の麓に兵士や騎士を配置しろとは言われたが…国軍のカラヴィ総長はあと三十㎞ほどの所だと言うし…。」


 エヴラールは苦々しい顔で言葉を続ける。


「陛下に万が一があらば…。」

「ボラン中隊長。監視台へいらして下さい。」


 テントに入ってきた騎士は、声を張る。エヴラールは走って監視台へ向った。



 レオナールは大きく旋回してハーピーの後ろに回り込んだ。その間もハーピーが起こしたつむじ風に街の建物が破壊されていく。つむじ風はくねくねと蛇行しながらレオナールの方へやって来た。天馬はそれを避ける様に動いたが、レオナールはつむじ風に向って剣を振り下ろした。すると、つむじ風は上下にスパッと切れて、次第に小さくなり消滅した。


「リオの魔剣は恐ろしいほどの力だ。」


 レオナールは嬉しそうに笑う。この魔剣は里桜が赤の魔力持ちのレオナールだけが使える様に、今までにはない力を付与した魔剣だった。兄弟の中でレオナールの次に魔力の強いシルヴェストルも上手く扱えないほどの魔力だった。


「さぁ、行くぞ。」


 天馬はハーピーに真っ直ぐ向っていく。



「今、陛下の剣はつむじ風を切ったか?」

「はい。そのように見えましたが。」

「これならば、退治できるかもしれないが…何という魔剣をお使いになっているのか。」

 ハーピーは、向ってきたレオナールに再度つむじ風で応戦した。天馬はその攻撃を見事に躱す。レオナールがつむじ風に剣を振り落とす。

 エヴラールにはレオナールがハーピーの攻撃を蹴散らしているように見える。


「陛下が、きっと我が国を救って下さる。」



 レオナールはハーピーから距離を取りながら、どう攻めるかを考えていた。その時ハーピーが片足で利子を押さえつける様な形で捕まえているのが見えた。ぐったりとした利子は全く動く気配を見せない。ハーピーはその間もギーギーと鳴いている。

 ハーピーと目が合った様な気がした瞬間、利子をそのままにして空に飛び立つ。羽ばたく度に起きる突風が街を襲う。


「いよいよ、猶予はなくなったか。行け。」


 天馬はハーピーを追いかけ、距離を詰めていく。レオナールが剣を振るが、あと一歩のところで逃げられてしまう。ハーピーが旋回する時に起こる風に天馬も煽られそうになる。


「くっ。」


 レオナールが突風に対して踏ん張ると、それを感じ取った天馬も突風をぐっと堪え、再びハーピーに向っていく。

 天馬の翼とハーピーの翼がふれあう位の距離まで近づき、レオナールが再び振り落とした剣はハーピーの片翼を切り落とした。

 ハーピーは、猛禽類の鳴き声の様な人間の叫び声のような、異様な断末魔の叫びじみた声を上げ、円を描きながら落ちていく。天馬は急降下してそれを追う。


 最後はひと思いに首を切り落とした。

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