第13話 転生六日目 夜の夢
「リオ様、お休み前のハーブティーです。」
「…ありがとうございます。」
「今日は、本当に色々とありましたね。お疲れでございましょう?私は、これにて御前を失礼させて頂きますので、今日はごゆっくりお休み下さいませ。」
里桜は、静かに頷いた。いつもより早い時間にベッドに入った。今日やった事と言えば、泉に浸かっただけ。それなのに、もうこれ以上は体が動かないと思うほどに疲れていた。そっと目を閉じると、深い闇に吸い込まれていった。
[こんにちは、お嬢さん。]
何処かであったような…あっ、赤煉瓦のアクセサリー屋さん。
[覚えていてくれたんだね。
えっ?じゃぁ、アクセサリー屋さんが、私をこっちの世界に連れてきたの?
[これは、仮の姿。我ではない。そしてキミが我から買った石、実はねあれが魔石だったんだよ。]
ん?えっ?このピアス?
[キミにはその石が光り輝くように見えているだろう?]
えぇ。輝くと言うか、石自体がオーロラみたいに何色にも発光しているような。
[そう。それこそキミが、救世主の素質を持つ証明だった。他の人から見るとね、あの石はただのガラス玉にしか見えていない。無色透明の。救世主の素質がある人が見ると、キラキラ輝いてみえる。そして、Irisの魂を持った人間が見ると、虹のような光を感じるんだ。]
私…救世主だとか、虹の女神だとか…
[待って。初めから救世主になれる人間なんていない。王だってそう。皆、生まれた時はただの赤子。でも、その環境や、本人の努力、研鑽がその地位に値する人間にしていくんキミはその努力が出来る人間だった。キミをこの世界に連れてくる時に、彼女を一緒に連れてきてしまったのはちょっと計算外だったけど。まぁ。それを含め、我はキミに期待している。あっ因みに、我の夢を見た事は他言しない方が良い。歴代の救世主の中でも特に力の強いキミは、我と会話できる唯一の存在。だから、それを悪用されないようにね。まぁ。キミが我と会いたい、話したいと思っても、我はそう簡単に現れたりはしないけど。]
ところで、日本では私たちが急に居なくなってどうなっているんですか?
[それね…キミは喫茶店から出た後、彼女とぶつかって、揉めている時に、居眠り運転の車に轢かれて二十三年の人生に終わりを迎えた。キミの葬儀の映像、見せる事も出来るけど。見る?]
里桜は首を横に振る。
“母一人、三人兄妹の末っ子。年の離れた兄は特に私をかわいがってくれていた。最近は、兄たちにも家族が出来て、兄や姉を頼る事もなかったけれど。それでも、仲の良い兄妹だと近所からも親戚からも言われていた。兄や姉もさすがに悲しんだだろう。もし、兄に泣かれていたら・・・。私はきちんと成仏し黄泉の国で幸せにしていると思ってもらいたい。そして、一日も早く元気になって欲しい。悠にも。”
私がもし、こっちの世界で幸せに暮らしたら、日本に残った家族にはそれが届く?
[風の便り位には届くかもしれない。]
わかりました。ふわりと届けて下さい。みんなが、逞しく育ててくれたおかげで、私はどこででも幸せに暮らせていると。
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