第3話

うぅ……顔中がズキズキして痛い、、、

そうか、俺は召喚されて、それで女神に、、


「うおぉぉぉぉあぁぉぁぁぁ!!!!ちくしょう!ちくしょう!何が女神だ!クソくらえ!!!」


 くそ!なんなんだよ!俺は腫れている顔をさすりながら水たまりに写った自分の顔を見た。青あざだらけで鼻血も出てる。こんなはずじゃ…


「異世界に来たと思ったらこれかよ!無双は?最強は?」


 俺は絶望した。しばらく路地裏で俯いて座り込んでいた。一日中そうしていただろうか。

 すると、


「きみ!どうしたんだい?そんな体で!」

「見ない服ね。全く。これだからアルスは。すぐ声をかけてしまうんだから」


 2人組が話しかけてきた。男1女1だ。

 男の方は青色の爽やかなイメージを持たせる髪の毛に、キリッとした目。イケメンだな。

 女の方は1人は赤髪のロングで、少し強気な雰囲気を醸し出している。こちらも美人だ。

 異世界というのは美男美女しか居ないのか?

 なんて考えていると、


「とにかく、酷い有様だ!うちの宿に来るといい。治療してあげよう」

「そうね、さ、着いてきなさい」


 俺は感動した。クソ女神にいたぶられて傷心していたのも少しはあるのかもしれない。

 だが、この優しく寄り添ってくれるような眼差しは今の俺を容易く頷かせた。


「うっ、ぐずっ、、あ、ありがとう…」

「お、おい相当なことがあったんだろうな」

「これは早く連れていきましょう」


 そう言われ、俺は2人に連れられ、宿に向かった。



 宿に着くなり、椅子に座らさせられ、女の方が何やらブツブツ唱えだした。


「天なる恵の癒しを『ヒーリング』」


 緑色のホワホワした光が俺を包み込んだ。

 その光はほんのり暖かくて、そしてどこか安心した。すると、体の傷がみるみる塞がっていき、ついにはあざ1つ無くなった。


「さて、治療はおわったね。君に何があったか教えて貰えるかな?名前とかも」


「は、はい。俺はリンです。実は、何も覚えて居ないんです。目が覚めたら、あそこに。でも道行く人に聞いてもウザがられて相手にされなくて、そしたら、あなた達に」


 俺は異世界から来たということは言わないでおいた。それは、怖かったからだ。また見捨てられるかもしれない、それが怖かった。これからはリンとなのることにした。


「そうか、何も覚えていないのか…ちなみに僕の名前はアルス・ゴーディンだ」

「私はケア・二ルムよ」

「実は僕達は冒険者をやっていてね。困っている人を見るとついつい手を差し伸べてしまうんだよ」

「全くね。まぁでもそこがあなたのいい所でもあるのだけども」


 さわやかに屈託なく笑うと、ケアも笑い、つられて俺も笑った。


「お、笑ったね。笑った方がいい顔してるよ!」

「あ、ありがとう。アルス、ケア」

「いいのよ、当然のことをしたまでよ」

「ところで君はなんでそんなに怪我をしていたのかな?」

「それもわからないんです…すみません」

「そうか、でももう大丈夫だ。安心したまえ!」

「はい、ありがとうございます。何から何まで」


ふぅ。いろんなことがあったが一安心だな。それにしてもアルスとケアは優しいなぁ。


この時俺はどこかこの世界に期待していたのかもしれない。

傷心しきった心につけこまれ、利用されようとしているのに俺はまだ気づいていない。





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