星芒祭

@Nekota219

第1話 星芒祭

毎年やってくるこのお祭りのためか街も何処となく華やかに彩られて行く。


星芒祭ではある風習があり、大切な人へその人への想いを込めてプレゼントを贈るというものだ。


毎年任務やらで時間が合わなかったり

それらしい事はあまりやれておらず

白雪は今回こそはサプライズで

プレゼントを用意しようと考えていた。


サプライズなのだからまずはバレないように行動しなきゃ…!


「ごめん!コルト…!明日から3日位は任務で帰れないの…!」


私のいきなりの発言と声の大きさも相まってビックリしているコルト。


『そんな大きい声で言わなくても…わかったよ。寒いから暖かい格好するんだぞ?』


外ではふわふわと

白く柔らかく雪が降っている。


「わかってるよー!もぉ〜…なるべく早く帰るようにするから…。」


『無理して怪我しないようにな…。』

そういつもと変わらない笑顔で微笑む彼。


「はぁーい…ムスッ」

せっかくのサプライズだもん…。

絶対成功させたいし…

こんな事で喧嘩なんてしてられないんだから…!


いつも通り、暖かい部屋で美味しい食事と

コルトとの会話を楽しんだ。


明日のためにも今日は早くベッドに入るんだ…。

お腹いっぱいになり歯磨きをするがうとうとしてくる。


そのまま寝室に行き、コルトへいつも通り

「おやすみ」の言葉を交わそうとした時


コルトの大きくて優しい手が頬に触れる…。

「…ひゃ…っ!」恥ずかしいやら何やらで変な声が出てしまい焦る。


『ごめん…!冷たかったか?』

心配そうにこちらを覗き込み問うコルト。


「びっ…ビックリしただけ…っ!」


コルトは体温が人よりも低い、そのため確かに冷たくはあるがそんなコルトの手が

私は大好きだ。


『悪かったよ。じゃあゆっくり休んでくれ。

おやすみ…白雪。』


そう言いながら親指で優しく頬を撫でて

彼は出て行く。


彼が触れた部分が徐々に熱を帯びる…。


「こんなの…ずるいよ…。 

寝れなくなっちゃう…。」


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少し寝不足ではあったが問題ない。

プレゼント探しで何件か見に回りたいので

コルトが起きていたかは確認できなかったが早々に家を出ることにした。


目星はつけてきていた。

【コート、手袋、マフラー】ありきたりだが任務で使えそうで今必要そうなものと考えてみた。


まずはコートからかな。

値段は気にせず店員さんのお話を聞くがどうにも戦闘向きでもない…

買い物などのお出かけにはちょっと…。

確かコルトはお気に入りのコート装備が

あったはず…。


そうなってくるとマフラー…!

手軽だし暖かい!……でも首周りはやっぱり種族的にもこだわりがあったり邪魔になるなんてこともあると聞いたことがある…。


(んー…どうしたものかと悩んでいると

ショーウィンドウに目が奪われた。)


そこには職人がこだわって作ったであろう 【黒革の手袋】

寒さよけにもなり使えば使うほど革は手に馴染むという。色もデザインも派手すぎず

シンプルすぎない。

もぉこれしかないと思い即決した。


思ったより早く決められた為

少し討伐でも受けて

その報酬で最近流行りの紅茶やホットミルクに合うというシロップを買おうと思いついた。


「ここ最近、寒くてコルト…寝つき悪そうだし…早々に片付けてお家かーえろ!」


荷物を一度預けて

早々に予算分の任務を終わらす。


その時には結構時間が経っていた為、

出先の宿で一泊した。


「コルト…喜んでくれるかな…。

サプライズなんて初めてだし…。

早く渡した時の…顔、見たいな…。」


そんな事を考え想像してふふっと笑い

安堵しながら睡魔の波に沈んでいった。


翌日、早く寝たお陰かスッキリ起きれたので

早めに家に帰ることにした。


家に着くと鍵がかかっていた。

(あれ…?コルトもお出かけかな?)

「まぁ…夜には帰ってくるよね…!」


それからずっとコルトの帰る気配がなかった。でもちーちゃんからの連絡で街に出てるって聞いたから事件に巻き込まれてるってこともないだろうし…。


23時を過ぎた頃、リンクシェルをするか悩んだか任務をしてたり友人と会っておりそれに水を差すのが怖かった。


何より1番怖かったのは彼と連絡が繋がらず

帰ってこないことだ。私は意気地無しだ…。


「きっとタイミングの問題だから…。

コルトはきっと帰ってきてくれるよね…

白雪を…。」


込み上げるものに邪魔される…


「コルトは白雪を一人にしないよね…ッ。

一人は嫌なの…。」


不安と疲労によりソファー沈み込んでしまう様な感覚に陥る。


「慣れないこと…するべきじゃなかったのかな…。」


泣き虫なんて今に始まったことじゃないけど

今日の涙は一段と熱く感じた。

これもきっと冬のせいよ…。

そう言い聞かせて眠りについた。


コルトが帰ってきた時にすぐにでも

プレゼントはわかるようにして…。


あぁ…神様、

帰らぬ彼が無事でありますように。

彼に神の祝福があらんことを。

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