episodes-8

「という訳で、ここが我が家です!」


「おぉ…」


連れてこられたのはアメの自宅。

天国の西側、天使たちが多く住む住宅街の中にある。


アメの家は2回建ての広めの一軒家。

給料がいいのだろうか、豪華に感じる。


「こんな家ですけど、どうぞ

くつろいでてくださいね。」


そう言ってアメは台所へ消えた。




ふぅ、と一息つく。

胸ポケットのタバコを…取り出そうとしたが

無かったことに今気づいた。なにか寂しさを感じる。

生前ほど、タバコを求めているわけではないが

もはや習慣どころか、俺の一部なのではないか。


まあ要約すると、ただのヘビースモーカーってことだ。



「ご飯にしましょう!」


そう言ってアメが、台所から丸焦げの

謎の物体を皿に乗せてやってきた。


「おいおい、俺になに食わせる気だよ…。」


「え?人間界の“鶏肉”をわざわざ取り寄せたんですよ!

調べてみたら、焼けばいいとのことだったので、“神力”で

軽く燃やしました!」



--喧嘩売っちゃいけない奴かもしれねえわ。



「っていうかさ、その“神力”ってなんなの?」


「天使などの神に仕えている者や、神様自身が使える

技のことです!魔法、にちょっと近いですね。」


「なるほどね。あ、これ焦げてるけど

割とうまいわ」


ついつい食べる手が止まらなくなってしまう。


「ほんとですね。丁度いい香ばしさと、しっかりとした肉質。

さらに油と身のバランスも最高です!!

天国でもなかなかこんな食べ物ないですよぉ?」


「そうなのか、意外だな。」


「別に天国は、なんでも完璧なわけではありませんから。」


アメはその小さな口いっぱいに鶏肉を頬張り、

笑顔で俺と話していた。

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