第14話任務完了
ズルズルと気を失ったフェンリルを引きずってヤンさん達の元へと戻りました。
ヤンさんはいつの間にか、フェンリルを手なずけ隣に座らせていました。
ジェムさんは木陰で気を失っておりますが、クルトさんがしっかりフェンリルを負かしておりました。
「…………」
「『どうやら、コイツらは操られていたらしい』と仰っております」
隣で大人しく座っているフェンリルを撫でながらヤンさんが仰りました。
フェンリルも、とても嬉しそうです。
──侍従関係が成立しましたね。
「なんや?ヤン、フェンリルの言葉が分かるんか?」
クルトさんは負かしたフェンリルの体の上に腰掛け、不思議そうに尋ねています。
「…………」
「『何となく……な』らしいです」
「何となくかい」と呆れたようなクルトさんですが、ヤンさんが通訳している言葉は多分合っていると思います。
まあ、これも何となくですがね。
ピクッ
私が引きずって来たフェンリルの耳が動きました。
どうやら目が覚めたようです。
目が覚めたフェンリルは、先程とは打って変わって大人しく、しっかり座るとこちらをジッと見ています。
私はその目にちゃんと光が戻っていることを確認できホッとしました。
この子はもう大丈夫。そう感じ取った瞬間でした。
「…………」
『急に襲ってすまなかった。と言っている』ヤンさんから伝えられたフェンリルの言葉に「気にすることありません」と撫でながら伝えました。
「──で?誰が
ヤンさんの方を見ると、ヤンさんは何やらフェンリルと目で会話をしている模様。
うんうん。と頷いていたヤンさんでしたが、そのうち首を捻り始めました。
「…………」
ヤンさんが仰るには二週間ほど前の深夜、魔物達が寝静まった頃人間がやってきて、何やらブツブツ言ったかと思ったら急に体の自由が奪われ頭の中にモヤが掛かったようになり、いつの間にか森の外に出て暴れていた。という事らしいです。
ヤンさんは、そのブツブツ言ってたのは術を掛けられたのだろうと見解を示しました。
今は私達の攻撃で術が解け、落ち着きを取り戻したようです。
──しかし、この森に人が足を踏み入れたと言うのは問題です。
私が知る限り、腐蝕の森に入ったという人間を見たことも聞いた事もありません。
「一度戻りますか?」
「…………」
ヤンさんは『そうだな』と私の意見に同意。
「いや、戻るのはいいんやけど、
クルトさんの指さす先には、寂しそうにヤンさんを見つめるフェンリルの姿がありました。
クーンクーン……
必死にヤンの服を引っ張りこの場に残って欲しいと懇願しています。
その姿にヤンさんが心を奪われてしまい『コイツらは俺が飼う!!』と言い出したのです。
「待や!!そない大きさのどないすんねん!!」
「…………」
「『どうにかなる』と仰っておりますが?」
「はぁぁぁ!?」
クルトさんとヤンさんが揉め始めた頃、ジェムさんが目を覚ましこちらにやって来ました。
ジェムさんに簡単に経緯を説明し、今現在このフェンリルをどうするか揉めている所だと説明しました。
ジェムさんは何やら考えた後
「……ん~、流石に町には連れて行けないけど、この先の森に小屋を建てて住まわせるのはどうです?」
この先の森と言うのはルーナが餌場にしている所です。そこなら人もさほど来ませんし、瘴気も放っていません。
ヤンさんはその提案にすぐさま乗り、フェンリル達をその森へと連れていきました。
「……これ、ボスに了承取らんでええの?」
「いつもの事ですから、大丈夫でしょう」
その後、便利屋に戻りゴリさんに結果報告しつつ、ヤンさんがフェンリルを森で飼い始めたと伝えると、案の定、頭を抱え胃薬に手を伸ばすゴリさんの姿を目撃しました。
本日の報酬…………フェンリル退治80000ピール
借金返済まで残り5億6千720万7100ピール
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