第30話王子兼騎士団長
私達は何故か敵陣ではなく、城へとやって参りました。
そして、何故か目の前にはこの国の王子が鎮座しております。
──どうして王子という方は皆が皆、見目麗しいのでしょうか。
多少は不格好な方がいてもいいはずですよ。
「わざわざ出向いてもらってすまない。私はユリウス・ルーベン。この国の王子でもあり、聖騎士団の団長も兼任している」
「そして今回、私の部隊が同行させて頂く」と、付け加えられました。
国王様は騎士を貸してくれるとは仰っておりましたが、まさか王子を出してくるとは誰が想像したでしょう。
流石に荷が重すぎる為、ゴリさんがやんわりと断ろうとしましたが「私は数々の困難を乗り越えて団長になったのだ。自分の身は自分で守れる」と、聞く耳持ちません。
──王子という者は、人の話を聞かないのも共通するんですかね?
多分、ユリウス様が思っている数倍は危険だと思いますよ?
正直、邪魔です。
「……マリー、顔……」
渋顔をしていたのを、シモーネさんに小声で注意されました。
「……すみません。つい、表情に出てしまいました……」
「全く、一応王子様の前だからね。シャンとしなさい」
珍しくシモーネさんが真面目な事を仰っております。
もしかして、これは、ユリウス様を狙っているのでは?
「違うわよ」
心の声を見透かしたように、シモーネさんがすぐさま否定してきました。
「確かに、いい男で王子様。騎士団長も務めているとなれば、超優良物件だわ。だけど、私は王族とは関わりたくないの」
思いもよらぬシモーネさんの言葉に、驚きました。
「マリー、覚えておいて。王族なんて好き勝手やってるだけのクソ野郎よ。王妃なんて名ばかり。買い物だって好きに行けないし、お茶会という名のくだらない俗信を聞いて、旦那は旦那で妾を囲わせてても、文句の一つも言えない。王妃の役目なんて、後継者を産むだけ。道具と一緒よ。何一ついい事なんて無いわ」
まるで王族を目の敵にしている様な口ぶりに思わず目を見開きました。
私が何も言えないでいると「ゴホンッ」と、咳払いが聞こえました。
「はっ!!」と気づくと、皆さんこちらに注目しておりました。ゴリさんに至っては、にこやかに怒っておりますね。
「──……確かに、王族はそう思われても仕方ないな」
ユリウス様に苦笑いで言われてしまいました。
どうやら、シモーネさんの話がダダ漏れだった様です。
「うちの者がすまん!!」と私とシモーネさんの頭を掴み、ゴリさんが一緒になって頭を下げました。
「シモーネの王族嫌いは昔から変わらないねぇ」
「普通の女なら王子に媚び売りまくるのにな」
ティムさんとルイスさんが私達の後ろでコソコソ話をしていますね。
──まあ、誰しもが王族と結婚したいと思っていないという事ですね。
「──……あぁ~。話が大分脱線したが、今回は王子の部隊と一緒に行く事になった。……不満がある奴は?」
ゴリさんに問われれば不満があろうが無かろうが、手を挙げる方はおりません。
ゴリさんが仰った時点で、決定なのです。
「──よしっ。じゃ、宜しく頼む」
「こちらこそだ」
ゴリさんとユリウス様が力強く握手を交わし、互いの健闘を祈りました。
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