第19話謹慎

本日、私はゴリさんから謹慎という名の休暇を言い渡されました。

その為、休養中のルイスさんと共に部屋に監禁状態です。


ゴリさんはレナード様の護衛に行く前、ルイスさんに「マリーの監視頼んだぞ」と一言仰って行きました。


それもそのはず、私が大人しく部屋に監禁される様な人間ではないからです。


……と、言う訳で、偵察にでも行ってきますか。


「──……ねぇ、ちょっと、どこ行く気?」


窓に足をかけ、外に飛び降りようとした所で、番犬のルイスさんに止められました。


「…………………チョット、オハナヲツミニ?」


「それ絶対嘘だよね!!普通窓から出てかないし!!流石に俺でも分かるよ!?」


仕方ないじゃないですか、ドアはゴリさんの指示で外側から鍵が掛けられているので、窓から出るしかありません。


「もお~、勘弁してよ。俺がゴリさんに怒られんだよ~?」


文句を言いながら私の服を掴み、窓から引きずり降ろされました。


「頼むから今日は大人しくしててよ~」と、ルイスさんに懇願されてしまいました。


──困りましたね。

私としては使用人の調査を進めたいところなんですが……


そんな事を考えていると、部屋のドアをノックする音が聞こえました。

現れたのはジェムさんです。


本日、ゴリさんとヤンさんがレナード様の護衛に就いている為、手持ち無沙汰でここにやって来た様です。


「あぁ~!!丁度いい所に!!ジェムもマリーを止めてよ!!マリーすぐ脱走しようとすんだもん」


ルイスさん、それは誤解です。脱走しようとしたのは、今のところ一度のみです。


ルイスさんの話を聞いたジェムさんは「ははっ」と軽く笑い、ソファーに腰掛けましたが、どうも様子がおかしいです。


「ジェムさん、どうかしたんですか?」


「……うん。ちょっと、気になる事が有るんだよね……」


私が尋ねると、ジェムさんは神妙な顔をしながら仰りました。


「──……これは俺の推測なんだけど、当主を狙ってるのって執事の奴じゃないかって」


ふむ。なるほど、ジェムさんは犯人がリチャードさんだと言いたいのですね。


では、そう結論を出した経緯を説明してもらいましょうか?


「ほら、俺一応公爵だったでしょ?だから、執事と主人の間柄って少しは分かるんだけど……ここの執事、どうも主人をあまり良く思ってないみたい」


あぁ、ジェムさんは元公爵家のご子息でしたね。

しかし、何故リチャードさんがレナード様を良く思っていないと思われるのでしょう?


「俺ら当主の護衛に付いたろ?その時、色々公務内容を見たんだけど、明らかに収益が見込めない所に投資してたり、何もない枯れた土地を買ったり、金の使い方がおかしいんだよ。流石にちょっと声を掛けてみたら、ここの執事に勧められてやってるみたいなんだよね」


ほお。リチャードさんが、そんな事を……


「──でもさぁ、ここの当主だって一応公爵名乗ってんだから馬鹿じゃないんだろ?わざと騙されたフリしてるとかは?」


ルイスさんがジェムさんに声をかけました。


すると、ジェムさんは首を横に振り「それは、ないよ」と一言。


「──なんて言うか、執事の事を信頼しきってるって感じ?」


あぁ、なるほど。

まぁ、普通であれば信頼し合う事はいい事なんですが、この件に関しては何とも言えない感じですね。


「……これは、調査が必要ですね……」


「は?」


私の言葉にルイスさんがいち早く反応しました。


「ちょっと、マリーは謹慎中だよ!?」


「大丈夫です。この場にゴリさんはおりません。ルイスさんとジェムさんが黙っていてくれれば、バレる事はありません」


私は立ち上がりながら伝えると、ルイスさんが慌てて止めてきましたが、黙ってればいいんです。


「──ゴリさんが戻る前には戻ってきます」


そう一言伝え、素早く窓から外へ飛び降りました。

背後から「あ゛~~~!!!逃げられたァァァ!!!」と言うルイスさんの叫び声が聞こえましたが、そんなものに構ってる暇はありません。


──さて、リチャードさんは何処でしょう?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る