第18話誤解
今、私の頭の中で警戒音が鳴り響いております。
それもそのはず、偽ゴリさんに押し倒された挙句、今まさに偽ゴリさんの口と私の口が触れようとしています。
更に偽ゴリさんは、ゆっくり顔を近づけながら捲りあげたスカートの中に入れ、太腿を触り始めました。
いつもの私なら、この様な場面すぐにでも対処出来ましたが、相手の顔がゴリさんと言うこともあって、頭が対処しきれておりません。
このままでは、ゴリさんではないゴリさんにあられもない姿を見せてしまいます。
しかし、体が動きません。
私は仕方なく、ギュッと目を閉じました。
……が、目を閉じた瞬間、私の体に覆い被さっていた重みが消え、拘束も解かれました。
何事かと、目を開けると……
「マリー、大丈夫!?」
「おや、ジェムさん」
私の目の前には偽ゴリさんではなく、顔を青くしたジェムさんが私を抱き起こしてくれました。
そして、偽ゴリさんはと言うと……
「……っ痛」
壁まで飛ばされたでしょう。壁が衝撃で破壊されており、瓦礫の中から偽ゴリさんが這い出て来ました。
そして、その場には仁王立ちしているヤンさんがおります。
どうやら、ヤンさんが殴り飛ばしたのでしょう。
──……と言うか、ヤンさん……物凄く怒ってませんか?
そう、ヤンさんは無表情で何を考えているか分からない方ですが、今のヤンさんはジェムさんでも察しが付くぐらい怒ってます。
その証拠に「……あんな怒ってる兄貴、初めてだ」とジェムさんが呟いておりました。
ヤンさんは黙って、偽ゴリさんの胸ぐらを掴み再び殴り飛ばしました。
──……あぁ~。これは、また部屋を修復しないといけせんね。
「──ったいな!!何だよお前!!!」
流石に黙って殴られているだけはありませんね。
偽ゴリさんが口に溜まった血を吐き出し、ヤンさんを睨みつけながら怒鳴りました。
「…………」
「『そんな事分かっているだろ?貴様、仲間に手を出すとは……そこまで落ちぶれたか!?死んで詫びろ』と、申しております」
どうやら、ヤンさんは完璧に本物のゴリさんだと勘違いしておりますね。
誤解を解こうにも、今のヤンさんは怒りで周りが見えておりません。
舎弟のジェムさんですら、怯えきっております。
「いや、ちょっと、待って、僕、ちが──」
偽ゴリさんが必死に誤解を解こうとしておりますが、ヤンさんは聞く耳持たず攻撃を仕掛けており、偽ゴリさんが逃げ回っていると言う感じになってます。
「──チッ!!折角、面白いシチュエーションだったのに台無しじゃないか!!」
偽ゴリさんは逃げ回りながらも、そんな事を口にしたもんだから『貴様!!!』と、ヤンさんの殺意が増しました。
──あぁ~、これはもう誰にも止めれませんよ。
完全に激昂したヤンさんを見たのは初めてですが、これは制御不能ですね。
私とジェムさんは、出来るだけ巻き込まれないよう部屋の隅隅に寄り、殺り終え……いえ、ヤンさんが落ち着きを取り戻すのを待っていました。
「お前ら、何してる!!?」
バンッとドアが開き、飛び込んできたのは本物のゴリさんでした。
「…………」
一瞬で部屋の中の時間が止まったかのように、静まり返りました。
その沈黙を破ったのは「えっ?どういう事……?」と、囁いたジェムさんでした。
その言葉にハッと我に返った偽ゴリさんは、ヤンさんの隙をつき窓から飛び降り逃走しました。
私は理解が追いついていない、お三方に今までの経緯と共に、先程のゴリさんは偽物だと伝えました。
すると、ヤンさんはドサッとソファーに倒れ込み『良かった』と、仰っておりました。
「まぁ、私も未遂でしたし、ヤンさんの誤解も解けたし、これにて一件落ちゃ……」
ゴンッ!!!
全てを言い切る前に、ゴリさんの強烈な拳骨が脳天を直撃しました。
「無理をするなと言っただろ!!?動けないなら何故、大声を出さない!!取り返しがつかなくなるとこだったんだぞ!?」
ゴリさんも大変お怒りのご様子です。
「──……すみません。目の前にゴリさんの顔があると思ったら、気持ちわる……」
ゴンッ!!!
再び拳骨が飛んできました。
「……まったく、お前は……。まあ、無事で良かった……」
ゴリさんは大きな溜息と共に、私が無事だと分かって安堵しておりました。
「……ご心配お掛けしました」
ゴリさん、ヤンさん、そしてジェムさんに深々と頭を下げ、謝罪しました。
「俺らの誤解は解けたけど、ルイスの誤解も解いときなよ?ルイスが大声を上げながら歩き回ってたお陰で気づけたんだから。……ルイスの言葉を聞いた時の兄貴、すっげぇおっかない顔してたんだぜ?」
ジェムさんが私の所に辿り着いた経緯を説明してくれました。
やはりルイスさんのせいだったようです。
──まあ、今回は助かりましたね。
その後、ルイスさんの誤解を解くと共に、何時間にもわたり口の堅さとはどういう事か、延々と説明して差し上げました。
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