第3話出発
「おぉ~!!すげぇ!!」
私達は支度を終え、今港へと来ております。
そして、目の前には小ぶりですが立派な船。あまりの立派さに、ルイスさんが声をあげるほどです。
この船は、ゴリさんが知り合いの方から借りて来た様です。
こんな立派な船を借りてこれるとは、ゴリさんの顔の広さには驚きです。
──私は、てっきり漁船かそこら辺に乗り捨てれた船で行くのかと思っておりました。
顔の広さは、面積だけではありませんでしたね。
「さあ、行くぞ」
「……あの、行くのは良いんですが舵取りは?」
意気揚々と船に乗り込もうとするゴリさんに尋ねました。
なぜなら、辺りを見回してもそれらしき方がおりません。誰がこの船を動かすのでしょうか。
「あ?俺が舵取りだが?」
「は?」
ゴリさんが当然のように仰っていますが、皆さん一瞬にして顔色が暗くなりました。
「俺まだ死にたくない!!」とルイスさんが言い出すと「私、ちょっと用事思い出したわ……」とシモーネさんが、当然の如く逃げようとしていたので、ヤンさんが素早く確保しておりました。
「…………」
「『安心しろ、こいつは船に慣れている』と、申しておりますが」
ヤンさんが言うなら確かな情報だと思いますが、ゴリさんが船に慣れているってどういう事でしょう?
もしや、元海賊の方でしょうか!?
私は、はっ!と気づいてしまいました。
「こら、マリー。お前また変な事考えてるだろ?」
すかさずゴリさんの拳骨が私の頭をグリグリしております。
「──……ねえ、そんなとこでジャれてないで、早くしてくんない!?」
船の上からティムさんが声をかけて来ました。
どうやらティムさんが一番乗りみたいですね。
ティムさんにせっつかれ、他の方々も急いで船に乗り込みます。
乗り込んでみると、小ぶりの船にしては中もしっかりしており、休憩スペースも完備されておりました。
──この人数で移動するには持って来いの船ですね。
一悶着ありましたが、ようやく出発です。
◇◇◇
「ふふん~~~」
ゴリさんが、とても楽しそうに鼻歌交じりに舵を取っています。
中々見られる光景でないはないので新鮮なんですが、少々不安です。
しかし、この調子で行けばグロッサ国までは1、2日で着きそうな感じですね。
私は甲板に出て、空を見上げました。
眩しいほどの青空です。
──晴天に恵まれて良かったです。
そう思っていると、聞きなれた鳴き声が聞こえました。
キュルル~!!!
辺りを見回すと、陸地の方からルーナが飛んでくるのが見えました。
「ルーナ!?」
私が名を呼ぶと、嬉しそうに私の元へ降りて来ました。
「ルーナ、何故貴方がこんな所まで!?」
ルーナにはお留守番していて下さいと、伝えて出てきたはずなんですが……
「ん?」
ルーナの足に何か紙が結ばれておりました。
その紙を取り、開いてみると……
──あの、王子の仕業でしたか……
グシャッ
紙は殿下からの文でした。
内容は一言「気をつけて行ってくるのよ~」と。
この一言の為にルーナを頼ったのかと思ったら、思わず文を握り潰してしまいました。
「あれ~!?グリフォンじゃん!!どうしたの、こいつ!?」
甲板に出てきたルイスさんが、ルーナを見て驚いております。
そう言えば、便利屋の皆さんにはルーナの事をまだ話してない事に気づきました。
──これは、丁度良い機会ですね。
ルイスさんにルーナとの出会いを、卵の頃まで遡って伝えました。
「へぇ~。マリーにも母性本能とやらが備わっていたかぁ。お前良かったなぁ、卵の時点で割られなくて」
ルイスさんがルーナを撫でながら、大変失礼な事を仰っております。
私とて、生命は大切にします。無闇に殺生はいたしません。
「なになに?何かあったの?」
「あら?グリフォンじゃない」
甲板にティムさん始め、シモーネさん達も集まって来ました。
私はルイスさん同様、シモーネさん達にルーナの事を紹介しました。
すると、皆さん「まさかマリーが飼育をするなんて……」や「マリーの事だから成長したら食べるとか?」など、言いたい放題です。
──皆さんが私をどの様に見ているのか、よく分かりました……
私の思いとは裏腹に、ルーナは皆さんに遊んでもらい大変満足そうです。
──まぁ、ルーナが楽しそうなんで、目を瞑りましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます