第4話到着
グロッサ国に向けて出発してから二日後、無事にグロッサ国に到着致しました。
ルーナは便利屋の皆さんが気に入ったらしく、航海中ずっと船が見える辺りを飛び回り離れようとしませんでした。
餌は魚を採って食しており、私達の分まで採って来てくれました。
ルイスさんがルーナと釣りの勝負をしておりましたが、当然ルーナの圧勝。負けたルイスさんは一日ルーナの従僕となり、ルーナと共に海に潜ったり、ルーナの食事を用意したりせっせと働いておりました。
ルーナが来た事で船内はとても和んだ雰囲気になり、とても楽しい航海でした。
そして、いよいよ、敵地へ乗り込みます。
まずは、依頼を頂いた貴族の方の元へ向かう予定です。
──はてさて、鬼が出るか蛇が出るか……
私達が荷物を持って船を下りると、目の前に馬車が並んでおりました。
「遠路遥々お疲れ様でした。──便利屋の方々とお見受け致しますが?」と、とても礼儀正しいおじ様の登場です。
すぐにゴリさんが前に出て応対します。
「あぁ、そうだが?お前達は?」
「申し遅れました。私はウィルソン公爵家の執事を務めております、チャールズと申します。──便利屋の皆様のお迎えに上がりました」
チャールズさんがそう言い切ると、数人の侍女の方が私達の荷物を運んでくれました。
そして、私達は言われるがまま馬車に押し込まれ、そのウィルソン公爵家とやらに向かう様です。
「……ねぇ、どう思う?」
「何がです?」
「あの執事の事よ!!あの執事、多分結構なやり手ね」
馬車に揺れながら、シモーネさんが尋ねてきました。
確かにあの方、完璧な振る舞いでどこにも隙がありませんでした。
それに、あの威圧感。中々です。
ただの執事でないことは丸わかりです。
「……執事の皮を被った殺し屋とかね?」
ティムさんが不吉な事を仰ってます。
「えぇ~、もしかして俺ら地獄の入口に誘い込まれてる?」
ルイスさん、中々上手いこと言いますね。
まあ、もし地獄であっても既に戻れないとこまで来ておりますけどね。
──地獄の番人に捕まらないようにお願いしますよ?
「……お前ら、命は粗末にすんなよ。敵わないと思ったら全力で逃げろ」
ゴリさんが小声で私達に伝えてきました。
……私の辞書には逃げるなんて言葉はありません。逃げる、即ち負けを認める事になるんですよ?冗談じゃありません。逃げるぐらいなら死を選びます。
「……特にマリー。俺はお前が一番心配だ……」
はぁぁ~とゴリさんが溜息を吐きながら顔を手で覆っています。
「そうだよねぇ。マリーは特攻隊長だもんねぇ」
「寧ろ、狂人が出てきたら喜んで飛びつきそうだし……」
「マリー。貴方女の子なんだから、顔に傷は作らないようにしなさいね?」
「…………」
皆さん好き勝手に私の事を仰っていますが、どの道殺らなきゃ殺られるまでですよ?
それなら自分の力がどの程度、通用するか試しておかねば損です。
「……まあ、マリーは止めても無駄なのは分かっているが、俺の胃の事も考えてくれ。お前のことを考えると胃がな……」
「「あぁ~………」」
ゴリさんが腹部を擦りながら仰っております。
その言葉に「同感」と皆さん哀れみの目で、ゴリさんを見つめておりました。
胃痛は飲み過ぎが原因では?私のせいにしないで下さい。
後で胃薬を用意しておきますか。
そんな会話をしていたら、あっという間に目的地に到着です。
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