第54話発見
私達は奴隷商人が通るであろう、道までシャーロットさんに送っていただきました。
「シモーネ、頼むぞ」
「……仕方ないわね」
シモーネさんには奴隷商人の足止め役となってもらいます。
道の真ん中でシモーネさんが佇み、目的の商人が通るのを待ちます。
ガラガラガラ……
暫くすると、馬車の車輪の音がこちらに近づいてくるのがわかりました。
見ると、馬車が2台こちらに向かってくるのが見えます。
──あの荷台にネリさんのお母様が乗ってるに違いありませんね。
さあ、シモーネさん腕の見せどころですよ。
先頭の馬を引く御者の方が道の真ん中に佇むシモーネを見つけました。
「──やい、姉ちゃん!!そんな道の真ん中で何やってやがる!?邪魔だ!!」
御者の方が怒鳴り散らしますが、シモーネさんは下を俯いたまま、返事もせず動きません。
だんだん御者の方が苛立ちを露にして参りました。
「いいがげんにしやがれ!!女だからって手加減しねぇぞ!!」
遂に馬車から降り、シモーネさんの元へ。
そして、シモーネさんの手を思いっきり引くと、ようやくシモーネさんのお顔がお目見えしました。
御者の方はその顔を見ると、一瞬驚いた顔をしましたが、すぐに頬を赤く染め舌なめずりしました。
「──何だ、中々の上玉じゃねぇか」
御者の方はシモーネさんの顎を掴み、舐めるように見ています。
──シモーネさん!!我慢です!!まだ、ダメですよ!!
「一体、どうしたんです?」
後ろの馬車から身なりの良い男性が降りてまいりました。
「……どうやら、あれが親玉らしいな……」
ゴリさんが、前を向きながら小声で私達に伝えてきました。
その身なりの良い男性は、黒の長髪を後ろで一つに束ねており装飾品も一流の物で、一瞬何処かの貴族の方と見間違えそうですが、奴隷商人を纏めている親玉の方らしいです。
その方はゆっくりシモーネさんに近づいて行き、乱暴にシモーネさんの顎を掴み、顔を覗き込んでおります。
──女性にあの様な行いをするとは、ろくな男性じゃありませんね。
シモーネさんは殴りたいところを、頑張って抑えています。
「……なるほど、こんな森の中でこの様な上玉を拾えるとは、ツイてますね……」
「──だけど、こいつ一言も喋らないんですぜ?もしかしたら、喋れねぇんじゃ?」
「それは都合がいいじゃないですか。何をしても叫び声を上げないと言うことですよ?最高じゃないですか。これは高値がつきますね。──少し、試してみましょうか?」
そう言うなり、親玉の方は腰につけた鞭を取り出し、シモーネさん目掛けて鞭を振りました。
それでも私達はその場から動きません。何故なら……
「──……黙って聞いてれば、いい加減にしなさいよ!!」
シモーネさんはその場から動かず、振られた鞭を片手で受け止めました。
さあ、ここからはシモーネさんのターンですよ。
まさか鞭を受け止められるとは思ってもみなかった、御者の方と親玉の方は豆鉄砲を食らったような顔をして、シモーネさんを見ています。
「まったく、人が折角大人しくしてやってんのに調子に乗るんじゃないわよ!!いちいち顔をくっ付けて来て、気色悪いったらありゃしない。人の顔見る前に、自分の顔見てから近づけて来てくれる?それに、貴方達息がくっさいわよ!!ヘドロでも食べたの!?」
「なんだと!!!!」
未だに鞭を握りしめて離さないシモーネさんは、二人を睨みつけながら指をさして強気に攻めています。
──まあ、これがシモーネさんの通常運転ですけどね。
「……貴方、今置かれている立場が分かっていないみたいですね?」
そう言うなり、親玉の方が鞭をシモーネさんの手から抜き取り、何やら馬車の方に向かって合図しました。
すると、中々体格の良い方々が登場して来ましたよ。
──用心棒……と、言う所でしょうか?
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