第53話居場所

「いや~、すまんかったの。ルッツの言う通りこやつは、フェルスの魂じゃ」


フェルスさんの亡骸を前に、シャーロットさんは仰りました。

うり坊……もとい、フェルスさんはシャーロットさんの腕に抱かれ、もがいております。


シャーロットさんが仰るには、フェルスさんの肉体に呪いをかけたのが原因で、魂の行き場が無くなったのでは?と仮定しておりました。

理由はどうあれ、こうしてフェルスさんと一緒にいれることが嬉しいのだと、シャーロットさんは申しておりました。


──まあ、お二人のことはよく分かりました。


しかし、私達はお二人のことを聞きに参ったのではありませんよ?


シモーネさんは、もう帰りたいと顔が物語っています。


「……シャーロット、そろそろ話を進めてくれんか?俺らも暇じゃない」


ゴリさんが痺れを切らし、シャーロットさんに願い出てくれました。


──ゴリさん、貴方は言う時は言う男だと思っておりました。


「……分かっておる。母親の居場所じゃろ?……まったく、妾がフェルスの愛を語ってやっていると言うのに……」


不服そうにブツブツ文句を言いがながらも、ちゃんとゴリさんの言うことは聞いてくれるのですね。


シャーロットさんはフェルスさんを腕の中から解放すると、今度はフェルスさんの亡骸の方へ向かっていきました。


シャーロットさんは亡骸フェルスさんの大きな頭に手を当て、なにやら呪文を唱えておりました。

すると、手を当てていた頭から光の球が現れ、うり坊のフェルスさんがキャッチ。

食べました……


私達は、あまりの出来事に目を疑っていましたが、そんな私達など気にも止めずフェルスさんは何やら考えているもよう……


「──ほお、その母親とやらは隣国の奴隷商人に捕まってるな」


「球食べて分かったの!?」


フェルスさんが何事も無かったかのように、私達に伝えてきました。

シモーネさんが思わず、突っ込んでおりましたが……


「はっはっはっ!!驚いたか!?妾は死者を通じて情報を取り入れるのが得意でな。この亡骸は死者と通じる為の掛橋にもなっておる。そして、出できた情報をフェルスが食い、解読してくれているのじゃ。どうじゃ?フェルスは素晴らしいじゃろ?」


シャーロットさんは胸を張りながら、フェルスさんの凄さを語ってくれました。


死者と会話の出来るお方ですか……

それは、大変興味深いです。


フェルスさんの凄さを語っていますけど、シャーロットさん、貴方も充分凄い方だと思いますよ?


「……ねぇ、あの人、実は死神とかじゃないの?」


シモーネさんが、私にそっと耳打ちして来ました。


まあ、確かに死者と語り合えるのは死の神だけですからね。

ですが、シャーロットさんはフェルスさんをこよなく愛する、ただの妖術師ですよ。


「…………」


「『おい、早く手を打たなければまずいんじゃないか?』と、申しておりますが」


ヤンさんの言うとおりです。

フェルスさんの言っていることが確かなら、ネリさんのお母様は奴隷として売られそうになっています。


「因みに、まだ隣国には着いていない。そいつらは今、森を抜けようとしている。──殺るなら今じゃないか?」


フェルスさんが、悪い笑みを浮かべながら教えてくれました。


──これは、好機です。


ゴリさんもそう思ったらしく、早速動き出そうとしております。

ヤンさんは剣を抜き、斬れ味を確認。シモーネさんは嫌そうな顔をしながらも了承しております。


「一気に片をつけるぞ」


「「はいっ!!」」


ゴリさんの言葉に一気に士気が上がりました。

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