第16話拾い者
ある日、城の庭を掃除していると、上から人が落ちてまいりました。
本日の天気は晴天の予定ですが、人が降ってくるとは思いませんでしたね。
まあ、どちらにせよ邪魔なので、捨てときますか。
「よいしょっ」と襟元を掴みズルズル引きずりながら、門のところまで運ぼうと思いましたが──
「おや?」
この方、怪我をしている様です。服に血が滲んでおります。
──これは、面倒事の予感です。
流石に怪我している人間を捨てることは出来ませんからね。
──仕方ありません。門番の方に引渡しますか。
「……ッつ……」
目が覚めたようですね。
……引き渡すまで気を失っていて欲しかったんですが。
「……あれ、君、殿下の婚約者でしょ?……なんでこんな所に?」
ピタッと一瞬で動きが止まりました。
殿下の婚約者役をやり終えた、次の日。城中では殿下の婚約者の話で持ち切りでした。
しかし殿下は相手の名を濁したらしく、色々な憶測が飛び交っておりました。「隣国の麗しい王女様」と言う話から始まり「町娘と禁断の恋」、更には「団長様と秘密の花園」や「オスカー様といけない執務」などと、殿方同士の妄想が一部の侍女の間で大流行りです。
因みに、オスカー様とは宰相様のご子息で、今は殿下の侍従としてお側におられます。
殿下が国王を受け継いだら、オスカー様が宰相様になられる予定です。
……で、何故この方は
──これは、尋問ですね。
「……え?なに?」
「うわっ!!?」
痛みに蹲っているこの方を担ぎ上げ、自室へと向かいます。
殿方を部屋に招くのは、あまり宜しくありませんが、この場合は仕方ありません。
さあ、行きましょうか?
◇◇◇
自室へ戻ると、早速傷の手当です。
ちゃんと消毒しないと化膿して後々大変なことになります。
しかしこの方、頑なに服を脱がないのです。
「……いい加減にしてくれませんか?服を脱いで頂かないと手当が出来ません」
「……君の手当は必要ないよ。……助けてくれたことには感謝してるけど」
面倒臭い方ですね。
人の親切は受け取るのが礼儀ですよ。そんな事ルイスさんでも知っております。
「……分かりました。そこまで言うなら、仕方ありません」
「えっ?ちょっ……。うわっ!!!」
埒が明かないので、力ずくで服を剥ぎました。
まあ、剥ぐと言うよりは破り捨てたが正しいかもしれませんが、血で汚れていたのでどうせ、処分品でしょう。
──この傷は、銃弾ですね。
幸い、弾は貫通されており体内には残っていない様子。
それにしても、運が良かったですね。もう少しズレていたら臓物がやられていたかもしれまんよ?
「はい、出来ました。でも、これは応急処置です。後でちゃんと医局へ行ってくださいね」
「……ありがと……」
ようやく、素直になりましたね。
さて、素直になったところで尋問開始といきますか。
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