第17話不審者(仮)

「さて、貴方はどこの誰で、何故私の秘密を知っているんです?答えによっては、貴方の存在自体を抹消させて頂きます」


乙女の秘密を知ってしまった報い、その身を持って知った方がいいですね。


「……それは言えない……」


──この後に及んでこの方は……


この方は一向にご自身の事を喋ろうとしません。

そっちがその気なら、こちらにも考えがあります。


「……では、貴方を不審者として扱わせていただきます」


縄を手に不審者(仮)の方にジリジリ詰め寄ります。


「君、元令嬢だよね?なんか、色々と令嬢とかけ離れた行動してるんだけど?」


ええ、私は元令嬢ですよ。でもただの令嬢ではありません。

脳筋貴族と呼ばれたオスヴェルダ家の令嬢です。

まあ、教える義理はないので黙っておきます。


「さあ、お縄についてください!!」


ベッドに腰掛けている不審者(仮)の方に縄をかけようとした瞬間、素早く飛び退きました。


……ただの不審者(仮)の方じゃないようですね。


「……僕にも色々と事情があるんだよ。元ご令嬢の君には関係ない事だよ。侍女は侍女らしくしてた方がいいと思うよ??」


──なんでしょう。何故か凄く腹立たしいのですが。


というか、名前まで知っているとは……

本当に何者なんでしょう?


「さて、僕も暇じゃないからそろそろ行くよ。手当ありがとうね」


「逃がしません!!」


窓に手をかけ外に出ようとしていたので、すぐさま短剣を投げ窓から手を引かせます。


「……へぇ、中々やるねぇ」


「お褒めの言葉は要りません」


ニヤッと、どこか楽しそうにこちらを見ています。


「いいよ。相手になってあげる。かかって来なよ?」


怪我をしていても余裕の表情ですね。

手馴れた者ですか。


しかし、逃がす訳には行きません。


「……参ります……」


短剣を両手に持ち、未だに余裕顔の不審者(仮)の方に刃を向けます。


しかし、かすりもしません。


「もう終わり?」


──ここまで当たらないと、苛立ちが募りますね。


「……まさか。貴方から答えを聞くまでは、ここから逃がしませんよ」


──仕方ありません。


私は、再び短剣を手に向かって行きます。

当然その刃は躱されますが、計算の内です。

そして、大きく体を避けた瞬間、すかさず銃弾で出来た傷を蹴りあげました。


「──がはっ!!」


……すみません。卑怯な手だと思いましたが、少々苛立ちが過ぎました。


「……っつう」


「……さあ、話してもらいましょうか?」


蹲っている暇はありませんよ。早く話してください。

貴方が暇ではないように、私も暇ではないんです。


ガバッ!!


「……君、やるねぇ。気に入ったよ」


侵入者(仮)の方に近づいたら、押し倒されました。


……私としたことが、油断しました。


「ねぇ、殿下じゃなくて僕にしない?」


何を勘違いしているのか知りませんが、殿下とは何もありません。


それよりも、この状況をどうにかするのが先決です。

なんせ、馬乗りになられ両手を拘束されているので手は出せません。


──困りましたね。


「……この状況でも冷静なんだね、君は。どうしたら、慌てた顔が見れるの?キスでもしてみようか?」


そう言うと、顔が近くにやって来ました。

ますます、まずい状況です。


こうなれば、男性の大切な部分を蹴りあげるしかありませんね。

……使い物にならなくなっても、恨まないでください。


「──マリアンネ!!!」


思いっきり蹴りあげようとした時、勢いよく自室のドアが開ました。

そこには、殿下とテレザ様の姿がありました。


「な、な、何してんのあんた達!!?」


「キャ---!!部屋の中が滅茶苦茶じゃない!!どういう事なの!?マリー!?」


──これは、お説教ですね。


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