第11話 勇者、素材を集める【2/3】または「吸血怪老」

 ヴァルドリエルの手の者たちの包囲網が狭まる。


「もはや逃げ場はあるまい。儂がやつらを引きつける」

「そなたらは、ある物を探してまいれ」


 悲壮な覚悟の老勇者ファラーマルズを前に、若き女勇者ノーマは困惑する。


「そ、そんなっ!?」

「せっかく、せっかく助かったんですよ! あの状況から!」

「それなのに……」


 老勇者は、しかし、まったく意に介さずに一笑に付す。


「フハハ、この躰を失うなぞ、どうということはない」

「それよりも、そなたらに重大な任務を与える」

「“霊鳥の羽根”を探すのじゃ」

「儂が知る最高の霊鳥、“シーモルグ”の羽根が最良じゃ」

「じゃが、それが無理でもフェニックスか、ガルーダか、鳥神のホルスでもよいぞ」

「とにかくそなたらは、“霊鳥の羽根”を探して手に入れるんじゃ」


 ノーマは食い下がる。

「で、でも!」

「それがあったって、あのヴァルなんとかいう、ハイエルフには効きませんよ」


 しかしファラーマルズは、いやらしくねっとりした笑みを浮かべた。

「たとえヤツが、何度竜の血を浴びて強くなっておろうが」

「“竜の角と同じ硬さの皮膚”をもっておろうが……」

んじゃよ。そういう儀式をしてやるのじゃ」

「とにかく、“霊鳥の羽根”は任せたぞ」

「それを手に入れたら、なんとかして儂と再び合流するのじゃ、いいな!」


 そこまで一気にまくし立てると、ファラーマルズは街路へ飛び出した。

 あえて、ヴァルドリエルの手の者たちの目の前に躍り出たのだ。


「枢密院の子飼いども。相手になってやろうぞ」

 その右手には竜牙剣タスク・ソードが握られており、どこからか取り出した、黒く邪悪なオーラを纏う槍も左手で掲げていた。


「探す手間が省けたわ、外交特使殿。今度こそ本当に、死んでもらうぞ」

 ヴァルドリエルの手の者たちも構える。

 洗練されたハイエルフの古参兵たちだ、一筋縄ではいくまい。


 街路で繰り広げられる戦闘の音を聞きながら、それぞれがファラーマルズより与えられたアラブ馬にまたがり、ノーマと外交使節団は裏道を駆け抜けた。


 そして、率直な疑問をつぶやいた。

「“霊鳥の羽根”なんて、どこにあんの!?」

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