第27話 毒竜の森

「花から精製する『特浄化の秘薬』が必要なのです。その…、母上の為に…」


 アイシスの血を吐くような言葉。皆は顔を見合わせてしまう。


「ターカッド辺境伯の第2夫人、アイシス様のご生母メルシス様は先年、領民を救われる為に『ソロガの泉』に発生した『ゴロンビー虫』の駆除を陣頭指揮された…」

「確か南の辺境、砂丘の街ザンバのオアシスにCランクの毒虫が巣を作ったんですよね」


 ゴロンビー虫。黄色に黒いラインがある肉食の巨大昆虫。鋭い顎と臀部に毒針を持つが、その巨大な体躯が災いし飛翔速度は遅い。若い成人ならば走って逃げ仰せる程だ。常に3~4匹で行動し、拠点たる巣作りをする為Cランクとなっている。

 その毒に致死性は無いものの、強い痛みを伴う神経毒であり、解毒は『特浄化の秘薬』か『フル・キュア・コンディション』の呪文かになる。『キュア・ポイズン』では解毒しきれない程毒のまわりが速い上に、毒が神経を損傷させ、解毒しても痛みが収まらなくなってしまう。なので『コンディションのキュア』呪文が必要となる。

 だが、『特浄化の秘薬』は『バオルの花』を毒消として精製する過程で抽出される油分を元に作るしか無い。秘薬1つ精製するのに毒消を25瓶は精製しないと必要量が集まらないのだ。

 また『フル・キュア・コンディション』は高レベルの回復呪文であり、唱えられる者がそれ程存在しない。王都の司教レベル。徳を積んだ高位のプリーストが行使出来る呪文と言われており、プリーストとして修行を積んでいるアイシスにしても唱えられなかった。


 回復呪文の中でも、低位の呪文は司祭や待祭に教わる事で会得出来るのだが、高位となると簡単にはいかない。会得している者の絶対数が不足しているのだ。術式の難しさもあるが、1番の要因は魔力量にある。『フル・キュア・コンディション』クラスになると必要魔力は1万近い。待祭の平均魔力量を遥かに上回る為、使えないし伝承も出来ないのだ。


 伝承の為に魔力の場を作る為にも魔力がいる。つまり、伝承は必要魔力量が、伝承する呪文の1,5倍かかる。脳転写に至っては3倍近い。間違いなく伝承される脳転写が滅多に使われないのはこの為である。痛みだけの問題ではないのだ。10万という魔力を持つコルニクスだからこそ出来た伝承。弟子はたまったものではないのだが…。



「その時にメルシス様が? 毒を受けられたのですね?」

「『レゾナ・リターン』が必要…、腕か脚を噛み千切られたのですか?」


 確か、あの事件はCランクのパーティーと辺境伯の近衛騎士団によって解決したと聞いた。ギルドの情報網では、そうなっていた。


「子供を庇い、メルシス様は左手に毒を…。倒れた時に左足首も噛み千切られてしまった。毒を受けた左手は、毒が強すぎて腐り落ちてしまったのだ」

「そんな…」

「『レゾナ・リターン』は身体の欠損や損傷を治癒する呪文。いくら神経の損傷を治しても解毒してなければ全く意味は無いわ、コミリア?」

「うん。アイシス様、ディックさん。この依頼、受ける事は吝かではありません。でも、1番必要なロックの意見を聞いていません。彼と確認して、お返事したいと思います」

「コミリアさん、ありがとうございます」

「気休めでいい。ロック殿が断る可能性と貴女達の決定に反対する可能性を教えて欲しい」

「気休めでよろしければ」

 コミリアは皆と顔を見合わせて微笑み、声を揃えて、

「「「「0」ね」です」よ」

「は?」

「多数決でもいいですけど。ロック、人助けは無報酬でも走っちゃいます」

 クスクス笑い出す少女達。

「1番ガメツイの私かもね」

 そういうコミリアに対し、

「いや、リーダーなのに金額交渉した事無いでしょ」

「いつも言い値なのです、私達」

 マッキーとソニアはクスクス笑い、コックリと頷くリルフィン。

「冒険者なんだろう? そんな金銭感覚でいいのか?」

「ロックのお蔭で、分不相応の大金が依頼料として入ってくるから」

「Bランクの依頼って、想像以上に高いんです」

「だからと言って、急に生活レベルを上げられないのです、兄様。しかもロックとリルフィンに至っては…」

 クスクス笑いながら、コミリア、マッキー、ソニアがリルフィンを見る。

「タラム村は自給自足出来るんです。森も川もあるし、焼き払われた土地に畑が広がってて。私が一緒に住むようになった時には、ロックはモグラ型魔物のモグロンとかなり開墾してたんです。私が住む少し前にビッグオウルとの戦いで倒れたと聞いてますけど」


「フム。彼はどれだけの従魔を持っているんだい? 私の知る限りでは、大概2~3頭の筈だが…」

「今、9頭ですね。よく知られているのはトライギドラス『ドラン』とナイツスライム『スライ』。レトパト『レツ』、ポイズンスライム『リント』、アイスフォックス『ジンライ』かな? あとキノチュン『キーノ』、ファイヤーコング『コング』、ボルビー『ピョン』、ニャルファング『ニャン』です」

「結局テイムしたのね、あのニャルファング」

「こないだついて来ちゃったもんね」

 クスクス笑いが止まらない少女達。

「は? ついて来た?」

「普通は戦って負かしてテイムなんですけどね」

「何か、ロックについて来るんです。何時の間にか。フフ、昔っからなんですけどね」

「もう村の風物詩よね。ロックの叫び声と取り巻きの魔物。それに師匠の高笑い」

「多分兄様も驚愕すると思います。コミリア達に聞いても信じられず、この目で見ても、その常識を疑ってしまうのです」

「リルフィンは常識の方を知らなかったから、テイムって魔物がついて来ちゃうと思っちゃって」

「初めて見たのが、あれだったんですよ? 私、テイマーって、魔物と友達になれる者と思っていました」

 赤くなって訴えるリルフィンに、クスクス笑っちゃう娘達。

「うん、まぁ、ロックしか知らないとそうなるよね」


 ロックがタラム村に住み着いてから1年。女神ルーシアンの想像を超えて、ロックは魔物達をホイホイ…もといテイムしていった。魔物との戦いで傷付いたり、子孫繁栄の為の繁殖地への移動等、ドランとスライ以外は入れ替りや離脱に死別があったのだ。特にドランは最初の頃、仲間たる従魔を喰った事もあり(寝ボケや不可抗力な事故ではあったが)、ルーシアンの事後操作が村の記憶として捏造されたのである。


 ロックは小さい時から魔物ホイホイだった、と。

 そしてスライムのスライは、ロックの最初の従魔であり幼馴染に近い存在だとも…。


 コミリアやマッキーには、ロックが幼少の頃から、後ろを跳ねながらついてくるスライの思い出がある。

 子供の遊び相手にはいいや。大人達から、そう思われていた存在が、今、B+の相棒になっている。アゥゴー処かライカー王国のテイマー達の憧れ、理想の存在と言っても過言ではない従魔になっているのだ。


「魔物と友達になる…。とても信じられないな」

「そういえば、そろそろ王城から戻る時間だけど」

「それじゃ、ギルドの方に行ってみましょう」


 座席から立ち上がると、ギルドへ向かう一行。

 隣のテーブルで休憩のカフェを堪能していた少女が1人。

「ロック様の次のご依頼は、毒竜の森、ね。こうしてはいられません!」

 コミリア達を見送った後、そう呟く少女は、とある屋敷へと入って行った。



 ギルドの1室でロックはパーティーメンバーと合流した。そこで改めてアイシスからの依頼内容を聞くと、

「依頼を受けるのも『レゾナ・リターン』の伝承も全然OKです。でも…」

 少し表情が曇るロック。

「でも? 何か引っ掛かるの?」

 不思議そうに見るコミリアと、何となく感にくるマッキー。

「魔力高いのね?」

「必要魔力量が32,000です。ジッチャンが頭痛いあれでするのギリギリだったから」

「さ、3万? 高いとは思ったけど…、私の最大で2万あるかないかだから…。会得出来ないし、使うのも無理…」

「なので、僕が使います。あの、僕『フル・キュア・コンディション』も会得してます。毒竜の森に行かなくても、僕をアイシス様の母親の所へ連れていってくれたら治癒出来ます。明日にでも向かいましょう」

「フル・キュアも? 本当に凄いですのね。知らない呪文は無いのでは?」

「適性…、どうしても…。僕は移動系というか、補助呪文は全く使えないです」

「加速『スピード』や減速『スロウ』、転移呪文の『ワープ』に『テレポート』。リルフィン頼りだものね」

「遠視『スコープ』や探知『サーチ』もね。この辺は従魔頼り」

「アイシス様、やはり万能の者等女神様のみです」


 ソニアの言葉に、皆が頷く。


 どれ程高い魔力量があっても、適性と言える属性が存在する。攻撃魔法のみであったり、その中で風属性だけの者もいたり。

 ロックは確かに魔力量も多く使える属性も多いのだが、それでも万能という訳では無い。攻撃、防御、回復、神聖に従魔法。

 師であるコルニクスは、これプラス移動、転移、地形操作、補助魔法に錬金術が使え、各種知識も博学であり、正に万能と言える存在で、だからこその『竜神並み』という2つ名が存在した。『黒き大賢者』という呼称以上に嫌っていた呼び名であり、彼を知る者には禁句に近い呼称だったのだ。只の薬師と名乗っていたのは周りへの皮肉でしかない。確かに、苦い薬を煎じて飲ませる事に喜びを感じてはいたが…。


 話がそれたが、万能では無いという事もロックの存在が認められている理由にもなっている。出来ない事があるというのは「所詮こんなもん…」と安心してしまう。小国位ならば戦える戦闘力を持ちながら、あまり危険視されないのは、言動や価値基準が子供という事もあるが、1人で出来る事の限界をロックも例外なく持っている事がわかるからと言えた。


「そうですね。ならばこそ人は努力する。高みを目指す。これこそ真理」

 アイシスが納得するように呟く。


「ではアイシス様。明日、毒竜の森ではなくターカッド辺境伯の領都デルファイでよろしいですね」

「はい。ロックが『フル・キュア・コンディション』まで使えるのであれば、花も必要無くなりますので」



 翌日。

 アイシス達は、自分達の依頼を、ギルドを通した形にする為に全員で冒険者ギルドを訪れていた。直接依頼でもいいのだが、ギルドを通した依頼を達成する方が冒険者には都合がいい。何故なら、ギルドの依頼達成が冒険者ポイントになるから。このポイントの高さがランク昇格に繋がる。国からの依頼ならば兎も角、直接依頼のみではギルドの冒険者ポイントは貯まらない。経験は積めてもランクは上がらないのだ。


「直接依頼で『フル・キュア・コンディション』を持つ冒険者への依頼ですね。はい、必要書類は受領しました。達成後に完了証明に依頼者ターカッド家のサインをしていただいて、こちらに出してください。ロック君は、この依頼達成でランク昇格の基準を満たします。ギルドカードの更新もありますからね」


 王都のギルドの受付嬢リザが笑顔で手続きを行う。

 何処のギルドでも、受付嬢の水準は高い。事務能力は勿論容姿も。珍しい赤髪を後ろで括りポニーテールにしており、少女の快活さが滲み出て冒険者の人気も高かったが、そのリザも、王国中で噂の凄腕テイマー;ロックに会い直接会話を交わせる事に興奮と幸福を覚えずにはいられなかった。


「更新? じゃあ次からは僕はAランク?」


 ギルド内の冒険者達がざわめく。

 Aランクと言えば英雄? 勇者? ほとんどがそう呼ばれる存在になっているのだから。


「そうですね。後ソニアさんとリルフィンちゃんはBランクへの昇格依頼を受ける資格をクリアします。依頼達成後に昇格希望の有無を冒険者ギルドで確認します」


 ざわめきが大きくなる。


「リルフィンちゃんがBに? は? 今Cランクなの?」


 癒しの笑顔。アゥゴーのアイドル。

 人気先行型の冒険者と言われる事を本人も否定していない。ロックのパートナーという幸運だけという批判をもリルフィンは受け入れている。銀竜の魔槍という破格の武器にも恵まれている批判も…。


 外見があまりにも美少女な為に、リルフィンはか弱い存在に見られてしまう。だが、魔狼族のステータスは人間を大きく上回る。体力や筋力、敏捷性は人間の成人男性処か、一般獣人をも超えているのだ。

 元々持ち合わせていた才能が、ロックと共に過ごす事で経験を積み、更に開花していく。リルフィンをよく知る者は、彼女の能力を正しく認識出来ていたのだが。


「それじゃ、出発しようか」

 コミリアの声に頷くメンバー。王都からデルファイまでは馬車で5日程の距離だ。ギルドを出ようとしたその時、彼等は呼び止められる。


「ロック君、その、すまない。あー、『竜の息吹』の皆に、頼みというか…、指名依頼がある」

「今、ターカッド家の依頼を受けたばかりなのですけど? 緊急なのですか? 依頼先は?」

 不服そうなコミリア。対応がまだ丁寧なのは、相手の申し訳なさそうな態度と、声をかけた相手が王都のギルドマスター;ロイド=アルバート元子爵だからだ。

「緊急だ。後はすまない。別室で話したい。勿論ターカッド家の依頼のキャンセル料はギルドが持つ」


 退っ引きならない雰囲気のロイドの案内で、ギルドマスターの応接室に入るメンバー。アイシスとディックも一緒にいる。

「まずは、依頼先は王家。緊急の人さがしだ。実は、レフィーナ王女が行方不明だ」

「は? どうして?」

 ロイドは応接室の横にある別の扉を示す。入ってきたのは近衛騎士ジム=カントナー。それに侍女リンダ。


「昨日の今日で申し訳ありません、ロック殿。王女レフィーナ様の暴走は治まっていないようでして…。その、冒険者として腕を磨くと仰せられて今朝から姿が見えないのです。侍女シャーリィと護衛の近衛騎士数名がやはり姿が見えない為、レフィーナ王女に付き従っておるものとは思われるのですが…」

「護衛の腕は? 王家の近衛騎士なら、それなりの水準はあるはずですよね?」

 汗を拭きつつ、ジムは応える。

「C程度は持っているはずです。シャーリィも護衛を兼ねた侍女で、C位の戦闘力はあるはずです。そしてレフィーナ王女とシャーリィは『光学迷彩の指輪』をはめています。視認はかなり難しい筈。ならばこそ未だに見つからないのではあるのですが…」

「光学迷彩は対人には有効ですけど魔物相手にはあまり効き目無いです。視覚しか欺けませんから、嗅覚…王女や侍女のシャーリィさんが身嗜みとしての香り袋とか身に付けていたら全く意味無いです」

 真っ青になるジム。近衛騎士はやはり魔物相手の対戦、対応には慣れていない。

「そんな…、せめて向かわれた先でも判れば…」

 ジムはリンダを見る。だがリンダは首を振る。

「私の役目は皆様の足止めでした。なので行き先を知らされておりません」

「シャーリィさんって侍女頭の? 影の護衛なのかな?妙に隠密工作に気が回ってる…。ね、コミ姉。昨日アイシス様達と話したのカフェって言ってたよね? 」

 ロックの問いに、ピンとくるメンバー。

「あのカフェに侍女がいても違和感無い。女性がいるのは当たり前の場所。彼処での私達の会話を聞かれていたのだとしたら?」

「「「毒竜の森!」だわ」です」

 マッキー、ソニア、リルフィンが声を揃える。

「ヒュドラーは視覚より嗅覚に頼る!しかも竜というより蛇に近い身体だから、確かピットを持ってる!」

「ロック?それ、やばすぎ!!」

『竜の息吹』のメンバーは流石に知っていた。蛇の中には、獲物の体温を感知する器官を持つものがいる。通称ピットと呼ばれるそれは、高感度のサーモセンサーであり、光学迷彩が全く役に立たない程の識別能力を持つ。


「緊急度が更に増したな。この依頼、大至急で頼めるかい? 」

「それは…、『竜の息吹』はC+のパーティーです。私達だけでは毒竜の森には入れません」

「コミリアさん、当初の目的通り、私達も臨時的にパーティーに加わります。それでB-になる筈。ロイドさん。ターカッド家はこの事態に依頼の延期を申し出ます。キャンセルはしません。ロックさん、コミリアさん、直ぐに出発しましょう」

「アイシス様、感謝します。リンダさん、私達はシャーリィさんって知らないのです。レフィーナ王女にもロックしか会っていません。確認の為に、貴女にも同行をお願いしたいのですが?」

「わかりました。王女様達をよろしくお願いします」

「カントナーさんは王城に、王家の方々にお知らせください。私達が、必ず!」

「よろしくお願いします」


 ギルドの外に出ると、

「森の入り口近く、デルファイの転移検問所まで転移しましょう。非常用に転移石を持ち合わせています。これで10人迄は一緒に転移出来ます」

 アイシスが緑色に輝く鉱石を出す。座標を石に刻む事により、簡単に転移する事が出来る。

 本来ならば座標を固定する為に、強く目的地を思い浮かべなければならない上に、転移場所に道標たる魔力を刻んでいなければならない。魔力の刻み込みは生涯に1度でよく、つまりは1度行った場所でないと転移出来ない。

 だが、転移石に座標を刻むと、転移場所に魔力がなくてもそこへ強制的に転移する事が出来る。尤も高価な上に使い捨てという、高位貴族でもないと使えない代物ではあるが。


 アイシスを中心にまとまると、

「起動。『我等を帰還せしめん!』」

 転移石が煌めき、足元に転移魔法陣か発動する。


 瞬間、皆はターカッド辺境伯の領都デルファイに到着していた。


「森は向こうだけど、少し待っていてください」


 アイシスとディックが転移検問所へ行き確認する。


「やっぱり、今朝少女を含む貴族らしき一行が森に向かったそうです。お忍びと言われて検問所も人数や構成の記載のみに留めたみたいです。本来ならばギルドか辺境伯近衛守護隊に報告されなければならないのですが…」

「記載があるだけでも上々です、アイシス様」

「そうですね。彼等は役目を全うしている。私もそう思いましょう」

 森へ向かう一行。


「『モンスターハウス!』 レツ、出てきて! 僕の思い描く、この女性、レフィーナ王女を探して! あ、ここはレツの天敵もいる。探索もだけど、レツ、君の身の安全を優先。キーノも出てきて!君は僕等の頭上を見て。同じく身の安全を優先。それじゃ頼む」


 空間からレトパトとキノチュンが飛び出す。

 レトパトはそのまま飛び去っていき、キノチュンはゆっくりロック達の頭上で弧を描き始める。


「いた! まだ魔物に見つかってないけど、ヤバい!近くにヒュドラーが3頭いる。後、この気配は何? あの…、祠?あれは結界の祠じゃなくて?」



「私? 私に呼び掛けてくるのは誰でしょうか?」

「そう。貴女。我は力を求むる者の処に。貴女は力を求めて此処に来たのでしょう? 来るが良い。我が望む力を与えましょう」

「…力、私の望む力…。本当に与えてくださるのですね? 貴方は一体?」

「我は貴女。貴女の望む力そのもの。さぁ、来るが良い」

 レフィーナ王女に呼び掛けてくる声。ヒュドラーに会わない様、レフィーナ達は森を探索し、低ランクの魔物を倒していた。

「姫様?」

「この先に『黒毒沼』があります。まずは『花を摘まなければ」

 沼の先にある結界の祠。レフィーナ達の目的はそこにあったが、祠に祀られている存在を知らなかった。

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