第3話

大波乱で人生を変える程のプロジェクト!

とはいかず、スムーズに進みプロジェクトは成功した。

成長したか?と言われれば成長したし、ミスも少ないに越したことはない。ただもう少し大きなミスが出るだとか、そういうのを皆で解決していくのだと思っていた。


「えープロジェクトの成長を祝しまして、乾杯」

『『『乾杯!!!』』』


『宮本先輩!おめでとうございます、凄いです!』


同僚や先輩のおじさん達よりこの子からの言葉が一番嬉しい。


「菜緒さんも良くやってくれたよ。これからもよろしく頼む」


久しぶりに自然に、ちゃんと笑顔になれる人と出会ったと思う。ここに入社して山下以外にそういった人は出来なかった。


暫くして挨拶も終わり皆それぞれ飲みだした頃、店内のテレビでニュースが流れる。

『台湾有事から7年になろうとしています。中国軍の与那国島占領から始まり中国軍の大損害と米国の圧力で幕を閉じたあの紛争。しかし今も尚紛争の被害を受け続ける方達が居ます。』


台湾紛争、中国軍の与那国島占領から始まった紛争は台湾上陸までするも被害が予想より多く、与那国島では第一空挺団との戦闘で更に被害が出た上に米国の圧力も強まり撤退、紛争は終結した。

ニュースでは紛争によってPTSDを患った者や障害を負った人への取材であった。


それを見ていたメンバーが1人が『自衛隊もよくそんな被害出したな。もっと上手く出来たでしょ』とボヤく。


(あぁ、まただ。本当に気分が悪い…最悪だ早く出ていきたい…)


『宮本先輩?どうしたんですか?』


驚き菜緒を見る。

こちらを心配そうに見つめるその顔に、私は「別の場所で飲もう」と答えた。

酷い顔をしてたかもしれない。


店を出てすぐに店から、人から離れたくて歩き出した。


『あ、あの、宮本先輩?なんか変ですよ。いきなりどうしたんですか?』

「ごめんね、ちょっと気分悪くなっちゃって。申し訳無いけど外に居たくないんだよ。家で飲まない?」

『え、その…はい。分かりました』


攻めた台詞だ。もうこれ程恥ずかしい台詞は吐かないと誓うがそれよりも外に居たくなかった。

コンビニで酒を買い明広の家へと向かった。





先輩は常に笑っている人。優しい人。そんな人が急に怖い顔になった。

声を掛けてみると「別の場所で飲もう」と…

この人を怖いと思ったのは初めてだ。店を出る時、皆は私達を冷やかしてきた。なんで皆はそういう事だと思うのか理解出来なかった。先輩はこんなに怖い顔をしているのに…

そう思って後ろをついていくと家で飲もうと誘われた。

怖いかった顔は怯えた様な顔になっていた。複雑だった。何がなんだか分からない。


ただ私で先輩が楽になるなら、優しい顔に戻るなら良いかなと思えた。

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