危機

 オリ姫の部屋の扉をドンドンと叩くと中から声がした。


「誰じゃこんな時に」


 「三島です! ここを開けてください!」


 すんなり扉が開いた。


 中へ入ると、明らかに疲労の見える、青白い顔をしたオリ姫がいた。


 「お久しぶりです。 オリ姫様」


「お主なんとか生きているみたいじゃな」


 冗談を言えるみたいなので少しホッとした。


 「噂で聞いたのですが、今この城が危ない状態だと……」


「どこから聞いたのかは知らぬが心配せずともよい」


 「で、でも、僕が来たからこんな事になっているのでは!?」


「それは違うぞ、ここは外界から切り離されてから、1万年は経っているから結界が弱まっていたのじゃ」


「それを、わらわが気づけなかった」


 「やっぱ、僕がここに来たのはまずかったのではないですか?」


 「いや、確かに人間がここに来たのはイレギュラーじゃが、お主がここに来たおかげで今回のことに気づけたのじゃ」


 「やはり、僕は地上に戻った方がいいのではないですか?」


「いや、ここからは二度と出られんし、帰ってもお主の帰れる場所はもう無いかもしれん」


 「……どういうことですか?」


「この城は外との繋がりを断つために時間を速めたのじゃ、だから、外は少なくとも500年は経っていると思うぞ」


 唖然としてしまった。


 「始めに帰れないと言ったのはそういうことだったのですか」


「それもそうじゃが、ここを出られるものがほとんどいないのも理由のひとつなのじゃ」


「ほとんどのものがこの城へ来た時にエラを閉じてしまってな、外へ出ると水圧と呼吸が出来ずに死んでしまうのじゃ」


 「え、でも昔は人間が入ってきたって聞きましたよ?」


「そうなのじゃ、昔はまだ外との関係を切り離してなくてな」


 想像していた以上にやばい事になっているのかもしれないと思っていたが、この後、あんなことになるなんて、誰も思わなかった。

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