オリ姫
外観との違いに、ぽかんと口を開け、ぼーっとしていると、女性が話しかけてきた。
「どちら様ですか?お約束ですか?」
「いいえ、この子達が連れて来てくれました」
僕は後ろを指さした。
「どなたもいませんよ?」
女性は困った顔をしていた。
「え?」
後ろを振り向くとさっきまで一緒だった亀が1匹もいなかった。
「だ、誰か!侵入者よ!」
「え、ちょ、ちょっと!」
僕は冷や汗が止まらず、オロオロしていると大勢に囲まれ、銛を構えている。
抵抗することなく縛られ、分厚い扉の中に連れて行かれた。
「僕は何もしてない!ただ連れられてきただけなんだ〜!」
必死に叫ぶが誰も聞いていない、というか扉が分厚くて外に声が届いていない気がした。
体感時間で30分ほど経った頃、ようやく扉が開いた。
「オリ姫様がお呼びだ、来い!」
「お、オリ姫様って?」
「いいから、黙って歩け!」
言われるがままに歩いていくと、ダイヤモンドのようにキラキラした扉の前に着いた。
「オリ姫様、連れて参りました」
扉がギギギっとゆっくり開き、声がした。
「入れ」
若い女性の声だった。
中へ入り、目に飛び込んできたのは絶世の美女。
その美しさに、ぽかんと見惚れていると、
「わらわはオリ姫、海の底の城の長じゃ、そなたは?」
先に話しかけてきた。
「三島です」
間をおかずに即答する。
「そなたはどんな生き物じゃ?」
「に、人間です」
「ほぉ、人間。」
「み、皆さんは人間じゃないんですか?」
「見た目は人間じゃが、この海の底の城にたどり着くと人間の姿になるのじゃ」
なるほど、だから誰も彼も人に見えたのか。
納得は行ったが、もう一つ疑問がある。
「あの」
「なんじゃ」
「質問なんですけど、ここの場所の名前なんで海の底の城なんですか?」
「知らん」
「え?知らない?」
「名前が決まっとらんのじゃ、別にいいじゃろ!」
なんかヤバそうなとこに連れてこられたようだ。
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