帰れないんですか

 「あのー、僕はこれからどうなるんですか?」


「そうじゃな、せっかく人間が迷い込んだのじゃ、みなの餌になってもらおうかの」


 僕は引き攣った顔で姫様を見つめて何も言えなくなった。


「冗談じゃ、冗談」

「人間は冗談を言わんのか?」


 「ま、まあ言いますね……」


「そんな硬くならなくてよい」


 「あの。僕ご迷惑にならないように元の場所に帰りたいのですが」


「そうか、帰りたかったのか」

「じゃが、どうやって帰るのじゃ?行きはどうやってきた」


 「どうやってって、おっきな亀たちに引っ張られてきました」


「亀?この国に亀なんかおらんぞ」


 姫様が何を言ってるのか分からなかった。


 「じゃあ、僕が見たあの亀はなんだったんだ」


「おぬしが何を言うておるか分からんが、地上に戻る方法はないぞ」

「ここに住む者がここから出たいと思わないじゃろうし、自ら地上へ食べられに行きたいものなぞいないじゃろ」


 姫様の言ってることは確かにそうだ。


 「帰れないのなら僕はどうすればいいんだ」


「ここに住めばよかろう、部屋なら余っておるしの」


 帰ることができないなら、姫様の提案に乗るのが良いだろうと思ったので同意することにした。


 「それでは、これからお世話になります」


「うむ!頑張って喰われんように住むがよい!」


 姫様は笑いながら怖いことを言ってきた。


 元の世界に思い出があるわけじゃないし、帰れないので、海底ライフを始めてみます。

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