閑話5
「で、なにやった?」
「別にたいした事してないわよ、あの子達が席につく前に遅刻の話題出して、ひまりの連絡ミスじゃないかって言っといて、ひまりが席に付いてからは言い訳全部潰して、あの子が黙ったタイミングで明日香に歌入れて貰っただけよ」
はぁこれだよ、何がたいした事してないだよ。
一番ひまりが嫌がる事してるだろうがよ。
「はぁ。で?明日香はお前のところに入れるんで良いのか?」
「そうね、明日香はちょっと押しに弱いみたいだし、結衣ちゃんの所じゃ今回みたいな時にまた同じ事になりそうだしね」
「はっ、よく言う。本当は自分の所に欲しかっただけだろ」
「そうね、明日香が歌うだけで場の盛り上がりが全然違うもの。否定はしないわ」
まあ、結衣は他人蹴落とすようなのは苦手だし、光の所に入れた方が丸く収まるか。
「んじゃ、明日香の事はそれでいいとして。問題はひまりだな。何にしたって、相番からの指名替えはやりすぎじゃねぇの」
「別に取る気までは無かったわよ。あの子、よっぽどあの客掴めて無かったのね。あっさり指名替えされて私の方が驚いたわ。幾ら大変な時期って言ってもアレ頼るとか止めたが良いわよ」
「参考意見として聞いておく」
「そ」
まあ、そうは言いつつあぁいうタイプを好きな奴も一定数居るからな。使える分だけではつかいたんだがな。
「荒木君はさ、はじめ気に入ってるよね」
「あ?なんだ突然」
「だって、何かと構ってるし」
「んなこたぁ無い」
「そお?」
「そうだ」
「相談乗ってあげてるのに?」
「普通だろが、後輩の相談に乗るくらい」
「ふーん」
「なんだ、何が言いたい」
「荒木君が黒服の相談に乗ってるとこなんて、滅多に見たこと無いけど?」
「今回はたまたまだ」
「たまたまぁ?」
「だから何なんだ。文句でもあるのか?」
「べーつにー、ちょっと頭が眩しいなって思ってるだけで、文句なんかないわよ?」
こいつ!
「これは禿げてるんじゃない、剃ってんだ」
「そうね、未練たらしく頑張ってるより、光ってる方が私は好きよ。私光だし」
「…お前って失礼なヤツだよな」
「素直って言って欲しいわね。もういいわ、私帰るわね」
「ああ、帰れ帰れ」
「可愛いキャストのお帰りよ?お疲れ様くらい言いなさいよホント」
「何がカワイイだ。憎たらしいの間違いだろが」
「ちょっと、憎たらしいは無いんじゃない?」
「ハイハイ、私が悪う御座いました。お疲れ様でごぜいますだ」
「はぁ、付き合ってらんない。じゃね」
たく、何が言いたいんだあいつは。
確かにはじめは若い割には落ち着いて仕事するヤツだし、使い勝手は良い。ただ真面目過ぎんだよな、この業界にしては。休めっつってもなかなか休まんし。
もっとこう、砕けた感じで仕事したほうが楽だろうに、とは思ってるが、贔屓なかんかはない、はずだ。
「くそっ」
今日は疲れた。
ちゃっちゃと店かたして、飲んで寝るか。
「はじめ!さっさと卓かたせ!」
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