第21話
「いっちゃんは、お休みの日は何してるの?」
出勤のお迎えの車では、キャストはだいたいお客様と連絡を取っている事が多く、あまり会話は無い。
卓ではめっちゃ楽しそうに笑ってお話をしているキャストに、送迎の車で店と同じ感じで話しかけるとムッツリ顔で「なに?」みたいに返される塩対応なのが普通なのだが、結衣さんの様にいつでも誰でも何処でもニコニコ対応してくれるキャストもいる。
結衣さんは素晴らしい人だ。
「最近は、ダンジョン行ってるっすかね」
「えー、ちゃんと休まないと駄目だよ」
「いやぁ、結構いい息抜きになりますよ?」
俺は前世ゲーマーって訳でも無かったけど、RPGとかSLGとかそこそこやってたし。
ダンジョンもぐってると身体能力が目に見えて上がるってのも地味にモチベーション上がるんだよな。
「冒険者の人に聞くと、皆ストレス凄いって言うよ?」
まあ、この世界の人に取ってダンジョンってのは普通に生活の一部なわけで、ゲーム感覚で楽しむとか考えもしてないみたいだし、命がけだし、深層行くなら野宿だし。
そう考えると確かにストレス凄そうだな。
「まあ、行っても中層なんで泊まりでもないし、危険もあんまり無いっすから。運動がてら小遣い稼ぎみたいなもんです」
「うーん、ホントに大丈夫?無理してない?」
「してないですって」
こんなに心配してもらえるとか、やっぱり脈なしとか嘘でしょ。絶対好感度高いって。
「あのー、中層って日帰り出来るんですか?あんまり聞いた事無いですけど」
「たしかに、私の客にも冒険者いるけど、中層からがダンジョンの本番だって、きついんだぞって自慢してた」
「えーそうなの?いっちゃん、やっぱり無理してない?」
後部座席のアイリンちゃんとゆめさんから、いならない疑問が出たせいで、また結衣さんが心配モードに戻ってしまったじゃないか。
「そう言う冒険者って、だいたい装備がそろってないか、チームメンバーがそろってないからキツいんですよ。俺はほら、スポンサーにカスタまエース付いてるし、彩佳・瑠璃と潜るし」
「カスタまエースは分かるとして、彩佳ちゃんと瑠璃ちゃんってそんなに凄いんですか?」
彩佳は回復と補助魔法特化で、瑠璃は空間系魔法特化、二人ともソロだと微妙過ぎてダンジョンには潜れないだろうけど、チームに一人居れば凄く重宝される才能を持っている。まあ、俺がそう言う風に育てたって事もあるけど。
「うーん、2人ともタンピンだとそれほどじゃないかな?3人だと相性がいいんだよね」
「うんうん、兄妹で仲いいのは良い事だよ」
「へー、じゃあ冒険者に戻ろうって思わないんですか?」
うーん、どうだろう?
「確かに中層でそこそこやれれば、冒険者一本で生きては行けるだろうけど、一発こければ全部終了ってのは厳しいっすよ。実際そうなりましたし。黒服が安定してるかって言ったらそうでもないけど、掛け持ちなら十分安定した生活が出来そうだし、ちゃんとした冒険者に戻ることはないんじゃないかな?」
まぁ、慣れてきて今仕事が結構楽しいし、お世話になってるし、黒服辞める事はないな。
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