第20話

夜間外出自粛期間に入り店長を含めた黒服メンバーは、いかに店を開けながら赤字なく、もしくは少なく出来るかに頭を悩ましている。

ウチは結構広いハコでやってるから家賃代だけでも馬鹿にならないのだ。

あ、ハコっていうのは部屋の大きさとかを表現するときに使うサービス業では良く使われる言葉ね。


キャスト達もまた、四苦八苦しながら過ごしている。

あの事件が報道された後だからね、会いたいなとか、来てほしいとかの営業をあまり露骨にかけると常識を疑われて逆効果になってしまう。

自然にアピール無くお客様からの方からお店に来たいと思って貰わなければならず、日々のメッセージ一つ、スタンプ一つに気を使っている。


それでもウチの客層は中級以上の冒険者や、ダンジョン関連の仕事をしている人を中心としているためか、思っていたほど客足が遠のいていないのでまだましな方だが、サラリーマンや一般客がターゲットだった他店では本気で閉店を考えているらしい。


この様な状況でも来店して下さるお客様には、本当に感謝。




「にーや、車の免許なんていつとったの?」

「ん?取れる歳になってすぐ」


俺がなんで免許なんて持ってるかを彩佳が聞いてきた。


都市部を離れて山間部とかの田舎に行くと、ダンジョンから這い出た野良モンスターが普通にうろついている世界である。 遠出するなら安全が担保された公共交通機関を使うのが一般的であり、あまり個人で車を持っている人はいない。

つまりこの世界では車の免許を取るのはあまり一般的ではない。

取るのは、よほど車が好きか仕事で必要なヤツだけだから疑問に思ったのだろう。


今は店の車でキャスト達のお迎え中でる。

車なんて久しぶりに乗るし、10人乗りのデカいワゴン車なので運転に気を遣う。

前世じゃ殆ど軽自動車しか乗らなかったしね。

だから、あんまり話かけて欲しくないんだけどな。


「いっちゃんさんは車、好きなんですね」


アイリンちゃんが、関心したように尊敬の眼差しを向けてくる。

分かるよ、おじさんたち。こういう所にやられんだね。


「いや、そういうわけじゃないっす。ただあった方がいいかと思っただけで」

「にーやが18歳のころは4級に上がった直ぐだったはず。そんなに時間もお金も余裕があったとは思えない」


瑠璃さんや、よくそんな事思えてますね。

まぁ俺的には前世の常識で考えてて、成人したんだから車の免許くらいとっとこうと思っただけだなので、深い理由があるわけではない。

この話を掘り下げても、俺の前世にしか行きつかないので引っ張られてもな。


「社会人の常識として車の免許くらいはいるかな、と思っただけなんだ、ホント。こんなに使わないとはマジで思わなかったけどな」


この世界ので身分書と言えば、大体冒険者協会を含む3大ギルドのギルド証の事を指すので、普段車の免許ってホントに使い道がない。前世的には、うーん英検2級くらい?使えないものなのだ。


「どこの常識よ、それw」


彩佳さん、前世ですがなにか?


「まぁ、おかげてこうして皆をお迎え出来てるんだから、世の中何が幸いするかわからんわ」

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