番外1-5

「いやいや、いくら暇でも光をヘルプにつけるとか」

「あら、今私の客一人もいないし予定もないから大丈夫よ」

「そう言う問題じゃなくてだな」

「ちょっと客呼べるからってひまりに気を遣う必要なんてないわよ、それよりあの子に潰されて他の子が辞めちゃう方が問題よ。この外出自粛の時期、しかもニュースで夜の仕事は危ないってイメージが付いてる現状で、新しい女の子を探す方が大変でしょ」

「…そうれは、そうかもしれんが」


ひまりさんは自粛前にうちの店に移動してきた割と新しいキャストではあるが、他店時代からのお客様を何人か連れて移動して来たため、5指にはいる売り上げがある。

荒木さんとしては、売上のあるひまりさんの機嫌をあまり悪くしたくないのだろう。


ただ、光さんの言う通り新たなキャストを雇おうとしても、今の状況ではかなり難しいのだ。 そういう意味では明日香さんを始め有望株のキャストがイジメや嫌がらせで辞めてしまうような事態は避けたい。


「じゃあ、荒木さんがその気になる話を追加しちゃおうか。ひまりの客、ほどんどが前の店出禁になったヤツばっかみたいよ? 上から目線だし、触ってくるし、ホテルばっか誘ってくるし、キャスト受け最悪。そのうちウチもみんな出禁ね」


キャバクラにおいて、このキャスト受けと言うのは馬鹿に出来ない。

キャバクラは基本お触り禁止であるが、その場のノリで胸を触ったり抱き着いたりしても、キャストが笑って許せれば多少はOKになってしまう事がある。

だが、キャスト受けが悪いお客様だと、当然笑って済ませられる範囲は狭くなり自然NG率も高くなるのである。


ひまりさんが嫌がらせを止める事はないだろうし、先行き真っ暗な今のひまりさんの売り上げを取るより、明日香さんを含めた新しいキャストを取るかならキャストの方だと光さんは言いたいらしい。


「荒木さん、俺からもお願いします。明日香さんに気持ちよく仕事させてあげてください」

「ふぅ、まぁ分かった。今日は光にヘルプをやって貰う。ただ、やり過ぎんなよ?」

「ありがと、でも私は普通に接客するだけよ? 何をやり過ぎるか分からないわ」




光さんグループをひまりさんの卓にに案内し、お客様へ紹介する。


「レイナさん、かなさん、光さん、まどかさんです。おくつろぎください」


本指名2人のお客様はキャストの着替えが終わったら、キャストを入れ替えるので光さんはフリーのお客様へついて貰った。


「初めまして、光です。あ、名刺渡しても大丈夫ですか?」

「ありがとう。へぇ写真入りの名刺って凄いね」

「顔、覚えて貰いやすいでしょ?ちょっと高いけど自腹で作ったんです」

「え?名刺とかってお店から支給されるじゃないの?」

「支給はされるんですけど、種類少なくてあんまり可愛いの無いんですよねぇ」


光さんは席に付くなり、自然な感じで会話がスタート、流石です。

他のキャストもそれぞれ、会話が始まったがそれほど空気は悪くない。

明日香さんの遅刻の件はそれほど気にしておられないようだ。


後は頼みます、光さん。

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