番外1-4
21時を過ぎ、ぽつぽつお客様が来店され始めたころ、ひまりさんと明日香さんが4人組のお客様と同伴から帰ってきた。けど、少し様子がおかしい。
「吉村さん、今日は本当にごめんなさいね。せっかく美味しいお鮨のお店予約してくださったのに、ゆっくり出来なくて」
「うん、まぁ」
「本当に、ごめんなさい。ほら明日香さんも謝ったら?」
「…申し訳ございませんでした」
「まぁ、あんまり気にしないで。せっかく飲みに来たんだから、楽しくいこう」
「吉村さん、優しい。よかったわね、吉村さんがいい人で」
「はい」
来店するなり聞こえよがしにお客様にひまりさんが謝っている。
話の感じだと、明日香さんが同伴に遅刻したっぽい。
明日香さんは酷く落ち込んでいる。
けど、おかしいな。
明日香さんは相談受けた後、遅れたら駄目だからと早めに店を出たはず。
遅刻するはず無いと思うんだけど。
「じゃあ、すぐ着替えるから、ちょっと待ってて下さいね」
一瞬、明日香さんへ蔑むような視線を送って、ロッカーへと向かうひまりさん。
ちなみに、同伴はキャストの私服で行くが、店に来てキャストとして働く間は基本ドレスかキャバクラスーツなので着替える必要がある。なので、同伴して来店した場合、指名のキャストが着替えている間、お客様は待つことになるが、この時お客様のお相手をするキャストをヘルプと言っている。ちなみのちなみにフリーのお客様に付く時や指名のキャストが離席したときに付くキャストもヘルプと呼ぶ。
明日香さんも続いて、ロッカーへ向かおうとしていたので、呼び止めて話しを聞くことにする。
「明日香さん、何があったんですか?」
「…時間を間違えていたみたいで、お客様をお待たせしてしまって」
「約束は19時じゃなかったんですか?」
「お寿司ならゆっくり食べたいからと、18時半に早まっていたみたいで」
ぽつぽつとしか話さない明日香さんから、何とか聞き出したことを纏めると、ひまりさんが「寿司ならゆっくり食べたい」と言い出し、約束時間の前倒しをお客様にお願いし、自分が言い出したのだから明日香さんには自分から伝えるとお客様に言っていたらしい。
話を聞いただけでも、確信犯だと断言できる。
しかも、わざわざ来店直後のカウンター前で謝る振りをして黒服メンバーに明日香さんが悪かったと分かるようにするという、やり口。カチンと来た。
憂鬱そうな明日香さんを何とか、着替えに送り出して再度荒木さんに相談しに行く。
これでヘルプ2人にひまりさんグループの誰かが付くのであれば、今日一日あの卓で明日香さんが攻め続けられるに違いないのだ。
「荒木さん、ひまりさんと明日香さんの卓なんですけど、ヘルプ結衣さんのグループで行けますか?」
「あぁ、遅刻の件は恰好のネタだろうからな、けど結衣のところも今団体で来店してるから、難しいんだよなぁ」
「あら、じゃあ私がヘルプについてあげるわよ、今日暇だし、明日香気に入ってるし、ひまりはムカつくからそのうち潰そうと思ってたし」
振り返ったそこには、悪い顔をした光さんが居た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます